損益分岐点売上高の計算方法|毎月いくら売れば赤字を避けられる?

売上目標を「前年より10%増」で決めていませんか。先に知っておきたいのは、毎月いくら売れば赤字にならないかという数字です。これを損益分岐点売上高といいます。計算に必要なのは、売上に応じて増える費用、毎月ほぼ一定の費用、そして現在の売上高です。自社の数字に置き換えながら確認してみましょう。
結論:固定費を限界利益率で割る
計算式は、次のとおりです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率限界利益率 =(売上高 − 変動費)÷ 売上高
損益分岐点は、売上から変動費を引いた「限界利益」が固定費と等しくなり、営業利益がゼロになる売上高です。
例えば、毎月の固定費が300万円、限界利益率が30%なら、損益分岐点売上高は1,000万円です。
300万円 ÷ 30% = 1,000万円
月商1,000万円でようやく営業利益がゼロ。利益を残すには、それを超える売上が必要です。
まず費用を「変動費」と「固定費」に分ける
変動費は、売上や販売数量に応じて増減する費用です。商品の仕入代金、材料費、販売数量に応じた外注費や配送費などが該当します。
固定費は、売上が少ない月にも継続して発生する費用です。役員報酬、正社員の給与、家賃、通信費、減価償却費などが代表例です。費用の名称だけで機械的に決めず、自社では売上の増減に伴って動くかで判断します。
ここで注意したいのは、決算書の「売上総利益率」をそのまま限界利益率として使わないことです。製造業などでは、売上原価の中に売上の増減とは連動しない人件費や減価償却費が含まれる場合があります。損益分岐点を計算するときは、費用を売上原価・販管費という表示区分から、変動費・固定費という見方に組み替えます。
最初から完全な分類を目指す必要はありません。直近数か月の数字を使い、明らかに変動する費用と、毎月ほぼ一定の費用から分けてみてください。
計算例:月商1,200万円の会社はいくらまで売上が減ると赤字か
次の会社を例にします。数字は計算方法を示すための仮定です。
項目 | 月額 |
売上高 | 1,200万円 |
変動費 | 840万円 |
限界利益 | 360万円 |
固定費 | 300万円 |
営業利益 | 60万円 |
限界利益率は、360万円 ÷ 1,200万円で30%。したがって、損益分岐点売上高は300万円 ÷ 30%で月1,000万円です。
現在の売上1,200万円との差は200万円。売上が約16.7%減ると、営業利益がゼロになる計算です。この割合を「安全余裕率」といいます。
安全余裕率 =(現在の売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 現在の売上高=(1,200万円 − 1,000万円)÷ 1,200万円= 約16.7%
安全余裕率を見ると、今の黒字にどれくらい余裕があるかが分かります。
赤字を避ける売上と、必要な利益を残す売上は違う
損益分岐点は「利益ゼロ」のラインです。会社に利益を残したいなら、目標利益も計算に入れます。
目標売上高 =(固定費 + 目標営業利益)÷ 限界利益率
先ほどの会社が毎月90万円の営業利益を目指すなら、必要な売上高は次のようになります。
(固定費300万円 + 目標営業利益90万円)÷ 30%= 月1,300万円
現在の月商1,200万円から、あと100万円の売上が必要です。ただし、売上を100万円増やせば100万円の利益が増えるわけではありません。変動費率が70%なら、増える限界利益は30万円で、営業利益は60万円から90万円になります。
このように残る利益から逆算していけば、いくらの売り上げが必要かがわかります。
また売上の限界があるならば、どのくらいの限界利益率にしなければならないのか、固定費はどのくらいで抑えなければならないのか、ということも分析ができます。
そのため、この数字の使い道は、営業担当者に「もっと売ってほしい」と伝えることだけではありません。
たとえば限界利益率が30%から31%に改善すれば、固定費300万円の損益分岐点は約968万円まで下がります。
300万円 ÷ 31% = 約968万円
現在と同じ月商1,200万円でも、限界利益率が1ポイント上がれば限界利益は12万円増えます。商品構成の見直し、原価管理、値引きの抑制、価格の改定などは、必要売上を下げる選択肢になります。
ただし、値上げによって販売数量が減れば、想定どおりの利益改善にならない場合もあります。また、固定費を削れば損益分岐点は下がりますが、必要な人材や設備まで削ると、将来の売上や品質を損ねかねません。価格、変動費、固定費をそれぞれ動かした場合の影響を試算して判断することが大切です。
私がする財務コンサルなら、会社全体の数字分析だけで終わらせません
会社全体で損益分岐点を超えていても、すべての商品や顧客が利益に貢献しているとは限りません。
私がこの数字を経営判断に使うなら、まず全社の損益分岐点を把握し、次に商品別・顧客別に、どこで限界利益を生んでいるかを確認します。売上が大きくても、値引きや追加対応が多い仕事は、見かけほど利益を残していない可能性があるからです。
いちご会計事務所では、商品別粗利の見方と顧客別粗利の見方も解説しています。全社の目標売上を計算した後、どの商品を伸ばし、どの取引条件を見直すかを考える際に役立ててください。www.15tax-fukuoka.com
損益分岐点を使うときの注意点
第一に、損益分岐点を超えても、資金繰りが安全とは限りません。借入金の元本返済は通常、営業利益を計算する費用に含まれません。売掛金の回収遅れ、在庫の増加、設備投資も現金を動かします。月々の返済や納税に必要な資金は、損益計画とは別に資金繰り表で確認してください。
第二に、限界利益率を一定とする計算は、商品構成や販売価格が大きく変わらないことを前提にしています。安い商品ばかり売れた月や、大口受注で値引きが増えた月は、同じ売上高でも利益が変わります。
第三に、季節によって売上が変動する会社は、毎月必ず損益分岐点を超えることだけを目標にしないでください。月次で状況を把握しながら、年間でも必要な利益と資金を確保できるかを見ます。
まとめ:今月の「最低売上」と「目標売上」を分けて決める
まず直近の数字から変動費と固定費を分け、固定費 ÷ 限界利益率で損益分岐点売上高を計算します。次に、残したい営業利益を固定費に加え、目標売上高を出します。
社長が毎月確認したいのは、「売上目標まであといくらか」だけではありません。現在の売上が損益分岐点からどれだけ離れているか、その差を価格・商品構成・原価・販売数量のどこで改善するかです。数字を行動につなげてこそ、損益分岐点を計算する意味があります。





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