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赤字の仕事は断るべき?案件別の限界利益から考える受注判断

17 時間前
読了時間: 5分

「この仕事は、原価を計算すると赤字です。断った方がよいでしょうか」。中小企業の社長が受注を判断するとき、よく問題になるのが案件別の採算です。しかし、案件に共通の固定費を配賦した結果が赤字だからといって、直ちに断るのが正しいとは限りません。


結論から言えば、受注によって会社全体の利益がどれだけ増減するかで判断します。ポイントは、限界利益、追加で発生する固定費、生産能力の余裕、他の案件を失う機会です。



赤字案件でも、受けた方がよい場合がある


案件別損益には、工場家賃、正社員の基本給、管理部門費などの共通固定費が配賦されることがあります。これは全社の採算を把握するには必要な作業ですが、短期の追加受注を判断するときには、その案件を受けなくても支払う費用なのかを区別しなければなりません。


売上高から変動費を差し引いたものを「限界利益」といいます。限界利益は、固定費の回収と営業利益の創出に貢献する金額です。中小企業基盤整備機構のJ-Net21でも、損益分岐点を考える際には売上とともに変化する変動費と、一定額発生する固定費を分けて計算すると説明しています。




具体例:帳簿上1万円の赤字でも、3万円の利益増になる


次は説明のための仮定例です。ある製造業で、1件の受注金額が10万円、材料費・外注加工費など受注により増える変動費が7万円、共通固定費の配賦額が4万円だとします。


案件別損益は「売上10万円-変動費7万円-配賦固定費4万円=▲1万円」。この数字だけを見ると赤字の仕事です。


一方、既存の工場・従業員で対応でき、生産余力があり、追加の固定費も発生しないなら、受注しなくても配賦固定費4万円は残ります。受注による限界利益は「10万円-7万円=3万円」。他の仕事を犠牲にしなければ、会社全体の利益は受けない場合より3万円増える計算です。


ここで重要なのは、配賦額4万円を無視してよいということではありません。配賦額が今回の受注によって本当に増える費用なのかを判定することです。共通固定費は長期的には回収しなければなりませんが、短期の意思決定とは分けて考えます。



逆に、断るべき案件はどんな仕事か


第1に、追加コストを含めると利益が減る案件です。同じ受注でも、特別な段取りや夜間稼働のために新たに4万円の費用が生じれば「10万円-7万円-4万円=▲1万円」。この前提では受けない方が利益は1万円多くなります。残業代や特急運送費など、見積時に抜けやすい費用も確認します。


第2に、より利益を生む仕事を断らなければならない案件です。設備や人員がいっぱいで、限界利益3万円のA案件を受けると限界利益5万円のB案件を失うなら、Aを選ぶことで2万円の利益機会を失います。判断には売上や限界利益率だけでなく、制約となる設備時間・作業時間1時間当たりの限界利益も役立ちます。


第3に、回収不能や資金負担が大きい案件です。売掛金の回収期間が長い、資材を先払いする、品質保証や手直しが多い、といった条件では、損益上の限界利益がプラスでも資金繰りや現場に負荷がかかります。契約条件と信用リスクは別途評価すべきです。



短期の追加受注と、長期の取引継続は分ける


「限界利益がプラスなら、いくら安くても受けてよい」という意味ではありません。通常の受注価格が長期間にわたり固定費や必要利益を賄えなければ、会社の持続可能性は損なわれます。特別値引きが常態化すれば、既存顧客との価格体系も崩れます。


一時的な遊休能力の活用として受けるのか、継続する主力取引として値上げ交渉するのか。判断期間を明確にすることが必要です。価格交渉では、原材料費・労務費・エネルギー費の根拠を整理する方法を中小企業庁も案内しています。




受注判断を誤らないための5つの手順


①案件の見積売上高と、受注により追加発生する材料費・外注費・輸送費・残業代などを洗い出します。


②売上高から追加変動費を引き、案件の限界利益を算出します。税務会計上の売上総利益とは費用区分が異なる場合があります。


③新たな設備手配、専用人員、段取り費など、この案件だけの追加固定費を別に控除します。


④設備、人員、納期の制約を調べ、代わりに受けられなくなる案件の利益機会を比較します。


⑤短期の追加利益に加え、資金回収、品質負担、継続取引の採算、価格改定の余地を確認して最終判断します。



足立知弘の視点:赤字の理由を分けてから、やめる仕事を決める


私は、赤字案件の見直しで大切なのは、単に赤い数字に線を引くことではないと考えています。売上不足なのか、見積に入っていない工数なのか、価格が低すぎるのか、共通費の配賦の問題なのか。原因ごとに打つ手は違います。


限られた経営資源をどこに集中させるかは、中小企業の戦略そのものです。まず数字で現実を把握し、改善できる案件は改善する。それでも会社全体の利益や資金を傷める仕事については、価格改定、条件変更、場合によっては撤退を判断する。この順序が重要だと思います。


福岡の中小企業でも、社長だけが頭の中で採算を判断する状態から、営業・製造・経理が同じ数字を見て判断できる状態へ変えていくことが、利益改善の土台になります。



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まとめ:見るべきは配賦後の赤字だけではない


案件別の帳簿上の赤字だけでは、受注の可否は決まりません。追加受注で生まれる限界利益、追加費用、生産余力、失う代替案件を比べれば、受けるべき仕事と断るべき仕事が見えてきます。まずは直近の受注案件を数件選び、見積と実績の差を確認してみてください。


いちご会計事務所の経営強化型税務顧問では、月次の数字を基に商品別・顧客別の採算や利益改善の課題を整理し、経営判断につなげる支援を行っています。自社の受注判断や採算管理を見直したい方は、支援内容をご確認ください。




参考資料




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