借入金の返済が苦しい会社へ-資金繰りを立て直す5つの視点
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会社を経営していると、不思議なことがあります。
決算書では利益が出ている。 税金も払っている。 ところが、通帳を見るとお金がない。
「こんなに黒字なのに、なぜお金が残らないんでしょうか?」
顧問先の社長さんから、このようなご相談を受けることがあります。
原因はいろいろありますが、その一つが借入金の返済です。
私は公認会計士・税理士として長く決算書を見てきましたが、資金繰りが苦しい会社を見ると、「借り過ぎた」というよりも、借り方と返し方の設計が会社の実態に合っていないケースが結構あります。
借金そのものが悪いのではありません。 会社経営で怖いのは、借金があることではなく、現金がなくなることなのです。
利益が出ているのに、なぜ現金が減るのか
ここは会計の基本なのですが、非常に重要なところです。
銀行への借入金の元本返済は経費ではありません。
例えば、ある会社が年間1,000万円の税引前利益を出していたとします。 一方で、毎月100万円、年間1,200万円の借入元本を返している。
もちろん実際のキャッシュフローは税金、減価償却、設備投資、売掛金や在庫の増減なども考えなければなりませんが、単純化すれば、
「利益は出ているのに、返済の方が重くて現金が減っていく」
ということは普通に起こります。
これがP/Lだけを見て経営すると怖いところです。 利益は会社の成績ですが、会社を今日生かしているのは現金です。
最近のコラムでも、社長はP/LだけでなくB/Sとキャッシュフローを見る必要があると書きました。借入返済の問題は、まさにその典型例だと思います。
「税金が高いからお金がない」は本当か
こういう会社で、時々危ない判断があります。
「税金を払うとお金がなくなるから、何か節税しよう」
という話です。
もちろん適正な節税は必要です。
しかし、100万円の税金を減らすために300万円の不要なものを買ってしまえば、税金は減っても現金はもっと減ります。
資金繰りが苦しい原因が借入返済や在庫、売掛金にあるのに、税金だけを犯人にしてしまうと、かえって症状を悪化させることがあります。
病気と同じで、原因を間違えると薬も間違えるのです。
では、借入返済が重くなった会社はどうすればよいのでしょうか。 大きく5つのことを考えます。
借入返済が重くなった会社が考えるべき5つのこと
① まず「いつお金がなくなるか」を数字にする
最初にやることは、銀行との交渉でも新しい借入でもありません。 資金繰り表を作ることです。
少なくとも3か月から6か月先まで、 売掛金の入金、仕入・外注費、人件費、家賃、税金、社会保険料、借入返済、設備代金などを並べます。
資金繰りがかなり厳しい会社なら、月単位では足りません。 「何月何日にいくら入って、何日にいくら出るのか」という日繰り表まで作ります。
会社の現金が尽きる日が分からないまま経営するのは、燃料計の壊れた飛行機を飛ばしているようなものです。
忙しいから作れない、という社長もいらっしゃいます。 しかし、会社があと30日で資金ショートするのであれば、目の前の仕事より、こちらの方が優先順位は高い。 ここは経営者として冷静に考えなければなりません。
② 借入金の「期間」を見直す
例えば3,000万円の設備を導入し、10年間使う予定なのに、その資金を3年間で返していたとします。 当然、資金繰りはきつくなります。
設備から生まれる利益は10年間かけて回収するのに、銀行には3年間で返しているからです。 これは事業が悪いというより、資金調達と資金回収の時間軸が合っていないのです。
現在の日本政策金融公庫の融資制度を見ても、制度によっては設備資金20年以内、運転資金10年以内といった返済期間が設けられています。 つまり金融の世界でも、「何に使うお金なのか」によって期間を考えることが基本なのです。
借入をするとき、社長さんはどうしても金利に目が行きます。 しかし中小企業の資金繰りでは、金利だけでなく毎月いくら返すのかの方が重要な場合が多いと私は思っています。
0.何%の金利差を気にする一方で、返済期間を短くして毎月数十万円余計に資金を出してしまう。 これでは、木を見て森を見ずになりかねません。
③ 借入が細かく増えているなら整理する
「ちょっと足りないから500万円」 「また足りなくなったので300万円」
これを繰り返していると、借入が何本にも分かれていきます。 一本一本の返済額はそれほど大きく見えないのですが、合計すると毎月かなりの金額になります。
そこで、会社の財務内容や金融機関との関係によっては、借換えなどによって返済条件を整理できないか検討します。
大事なのは、単に「一本にすればいい」という話ではありません。 借入残高、返済期間、保証協会の利用状況、担保、金融機関との取引状況などによって判断は変わります。
ですから、まず借入一覧表を作り、
どこから、いくら借りて、何年で、毎月いくら返しているのか
を一覧にして見える化してみてください。 意外と社長自身が全体像を把握できていないことがあります。
④ 苦しくなる「前」に銀行へ相談する
銀行対策で一番大事なのは、早く相談することだと思います。
「来週お金がなくなります。何とかしてください」
と言われても、金融機関も困ります。
一方、
「半年後、このままだと資金が薄くなります。原因はここです。そのため、この改善策を進めています」
と資料を持って相談する会社では、話の内容が全く違います。
金融庁も現在、金融機関に対して、中小企業への資金繰り支援や貸付条件の変更、借換えなどについて、事業者の実情を踏まえて丁寧に対応するよう求めています。金融庁は毎月、金融機関による貸付条件変更等の実績を公表しており(直近では2026年7月更新分が確認できます)、この取り組みは継続しています。
ですから、条件変更、いわゆるリスケという方法もあります。
ただし、これを最初から使うべき手段だとは考えていません。 新規融資への影響も考えなければなりませんし、何より返済を止めただけで本業が赤字なら、問題を先送りしただけになります。
やるのであれば、資金繰り計画と経営改善計画をセットにして考える必要があります。
⑤ 最後は「本業の稼ぐ力」に戻る
借換えも、返済期間の延長も、金融機関への相談も大切です。
しかし、ここで忘れてはいけないことがあります。 借入条件を変えても、会社そのものの収益力は上がらないということです。
毎月100万円の返済を50万円にできれば、確かに資金繰りは楽になります。 しかし、本業で毎月50万円赤字を出していたら、いずれ同じ問題が起きます。
だから、資金繰り対策と同時に、
「粗利は十分か」 「赤字の商品や顧客はないか」 「売掛金の回収が遅くなっていないか」 「在庫が増え続けていないか」 「不要な固定費はないか」
という経営そのものを見直します。
ドラッカーは、企業の目的を顧客の創造に置きました。 財務は、その事業を継続して顧客に価値を届けるための土台です。
銀行返済のためだけに経営しているわけではありません。 社員の生活を守り、お客様との取引を続け、次の投資を行う。そのために会社には現金が必要なのです。
借金は「時間を買う道具」である
私は、借入金というものを一概に悪いものだとは考えていません。
中小企業にとって借入は、設備を買ったり、人を採用したり、売上代金を回収するまでの期間をつないだりするために、時間を買う金融手段でもあります。
問題は、その時間を何のために買ったのか分からなくなってしまうことです。
10年使う設備なら、それに見合った返済期間を考える。 売掛金や在庫によって恒常的に必要になる資金なら、その性質に合った調達方法を考える。 そして、会社の将来キャッシュフローから返せる範囲で借りる。
当たり前の話なのですが、この当たり前をきちんと設計している会社は、案外少ないものです。
資金繰りに苦しくなってから銀行へ走るのではなく、余裕がある時から資金繰り表を作り、借入金の一覧を眺め、自社に合った資金調達になっているかを考えておく。
私は、これこそが財務経営ではないかと思っています。
会社が倒産するのは、赤字になった日ではありません。 現金が尽きた日です。
だから社長は、利益を作ることと同時に、現金を守らなければならないのです。
一度、御社の借入金について、
「このお金は何のために借りたのか。そして、その目的に返済期間は合っているのか」
というところから、見直してみてはいかがでしょうか。





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