決算前の節税対策7選|会社に現金を残すための正しい判断
「利益が出そうなので、決算までに何か買った方がよいでしょうか」。決算前に考えたいのは、税金をいくら減らせるかと、その後に現金がいくら残るかです。まず計上漏れや資産の実態を確認し、追加支出は事業に必要なものに絞ります。今回は、中小企業の法人が決算前に確認したい7項目を、資金への影響とともに整理します。
※2026年10月15日確認の情報です。法人税を中心に解説しています。各制度の適用は、会社の状況、取引の実態、対象年度によって異なります。
節税しても、会社の現金が増えるとは限りません
数字で確認してみましょう。100万円の支出が当期に全額損金となり、その支出に対応する税負担の軽減割合を30%と仮定します。消費税等や支払時期の違いを考慮しない単純例です。
税負担は30万円減りますが、100万円を支払うため、何もしない場合と比べた手元資金は差し引き70万円減ります。30%は説明用の仮定で、自社にそのまま当てはまる税率ではありません。赤字などで課税所得がなければ、損金を増やしても当期の税額が同じように減るとは限りません。
必要な修繕や設備投資なら、支出する意味があります。一方、使わないものを買えば、税金が減っても経営の余力は小さくなります。私は、制度上の可否に加えて、その支出が将来の利益や仕事の質につながるかを確認することが大切だと考えています。
なお、損金は法人税の所得計算で差し引く費用・損失を指します。会計で費用にしたものが、すべて税務上も同じように認められるわけではありません。
1.未払費用の計上漏れを確認する
最初に見るのは、新しく支払うものより、すでに当期に発生している費用です。期末までに受けたサービスについて、請求書が翌月に届くため計上が漏れていないかを確認します。
原則となる債務確定の判断では、期末までに、①債務が成立している、②支払の原因となる具体的な事実が発生している、③金額を合理的に算定できる、という3点を満たす必要があります。契約書、作業完了の報告、料金表などを照合します。将来のサービスを発注しただけでは足りません。これは支払義務のある費用を正しい年度に反映する作業です。
2.不良在庫の実態を調べ、処分・評価を検討する
帳簿上は商品でも、破損や品質の変化で通常の販売ができないものが混じっていることがあります。実地棚卸で数量だけでなく、売れる状態かどうかも確認します。
在庫の評価損には税務上の要件があります。著しい陳腐化や破損などの具体的な事実を調べ、単に売れ残った、相場が下がったという理由だけで一律に減額しないことが大切です。廃棄する場合も、対象品、数量、帳簿価額、廃棄日を記録し、写真や処分業者の書類を残します。
損失を計上しても、過去に仕入れた代金は戻りません。売却できるものは回収可能額を確認し、保管費や処分費も含めて判断します。在庫整理を、次の仕入量と発注ルールの見直しにつなげることも重要です。
3.不要設備を確認し、除却の要件を検討する
固定資産台帳と現物を照合すると、処分したパソコンや使わなくなった設備が残っていることがあります。処分日、帳簿価額、売却代金や処分費を確認し、処理漏れを点検します。
現物が残っていても、使用を廃止し、今後通常の方法で事業に使う可能性がないと認められる資産には、有姿除却を検討できる場合があります。その場合の損失は、帳簿価額から処分見込価額を差し引いて考えます。一時的な休止や、将来使う予定のある設備まで対象になるわけではありません。
対象設備の写真、使用廃止の理由、社内の決定記録などを整理し、税理士と判定してください。
4.回収できない売掛金は、貸倒損失の要件を確認する
長期間回収できていない売掛金は、残高と回収経過を一覧にします。ただし、支払が遅いというだけで自由に貸倒処理できるものではありません。
税務では、法的な整理による債権切捨て、債務者の資産状況などから明らかになった全額回収不能、一定の取引停止後の未回収など、根拠ごとに要件と処理時期が違います。例えば、継続取引の相手先との取引停止等から1年以上経過した場合の取扱いは、貸付金には使えず、担保のある売掛債権も除かれます。
請求書、督促の記録、最終入金日、取引停止の経緯、担保・保証の状況を確認します。貸倒処理は現金回収の代わりにはなりません。回収活動と、新たな未回収を増やさない与信管理も並行して進めます。
5.必要な修繕は、工事内容と完了時期を確認する
機械や店舗の修繕が事業上必要なら、決算前に内容と日程を検討する意味があります。通常の維持管理や原状回復に当たる部分は、修繕費として損金算入を検討できます。
一方、設備の価値を増したり使用可能期間を延ばしたりする部分は、原則として資本的支出となり、減価償却を通じて費用化します。「修繕工事」と書かれた請求書だけで判断せず、見積書や施工内容を確認してください。
当期の費用にするには、発注や前払いだけで済ませず、施工・完了の実態と計上時期も確認します。
作業完了していない場合は、経費として落とすことはできません。
また、税金の問題だけでなく、修繕する本来的な意味である故障や事故を防げるかなどの経費の有効性考え、工事停止時間を勘案しながら必要な修繕を無理なく実施することが先です。
6.従業員の決算賞与は、通知・支払・資金をそろえる
利益を従業員に還元する決算賞与も選択肢です。期末に未払いの賞与を通知した年度の損金にするには、原則として次の要件をすべて満たす必要があります。
支給額を各人別に、同時期に支給を受けるすべての使用人へ通知する。
通知したすべての使用人へ、通知した年度の終了日の翌日から1か月以内に通知額を支払う。
通知した年度に、その金額を損金経理する。
支給日に在職している人だけに支給する条件では、この取扱いの通知に該当しない点にも注意が必要です。通知書と受領記録、振込記録をそろえます。
なお、これは使用人賞与の説明であり、役員賞与へそのまま使える制度ではありません。役員給与として定期同額で支払われるもの以外の臨時の支給は役員賞与となり、原則として損金不算入となります。
7.必要設備の導入と、少額資産特例を検討する
少額減価償却資産の特例が使えるかを調べます。
2026年4月1日以後に取得等をする資産では、この特例の取得価額基準は従来の30万円未満から40万円未満へ変わっています。現行の対象期間は2029年3月31日までです。青色申告の一定の中小企業者等が対象で、通常は資本金1億円以下かに加え、大企業の支配関係や適用除外も確認します。従業員数の基準は原則400人以下へ見直されています。
対象額は原則年300万円までで、1年未満の事業年度は月数に応じた限度額となります。当期に事業で使い始め、損金経理と申告書への明細添付などの手続が必要です。契約や支払だけで期末を迎え、まだ使用していないものは同じ扱いにできません。
貸付用資産などの除外や、他の特別償却・税額控除との重複制限も確認します。
ただ、節税で無駄な備品を買ってしまっては本末転倒です。
必要性、使い始める日、取得価額、対象要件、残りの限度額を一組で確認し、枠を使い切るための購入は避けてください。
決算前の判断を、1枚の資金予定表にする
7項目を確認したら、対策ごとに「当期の損金見込額」「税負担軽減の見込額」「現金支出額と支払日」「事業上の効果」を並べます。損金計上の時期が早まるだけの対策は、翌期以降への影響も確認します。
そのうえで、対策を実行する場合と見送る場合の資金予定を比較してください。現在の預金に、今後の入金を足し、仕入・給与・借入返済・設備代・法人税等・消費税の支払をそれぞれの月に置きます。決算日だけで区切らず、少なくとも納税と主要な支払を終える月まで見ます。
そろえたい資料は、最新の試算表、決算までの売上・経費予測、売掛金一覧、棚卸表、固定資産台帳、賞与・投資計画、借入返済表です。
経理担当者と確認日を決めると、決算直前の買い物探しから、数字に基づく判断へ変えられます。
納税資金の見通しを詳しく確認したい方は、関連記事「黒字なのに現金がないのはなぜ?法人税・消費税の納税資金を残す方法」もご覧ください。
まとめ|税金を払った後も、動ける会社へ
決算前の節税は、まず帳簿と資産の実態を整え、必要な支出を選び、納税後の資金まで確認する順番で考えます。税額を減らすことだけに目を向けると、会社に必要な余力まで使い切ってしまいます。
いちご会計事務所の経営強化型税務顧問では、月次の財務分析や資金繰りの見える化を通じて、社長の判断を支援しています。「決算前に何を実行し、何を見送るか」を整理したい方は、決算・資金繰りに関するご相談へ、決算月と現在の課題をお知らせください。
利益を残し、税金を払い、それでも次の一手を打てる会社へ。決算を、そのための判断の機会にしたいものです。






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