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黒字なのに現金がないのはなぜ?法人税・消費税の納税資金を残す方法

  • 2 時間前
  • 読了時間: 10分

「決算は黒字なのに、税金を払ったら通帳のお金が一気に減った」

中小企業では珍しいことではありません。

利益と現金は同じものではなく、さらに法人税や消費税は一定の時期にまとまって支払うため、事前に準備していないと黒字会社でも資金繰りが苦しくなることがあります。

この記事では、法人税・消費税によってなぜ現金が減るのか、そして納税時期になって慌てないために、会社が毎月どのように納税資金を管理すればよいのかを解説します。


結論|税金は「決算が終わってから考える」のでは遅い

最初に結論です。

納税による資金繰り悪化を防ぐために重要なのは、

毎月の試算表から納税額を予測し、税金として使わないお金を先に確保すること

です。

特に注意したいのが消費税です。

法人税は基本的に会社の所得をベースに計算されますが、消費税は利益だけを見ても納税額を判断できません。

そのため、

「今年はあまり利益が出ていないから税金も少ないだろう」

と思っていたところ、決算時に数百万円の消費税が発生することがあります。

納税資金は余った現金から払うものではありません。

毎月発生する将来の支払いとして、資金繰りの中に最初から組み込んでおく必要があります。


なぜ黒字なのに現金がなくなるのか

まず、

利益と現金は一致しない

ということを理解しておく必要があります。

例えば、会社が1,000万円の利益を出したとしても、その1,000万円がそのまま銀行預金として残っているとは限りません。

利益を出すまでの間に、

  • 売掛金が増える

  • 在庫が増える

  • 借入金を返済する

  • 設備投資を行う

  • 税金を支払う

といったことがあるからです。

例えば売上を計上しても、取引先からまだ入金されていなければ利益は増えても現金は増えません。

一方、銀行借入金の元本を500万円返済すると現金は500万円減りますが、元本返済は原則として経費になりません。

つまり、

利益が出ることと、会社に現金が残ることは別問題

なのです。

この点については、以前の記事「黒字なのにお金がない7つの理由」でも詳しく解説しています。

今回さらに注意したいのが、

利益が出た後に発生する納税

です。


法人税は決算後に現金が出ていく

法人税の確定申告は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行い、税額を納付します。申告期限の延長など一定の例外はあります。

例えば3月決算の会社であれば、原則として5月末までに申告・納付することになります。

ここで問題になるのが、

決算日の預金残高だけを見て安心してしまうこと

です。

例えば3月31日時点で、

現預金 1,500万円

あったとします。

社長から見ると、

「1,500万円あるから余裕がある」

と感じるかもしれません。

しかし、5月までに法人税等300万円、消費税400万円を納付する予定なら、単純計算では納税後の現金は800万円です。

さらにその間に、

給与仕入代金借入金返済社会保険料

なども支払います。

つまり、

決算時の通帳残高=自由に使えるお金

ではありません。


消費税は特に資金繰りに注意する

納税資金管理の中で、私が特に注意してほしいと思うのが消費税です。

消費税は、基本的には売上等に係る消費税額から仕入れや経費等に係る控除対象の消費税額を差し引いて計算します。

そのため、

会社の利益と消費税の納税額は必ずしも連動しません。

例えば、

売上は大きいしかし利益率は低い

という会社では、

「利益はそれほど出ていないのに、消費税の納税額は大きい」

ということがあります。

また、税抜経理を行っている場合、預かった消費税等は売上高そのものには含めず処理されます。

ところが銀行口座では、売上代金と一緒に現金として入金されます。

そのため、

預金残高が増えたため、自社で自由に使えるお金が増えたように見えてしまう

ことがあります。

ここが消費税による資金繰り悪化の典型的な原因です。


消費税は「預かった瞬間」に分けて考える

例えば税込1,100万円を取引先から入金しても、その全額を自由に使える資金と考えるべきではありません。

もちろん、実際の消費税納付額は仕入税額控除などによって変わるため、単純に売上に含まれる消費税相当額をそのまま納付するわけではありません。

それでも資金管理上は、

入金された現金の中に、将来納税する可能性が高いお金が含まれている

と考えた方が安全です。

この認識がないまま、

設備を買う賞与を増やす借入金を繰上返済する役員報酬を増やす

といった意思決定をすると、決算後に納税資金が不足する可能性があります。


法人の消費税は原則として課税期間終了後2か月以内

法人の消費税の確定申告・納付期限は、原則として課税期間の終了の日の翌日から2か月以内です。

一定の要件を満たして消費税の申告期限の延長特例を適用している場合は、期限が1か月延長されることがあります。

したがって通常の法人では、

法人税等と消費税がほぼ同じ時期にまとまって資金流出する

ことになります。

これを資金繰り表に入れていなければ、

「黒字決算だったのに、2か月後に一気にお金がなくなった」

ということが起こります。


消費税には中間納付もある

さらに注意したいのが消費税の中間申告・中間納付です。

直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税を含まない年税額)によって、中間申告の回数が変わります。

直前の課税期間の確定消費税額

原則的な中間申告回数

48万円以下

原則不要

48万円超400万円以下

年1回

400万円超4,800万円以下

年3回

4,800万円超

年11回

国税庁は、この区分による中間申告・納付制度を案内しています。48万円以下の場合でも、一定の手続きを行えば任意の中間申告制度を利用できる場合があります。

売上が拡大して消費税額が増えてくると、

決算時だけ税金を払う会社から、期中にもまとまった納税が発生する会社へ変わる

可能性があります。

前年より売上が伸びている会社では特に注意してください。


業績が悪化した場合には仮決算による中間申告も検討する

前年の業績が非常に良く、今期の業績が大きく悪化している場合、前年実績に基づく中間納付が資金繰りを圧迫することがあります。

消費税については、一定の場合、各中間申告対象期間について仮決算を行い、その実績に基づいて中間申告・納付する方法があります。

ただし、手続きや期限があり、仮決算による計算結果がマイナスでも中間申告で還付を受けられるわけではありません。

法人税についても、制度上、仮決算に基づく中間申告があります。

したがって、

「去年は利益が出たが、今年は大幅に業績が悪化している」

という場合には、前年実績による中間納付額をそのまま払う前に、税理士へ相談した方がよいケースがあります。

個別の適用可否は会社の状況によって異なります。


納税資金を残すために経営者がやるべき5つのこと

納税時期になってから、

「税金を払ったら運転資金がなくなる」

と気付くのでは遅い場合があります。

重要なのは、毎月管理することです。

1.月次決算を早くする

まず必要なのは、

今いくら利益が出ているのか

を把握することです。

決算終了後に初めて年間利益が分かる状態では、納税予測もできません。

月次試算表をできるだけ早く作り、

年間売上予測年間利益予測法人税等の予測消費税の予測

まで確認します。

2.毎月、納税予測額を更新する

例えば6月時点で、

今期利益予測 1,000万円法人税等予測 300万円消費税予測 400万円

だったとします。

9月になって利益予測が1,500万円まで増えたのであれば、当然、納税予測も見直す必要があります。

決算直前だけ計算するのではなく、

業績が変わるたびに納税予測も変える

ことが重要です。

なお、実際の法人税等の金額は法人の規模、所得、税額控除、地方税その他の条件によって変わります。上記金額は仕組みを説明するための例です。

3.納税用の銀行口座を分ける

実務上かなり効果がある方法が、

納税専用口座を作ること

です。

例えば毎月、税理士から、

「現時点の年間納税予測は600万円」

と報告を受けたとします。

決算まであと6か月なら、資金状況を見ながら毎月一定額を納税用口座へ移していきます。

納税用口座へ移したお金は、

会社にはあるが、使わないお金

として扱います。

同じ普通預金にすべてのお金を置いておくと、残高が大きく見えるため使ってしまいやすくなります。

口座を分けるだけでも経営判断はかなり変わります。

4.資金繰り表に納税月を入れる

資金繰り表には、通常の売上入金や仕入支払いだけでなく、

法人税等消費税源泉所得税固定資産税社会保険料

なども入れます。

特に重要なのは、

決算後2~3か月まで資金繰りを見ること

です。

例えば3月決算だからといって、3月31日で資金繰り予測を終わらせてはいけません。

少なくとも5月、できれば半年から1年先まで確認します。

5.決算前に「納税後の現預金」を確認する

経営者にぜひ確認してほしい数字があります。

それが、

納税後にいくら現金が残るか

です。

例えば、

決算時現預金 2,000万円法人税等予測 300万円消費税予測 400万円2か月分の借入返済 200万円

なら、

単純計算では残り1,100万円です。

さらに給与、仕入、社会保険などの運転資金が必要になります。

2,000万円という預金残高だけを見るのと、

「実質的に自由度の高い現金はいくらなのか」

まで考えるのでは、経営判断が大きく変わります。


「税金を払うとお金がなくなる」会社はどこを見直すべきか

税金を払うたびに資金繰りが苦しくなる会社では、

単に税金が高いことだけが問題とは限りません。

確認すべきなのは、

利益に対して借入返済が大きすぎないか売掛金が増えていないか在庫を持ちすぎていないか設備投資を現金で行いすぎていないか納税資金を別に確保しているか

です。

例えば税引後に年間800万円の利益を残していても、

年間借入元本返済 600万円設備投資 500万円

なら、それだけでも現金は増えにくくなります。

そこへ消費税などの支払いが重なると、

「黒字なのに現金がない」

という状態になります。

したがって納税資金の問題だけを見るのではなく、

会社全体のキャッシュフローを見ること

が重要です。


節税より先に「納税できる会社」を作る

決算前になると、

「何か節税できませんか」

という話になりがちです。

もちろん、適切な税務上の制度を活用することは重要です。

しかし、税金を減らすために不要なものを購入し、100万円の現金を使って数十万円の税金を減らしても、会社の現金は減ります。

会社経営で重要なのは、

税金をゼロにすることではありません。

利益を出し、

税金を払い、

借入金を返し、

必要な投資を行い、

それでも現金が残る会社

を作ることです。

私は、そのためには税務申告だけではなく、

月次決算+納税予測+資金繰り予測

を一緒に行うことが重要だと考えています。


まとめ|税金は「突然発生する支払い」にしない

黒字なのに現金がない原因の一つが、納税資金を事前に確保していないことです。

特に消費税は利益だけを見ても納税額が分からないため、注意が必要です。

大切なのは、

毎月試算表を作る年間利益を予測する法人税・消費税を予測する納税資金を別に確保する資金繰り表に納税月を入れる納税後の現預金残高を確認する

という流れを作ることです。

決算が終わって税額が確定してから、

「こんなに税金があるとは思わなかった」

となる状態は避けたいところです。

納税は突然発生する支出ではありません。

予測できる支出です。

会社の数字を毎月確認し、納税後にも十分な現金が残る状態を作っていくことが、安定した経営につながります。


6. 納税後にいくら現金が残るか、把握できていますか?

決算書が黒字でも、

法人税はいくらになるのか消費税はいくらになるのか中間納付はいつあるのか借入返済後にいくら残るのか半年後の預金はいくらになるのか

まで確認しなければ、本当の資金繰りは分かりません。

いちご会計事務所では、税務申告だけではなく、

月次業績管理納税予測資金繰り予測予算・実績管理借入金返済計画経営会議の支援

などを通じて、経営者が会社の数字を将来の経営判断に使える体制づくりを支援しています。

「決算のたびに納税資金で慌てている」

「利益は出ているのに預金が増えない」

「税金を払った後にいくら残るのか分からない」

という場合には、まず今後6~12か月の資金繰りと納税予測を整理するところから始めてみてください。


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