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値上げはいくら必要?原価・人件費上昇から適正価格を計算する方法【中小企業向け】

  • 14 分前
  • 読了時間: 9分



「仕入価格が上がったので値上げしたい。でも、何%上げればいいのか分からない」

最近、こうした相談は珍しくありません。

問題は、仕入先から5%値上げされたから、自社も5%値上げすればよい、とは限らないことです。

原材料費だけでなく、人件費、外注費、物流費、光熱費も上がっています。

この記事では、会社がこれまでの利益を維持するためには、販売価格をいくらにすればよいのかを、決算書の数字から計算する方法をご説明します。


結論|値上げ率は「コストの上昇率」ではなく「必要な利益」から逆算する

最初に結論です。

値上げを考えるとき、

「仕入が10%上がったから10%値上げする」

という計算だけでは不十分です。

見るべきなのは、

コスト上昇後も、会社に必要な利益が残る販売価格はいくらか

です。

基本的な考え方は、

必要売上高 = 上昇後の総コスト + 確保したい利益

です。

商品単位で考えるなら、

適正販売価格 = 1個あたりの原価 + 1個あたりで回収すべき固定費 + 必要利益

となります。

値上げ率は、その結果として決まります。

ここを逆に考えないことが重要です。


なぜ「仕入が10%上がったから10%値上げ」では足りないのか

簡単な例を見てみます。

ある会社の年間売上が1億円だったとします。

  • 売上高 1億円

  • 原価 5,000万円

  • 人件費 2,000万円

  • その他経費 2,000万円

  • 利益 1,000万円

この会社の原価率は50%です。

ここで原価が10%上昇すると、

5,000万円 × 10% = 500万円

コストが増えます。

利益は、

1,000万円 → 500万円

まで減ってしまいます。

原価が10%増えたからといって、必ず販売価格を10%上げる必要があるわけではありません。

この会社が元の利益1,000万円を維持したいのであれば、必要な売上増加額は500万円です。

つまり、

1億円 → 1億500万円

なので、

必要な値上げ率は5%

となります。

ここが大事なんですね。

コストの上昇率と、必要な値上げ率は違います。


値上げ額を計算する基本の3ステップ

私は、値上げを検討するときは、まず次の順番で数字を見るのがよいと思っています。

STEP1|どのコストが年間いくら増えるのかを計算する

まず必要なのは、「○%上がった」という話ではなく、

会社全体で年間いくら負担が増えるのか

を計算することです。

例えば、

項目

現在

上昇率

年間増加額

原材料費

3,000万円

10%

300万円

人件費

2,000万円

5%

100万円

外注費

1,000万円

8%

80万円

光熱費等

500万円

10%

50万円

合計



530万円

この会社の場合、何もしなければ年間利益が530万円減ります。

まずはこの金額を把握します。

STEP2|維持したい利益を決める

次に、

値上げ後にいくら利益を残したいのか

を決めます。

ここで「とりあえず黒字ならいい」と考えるのは少し危険です。

会社には利益から、

  • 借入金の返済

  • 法人税等の納税

  • 設備投資

  • 将来の採用・賃上げ

  • 手元資金の積み増し

を行う必要があるからです。

例えば現在、

売上高 1億円営業利益 800万円

だったとします。

コスト上昇によって530万円利益が減ると、

営業利益は270万円になります。

黒字ではあります。

ただ、年間500万円の借入元本返済がある会社なら、これでは十分とは言えません。

ですから、

「赤字にならなければよい」ではなく、「会社に必要な利益はいくらか」

から考えることが重要です。

STEP3|必要な売上高から値上げ率を逆算する

例えば、

  • 現在売上 1億円

  • 現在利益 800万円

  • 年間コスト増加額 530万円

  • 維持したい利益 800万円

なら、

現在のコストは、

1億円 − 800万円 = 9,200万円

です。

コスト上昇後は、

9,200万円 + 530万円 = 9,730万円

となります。

利益800万円を確保するには、

9,730万円 + 800万円 = 1億530万円

の売上が必要です。

したがって、

1億530万円 ÷ 1億円 = 105.3%

つまり、

平均5.3%の価格改定が必要

という計算になります。


計算式で覚えるならこれだけでよい

会社全体の値上げ率を簡単に計算するなら、

必要値上げ率 = コスト増加額 ÷ 現在売上高

が一つの目安になります。

先ほどの例なら、

530万円 ÷ 1億円 = 5.3%

です。

ただし、これは、

  • 販売数量が変わらない

  • 商品構成が変わらない

  • 現在の利益水準を維持する

という単純化した計算です。

実際には、値上げによって販売数量が減る可能性もあります。

そこまで考える場合には、もう一段階シミュレーションが必要です。


10%値上げして売上数量が5%減ったらどうなる?

社長さんが値上げをためらう最大の理由は、

「お客さんが離れないか」

だと思います。

これは当然です。

ただ、ここでも感覚ではなく数字で考えてみます。

現在、

100円の商品を100万個販売しているとします。

売上は、

100円 × 100万個 = 1億円

です。

これを110円に値上げした結果、販売数量が5%減り、

95万個になったとします。

売上は、

110円 × 95万個 = 1億450万円

です。

数量は5%減っていますが、売上は4.5%増えています。

もちろん、ここから原価や固定費を引いて判断する必要がありますが、

「値上げすると売上が落ちる」だけではなく、「数量がどこまで減ると利益が悪化するのか」

を見る必要があります。

ここまで計算すると、値上げの判断はかなりしやすくなります。


原価だけでなく、人件費も価格に反映させる

ここ数年、特に重要になっているのが人件費です。

商品を仕入れて売るだけであれば原価は分かりやすいのですが、サービス業、建設業、IT、士業、介護、運送などでは、

人そのものが原価

という会社も少なくありません。

例えば、

年間人件費2,000万円の会社が5%賃上げすれば、

2,000万円 × 5% = 100万円

コストが増えます。

にもかかわらず、販売価格を据え置けば、その100万円はそのまま会社の利益から出ていきます。

賃上げを続けながら価格を据え置くということは、

実質的には会社が毎年値下げを続けている

のと似た状態になります。

政府も、原材料費だけでなく労務費の適切な価格転嫁を重要課題としています。

公正取引委員会の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は、2026年1月1日に改正され、受注者側についても、発注者から価格を提示されるのを待つのではなく、自ら希望額を提示することなどが示されています。


値上げできない会社ほど「商品別粗利」を確認する

もう一つ、ぜひ見てほしい数字があります。

それが、

商品別・顧客別の粗利益

です。

会社全体では黒字でも、実際には、

  • A商品は利益が出ている

  • B商品はほぼ利益ゼロ

  • C商品は売れば売るほど赤字

というケースがあります。

特に長年価格を据え置いている会社では、この状態がよく起きます。

例えば、

販売価格 10,000円原価 7,000円

なら粗利益は3,000円です。

原価が8,000円まで上がると、

粗利益は2,000円になります。

粗利率は、

30% → 20%

まで低下します。

この商品を以前と同じ粗利率30%に戻したい場合、

販売価格を単純に11,000円にすればよいわけではありません。

適正価格は、

8,000円 ÷(1-30%)

= 約11,429円

です。

つまり、

約14.3%の値上げ

が必要になります。

原価は、

7,000円 → 8,000円

なので約14.3%上昇しています。

この例では同程度ですが、粗利率の設定によって必要価格は変わります。


粗利率から販売価格を逆算する方法

商品単位で適正価格を決めるなら、この式が便利です。

販売価格 = 原価 ÷(1-目標粗利率)

例えば、

原価 6,000円目標粗利率 40%

なら、

6,000円 ÷ 60% = 10,000円

です。

原価が7,000円になった場合、

7,000円 ÷ 60% = 約11,667円

となります。

したがって、

10,000円 → 約11,667円

つまり、

約16.7%の値上げが必要です。

「いくらなら売れるか」ももちろん大事ですが、

いくらで売らなければ会社に利益が残らないか

も同時に知っておく必要があります。


全商品を一律○%値上げする必要はない

値上げというと、

「全商品5%値上げ」

のように、一律で考えがちです。

ただ、私は必ずしも一律である必要はないと思います。

例えば、

  • 競争が激しい商品 3%

  • 独自性が高い商品 10%

  • 赤字商品 15%

  • 高利益商品 据え置き

という方法もあります。

会社全体として必要な値上げ額が530万円なのであれば、

どの商品・顧客から530万円を回収するか

を考えればよいわけです。

ここには経営判断が入ります。


価格改定は「値上げ」ではなく「採算の正常化」と考える

値上げには心理的な抵抗があります。

特に長く付き合っているお客様ほど、

「申し訳ない」

という気持ちが出てくるものです。

ただ、赤字の価格で商品やサービスを提供し続ければ、いずれ、

  • 賃上げできない

  • 採用できない

  • 設備投資できない

  • 品質を維持できない

という問題が起きます。

それでは、長期的にはお客様にも迷惑をかけます。

ですから私は、

値上げというより「採算を正常な水準に戻す」

と考えたほうがよいと思っています。

中小企業庁の2026年版中小企業白書でも、2025年9月時点の中小企業のコスト全般の価格転嫁率は53.5%とされており、価格転嫁が進んでいる企業と、十分に転嫁できていない企業の二極化が続いていることが指摘されています。

つまり、

「周りが値上げしていないからできない」

ではなく、

自社の採算から価格を考える

ことがますます重要になっています。


値上げ交渉では「お願い」より「根拠」を示す

BtoB取引の場合、価格改定では説明資料も重要です。

例えば、

「厳しいので10%上げてください」

より、

  • 原材料費 年間300万円増加

  • 人件費 年間100万円増加

  • 外注費 年間80万円増加

  • 物流費等 年間50万円増加

合計530万円のコスト増加

という説明のほうが交渉はしやすくなります。


価格改定は、根拠を数字で示すことが大切です。


値上げを決める前に社長が確認したい5つの数字

値上げを検討するなら、最低限、次の数字は確認しておきたいところです。

  1. 現在の売上高

  2. 商品別・顧客別の粗利率

  3. 原材料費・仕入価格の上昇額

  4. 人件費・外注費など固定費の上昇額

  5. 会社が年間で必要とする利益額

この5つが分かれば、

「5%くらい上げようか」

という感覚の話から、

「最低5.3%の価格改定が必要」

という経営判断に変わります。

私は、ここが非常に重要だと思っています。


自社はいくら値上げすればよいのか、数字から確認してみませんか?

価格改定を考える場合、単純に原価上昇率を見るだけでは十分ではありません。

いちご会計事務所では、試算表や決算書をもとに、

  • 商品・サービス別の粗利

  • 人件費を含めた固定費

  • 借入返済を含めた必要利益

  • 必要売上高

  • 値上げ後の利益シミュレーション

などを確認しながら、経営判断に必要な数字を整理するサポートを行っています。

「値上げしたいが、いくら上げればよいか分からない」という場合は、経営強化型税務顧問などの伴走支援の中でご相談ください。


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