倒産は他人事じゃない—連鎖倒産を防ぐ社長の資金防衛術
- tomohiro adachi
- 4 日前
- 読了時間: 4分

最近、「倒産が増えているらしい」という話が、いよいよ他人事ではなくなってきました。物価高で原価が上がり、人手不足で採用も外注も高い。最低賃金もじわじわ効いてくる。加えて、コロナ融資返済の本格化で、手元資金に余裕がなくなっている会社も少なくありません。
ここで怖いのは、倒産が“自社の損益”だけで起きるわけではないことです。黒字でも、取引先が倒れて売掛金が回収不能になった瞬間に、資金繰りが詰まる。いわゆる連鎖の形です。利益が出ていることと、資金が回ることは、似ているようで別物です。
「建設は何社に1社が危ないのか」—数字の“肌感”が変わってきた
直近で参考になるデータとして、アラームボックス社が、ネット上の決算・ニュース等を分析し「1年以内に倒産する危険性がある要警戒企業」を業種別に整理しています(2024/12/1〜2025/11/30に収集した14,143社・255,755件)。
そこで建設関連を見ると、たとえば
総合工事業:35社に1社が倒産の危険性あり
職別工事業(設備工事を除く):38社に1社が倒産の危険性あり
という示され方でした。以前よく見かけた「50社に1社」よりも、もう少し“身近な事故率”として迫ってきます。しかも、職別工事の説明には、下請け構造の中での運転資金不足、支払遅延、信用力低下につながる情報が多いことなど、現場の実感と重なる指摘が並びます。
さらに、実際の倒産件数の面でも、帝国データバンクの分析では、2025年の建設業倒産は2,021件で、過去10年で最多、12年ぶりに2,000件超とされています。背景として、人件費の急騰、工期延長、建材価格上昇に対し、請負単価への転嫁が追いついていない点が挙げられています。
予測(与信の危険度)と実績(倒産件数)の両方が、同じ方向を向いている。これは、社長として無視できないサインです。
なぜ建設は「受注があっても」苦しくなるのか
建設業の難しさは、単純に「仕事がない」ではありません。むしろ、一定の需要がある局面でも、資金繰りが崩れることがある。帝国データバンクも、受注環境が極端に悪いわけではない中で、増収なのに運転資金が追いつかず倒れるケースがある、と述べています。
社長の現場感に直すと、こういう構造です。
工事量が増えるほど、先に出ていくお金が増える(外注費・材料費・人件費)
入金は検収・請求・支払サイトの分だけ遅れる
その間を埋める資金が薄いと、ちょっとしたズレで息切れする
つまり、“仕事の増加”が、そのまま“資金需要の増加”になる業種なのです。ここに資材高、人件費高、工期の延びが重なると、体力の薄い会社から順に苦しくなっていきます。
中小企業が今日からできる「与信管理の型」
上場企業のように与信管理部を作る必要はありません。中小企業は、小さな仕組みを、決めて、回す。これで十分に防御力が上がります。
1)月次は「利益」より先に“売掛金の年齢”を見る
試算表が出たら、利益より先に、**売掛金の滞留(月をまたいだ残り方)**を見てください。「入金が1回遅れた」「分割の相談が増えた」「検収が伸びる」—この手の変化は、倒産のかなり手前で出ます。営業任せにせず、社長が“資金のにおい”として拾うことが大切です。
2)高額案件は“契約と請求”を先に整える
建設・工事・制作系で事故が大きくなるのは、だいたいここです。
前受・中間金(着工金)を入れる
マイルストーン請求(工程ごとに請求)にする
取引限度額(売掛の上限)を決める
例外的にサイトを伸ばさない(例外は連鎖します)
「言いにくい」という気持ちは分かりますが、言いにくい条件ほど、事故のときに会社を守ります。条件交渉は、相手が元気なうちにやるのが鉄則です。
3)“気配”を共有できる社内にする
数字に出る前に、現場の空気が先にざわつきます。人が急に辞める、外注先が頻繁に変わる、連絡がつきにくい、請求書の確認が遅い。こういうサインを拾った社員が、遠慮なく共有できる空気を作る。これは立派な与信管理です。
倒産が増える局面では、「売上を取りに行く力」と同じくらい、「回収できる形で売る技術」が重要になります。守りは地味ですが、守れた会社だけが次のチャンスを取りに行けます。今月の試算表を見るとき、ぜひ一度、売掛金の滞留と例外取引を点検してみてください。そこに、連鎖リスクを断ち切る第一歩があります。









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