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売上の大きい顧客ほど儲かるとは限らない|顧客別粗利の見方

9月16日
読了時間: 6分


「この会社は年間3,000万円も買ってくれる大切なお客様だから」

売上の大きい取引先ほど、会社にとって重要な顧客だと考えていないでしょうか。

もちろん、売上は重要です。

しかし、売上の大きい顧客が、会社に最も利益をもたらしているとは限りません。

値引きが多い、特別対応が多い、少量多頻度の発注が多い。こうした取引では、売上が大きくても思ったほど利益が残っていないことがあります。

そこで私が確認したいのが「顧客別粗利」です。

今回は、顧客別に粗利益を見る方法と、取引先の採算を経営判断にどう使うかを解説します。



売上ランキングだけでは「良い顧客」は分からない

最初に結論です。

顧客別の採算を見るなら、少なくとも、

売上高・粗利益額・粗利益率

の3つを並べてください。

たとえばA社とB社という2社の取引先があるとします。

A社年間売上 3,000万円粗利益率 15%粗利益 450万円

B社年間売上 2,000万円粗利益率 35%粗利益 700万円

売上高だけならA社の方が1,000万円多く、A社が一番のお得意様に見えます。

ところが、会社に残してくれている粗利益はB社の方が250万円多くなります。

この違いは、会社全体の売上高や粗利益を見ているだけでは分かりません。

「どれだけ買ってくれているか」と「どれだけ利益を生み出しているか」は別の話なのです。


顧客別粗利はどう計算する?

基本的な考え方は、商品別粗利と同じです。

顧客別粗利益=顧客別売上高-その顧客に対応する売上原価

さらに、

顧客別粗利益率=顧客別粗利益÷顧客別売上高×100

を計算します。

たとえば年間売上2,000万円の取引先に対して、対応する原価が1,500万円なら、粗利益は500万円、粗利益率は25%です。

まずはこれを主要な取引先ごとに並べてみます。

中小企業庁の調査でも、製品・商品・サービスの原価構成や利益を把握している企業ほど、価格転嫁が進んでいる傾向が示されています。

顧客別粗利を見ることは、単に「儲かる顧客ランキング」を作るためではありません。

価格や取引条件を見直すための基礎資料にもなります。


売上上位3社を並べてみる

たとえば次のような会社があったとします。


売上高

粗利益

粗利益率

A社

3,000万円

450万円

15%

B社

2,000万円

700万円

35%

C社

1,500万円

450万円

30%

売上ランキングではA社が1位です。

しかし、粗利益ではB社が1位です。

ここで経営者に考えてほしいのは、

「なぜA社の粗利益率は低いのか?」

ということです。

長年の取引で価格を据え置いているのかもしれません。

取引量が多いことを理由に、大幅な値引きをしている可能性もあります。

あるいは、原材料費や外注費が上昇しているのに価格改定ができていないのかもしれません。

顧客別に数字を分けることで、初めてこうした問題が見えてきます。


粗利益率だけで「儲からない顧客」と判断しない

ただし、粗利益率が低いからといって、

「A社との取引はやめよう」

と考えるのは早すぎます。

顧客別採算では、粗利益率と粗利益額の両方を見る必要があります。

粗利益率は低くても、取引量が多いため、会社全体では大きな粗利益を生み出している顧客もいます。

さらに、その顧客との取引が信用力につながっている、別の商品購入につながっている、繁忙期と閑散期の仕事量を安定させている、といった数字だけでは判断できない要素もあります。

顧客別粗利は、取引を続けるかどうかを機械的に決める数字ではありません。

「この取引条件のままでいいのか」を考えるための数字だと私は考えています。


売上だけでは見えない「手間」も確認する

もう一つ、顧客別採算で見落としやすいのが「手間」です。

同じ粗利益500万円を生み出す顧客でも、

年に数回の大口取引で500万円を生み出す顧客と、

細かな注文、見積り、配送、問い合わせ、仕様変更などを繰り返して500万円を生み出す顧客では、会社側の負担が違います。

営業担当者が何度も訪問している。

少量配送が多い。

請求や入金管理に手間がかかる。

クレームや返品対応が多い。

特別仕様への対応が必要。

こうしたコストが大きい業種では、粗利益だけでは本当の採算を判断できない場合があります。

最初からすべてのコストを顧客別に正確に配賦する必要はありません。

まずは顧客別粗利益を出し、そのうえで「この顧客には特別にどんな手間がかかっているか」を確認するだけでも、かなり見え方が変わります。


採算の悪い顧客を見つけたら何をする?

顧客別粗利を計算して採算の悪い取引先が見つかっても、すぐに取引をやめる必要はありません。

まず改善できないかを考えます。

たとえば、

値上げをお願いする。過度な値引きを見直す。最低発注数量を設定する。配送回数をまとめる。個別対応を標準化する。高粗利の商品・サービスを提案する。

といった方法があります。

2026年版小規模企業白書には、製品別原価を算出した結果、約7割の製品が赤字受注だったことが判明した企業が紹介されています。

同社は具体的な原価を示して価格交渉を行い、それでも採算が合わない取引については、長年の大口顧客であっても取引停止を決断しました。その結果、売上高は横ばいでも黒字転換しています。

重要なのは「大口顧客を切ること」ではありません。

まず採算を把握し、改善交渉を行い、それでも改善できない場合に経営判断することです。


私が実務で見たいのは「売上上位」と「粗利益上位」の違い

私は、全社の売上や利益を確認した後、必要に応じて商品別、顧客別、部門別へ数字を分解することが大切だと考えています。

特に一度見てほしいのが、

「売上上位10社」と「粗利益上位10社」は同じか?

ということです。

もし順位が大きく違うなら、そこには何か理由があります。

値決めなのか。

商品構成なのか。

原価なのか。

値引きなのか。

取引条件なのか。

数字を分解する目的は、取引先に良い・悪いのレッテルを貼ることではありません。

利益を失っている場所を見つけ、次に何を変えるかを考えるためです。


また、顧客別粗利を作成するには商品別粗利もわからないと集計できません。

なので、まずは商品別粗利を計算して、それを販売している顧客別に集計するという順番が、当たり前ですが必要です。


まとめ|売上ランキングの隣に「顧客別粗利益」を並べる

売上の大きい顧客ほど儲かるとは限りません。

まず主要な取引先について、

売上高・粗利益額・粗利益率

の3つを並べてみてください。

そのうえで、

「なぜ、この顧客は売上が大きいのに粗利益率が低いのか?」

と考えてみます。

値上げが必要なのか。

値引きを見直すのか。

取引条件を変えるのか。

業務の効率化が必要なのか。

顧客別粗利が分かれば、具体的な改善策を考えられるようになります。

売上を増やすことはもちろん大切です。

しかし、限られた人員と時間をどの顧客に使うのかも、中小企業にとって重要な経営判断です。

「たくさん買ってくれる顧客」だけでなく、「会社の粗利益を生み出している顧客」を見る。

そこから、利益改善のヒントが見つかることがあります。

 
 
 

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