top of page
  • Instagram
  • フェイスブック
  • さえずり
  • Youtube

中小企業のターゲット顧客の決め方|売上より粗利益で「狙う顧客」を選ぶ方法

11 分前
読了時間: 7分

「営業は忙しいのに、利益が増えない」。そんなときは、営業量を増やす前に、誰に時間を使っているかを確かめてください。


ターゲット顧客は、自社の強みで相手の課題を解決でき、継続して粗利益を生み出せる顧客層から考えます。売上だけでなく、粗利益額・対応時間・継続性・回収条件を比較することが出発点です。この記事では、比較表を作り、次の営業行動へつなげる手順を解説します。


ターゲット顧客を決めるとは、経営資源の集中先を決めること


ターゲットは「買ってくれそうな人」の一覧ではありません。限られた人員、時間、広告費を優先して使う相手です。

マーケティングの基礎は、相手の困り事と、自社が提供できる価値を結び付けることです。

「ニーズなきところに営業なし」といいますが、まずは相手が何を悩み、解決したいを考えなければ知らなければなりません。ニーズとウオンツをしっかり把握してからのターゲティングです。


そして私は、ニーズとウオンツの現れる「相手の困り事」と、自社が提供できる価値がうまく結び付き、他社との競争力がある場合、それは粗利率・粗利額が高いものとして、数字に表れると考えています。

この意味で、ターゲティングにおいても粗利に注目するという経営は非常にわかりやすく、効果が出やすいものとなります。


また私はターゲティングをするうえで、中小企業の戦略では「どこに集中するか」が重要だと考えています。売上の大きさに引っ張られず、価値を提供し続けられる相手を数字と現場の両方で確かめます。

ただでさえ乏しい中小企業の限りある経営資源を集中して、できるだけ効果的に使う必要があるからです。


売上の順位と、粗利益の順位は違う


経営において重要なのは売上高がどれだけあるかではなく、どれだけ利益を効率よく出しているかです。

その意味では、利益の源泉は売上高ではなく、粗利額です。


そのため、中小企業の限りある経営資源を集中投資するときは、売上高ではなくどのくらい粗利が取れているかで判断して、集中投下すべきなのです。


粗利益は、売上高から売上原価を引いた金額です。次は、商品販売を行う会社の年間取引を単純化した仮の計算例です。金額は税抜きとし、仕入以外の売上原価はないものとします。


年間の比較項目

A社

B社

売上高

1,000万円

700万円

売上原価

850万円

455万円

粗利益額

150万円

245万円

粗利益率

15%

35%

営業・対応時間

300時間

200時間

対応1時間当たり粗利益

5,000円

12,250円


A社は売上が300万円多い一方、粗利益はB社の方が95万円多くなります。さらに、対応時間が営業活動の制約になっているなら、B社に近い顧客層を重点開拓する理由があります。


そしてよくあることですが、ターゲティングをする場合に粗利益率だけで選ぶのも早計です。

高い率でも取引量が少なければ、固定費を賄う粗利益額は不足します。粗利益額と率を併せて見て、その利益を維持するための負担を確認しましょう。


狙う顧客を選ぶ5つの手順


では次に、具体的にどのようにして選定していくかを考え見ましょう。


1.直近12か月の取引を同じ基準で並べる


まず、売上・売上原価・粗利益を顧客別に集計します。件数が多ければ、主な顧客と、業種・取引形態別のグループから始めて構いません。季節変動がある会社は、単月だけで結論を出さないことが大切です。


売上原価の区分は、全社の会計と整合させます。製造業の製造労務費や、サービス業で原価に含めている人件費を省くと、粗利益を過大に見せてしまいます。顧客にひも付かない原価は、配賦方法を決め、未配賦分も残して全社合計と照合してください。


2.見えにくい対応負担を足して見る


商談、見積もり、移動、問い合わせ、手直しなど、原価だけでは分からない負担を確認します。最初は週単位の記録や、標準・多い・非常に多いという区分でも十分です。


特に、急な仕様変更や小口配送が多い場合、売上が伸びても社内が疲弊することがあります。対応時間の定義をそろえ、必要なら顧客固有の配送費なども別欄に記録します。


費用を差し引くときは二重計上に注意してください。売上原価に含めた費用を再び引かず、営業利益まで計算したように扱わないことが重要です。


3.継続性と、現金になるまでの条件を確かめる


過去のリピート、契約更新、失注理由、支払条件を確認します。継続発注はあっても、値下げ要求が強い顧客と、品質を評価して適正価格で発注する顧客では、将来の見通しが違います。


粗利益が出ていても、入金が遅く、仕入代金の支払いが先なら、運転資金が必要です。滞留債権や特定顧客への依存も確認してください。将来性は期待だけで評価せず、更新予定や具体的な商談など、根拠を書き添えます。


4.「増やしたい取引」の共通点を言葉にする


数字の良い顧客を並べたら、なぜ選ばれているのかを調べます。業種や地域だけでなく、困り事、購買のきっかけ、重視する品質、決裁者、発注頻度に共通点がないかを探します。


「誰の、どの課題を、自社の何で解決するか」を一文にしてください。既存顧客への聞き取りと失注理由の確認を組み合わせると、思い込みを減らせます。


粗利益の高い顧客が数社しかいない場合は、同じ条件の見込み客に接触できるかも確認します。利益が出ることと、新たに獲得できることは別の問題です。


5.重点顧客を決め、小さく試す


比較表に「維持・深耕」「新規開拓」「条件改善」の方針を付けます。最初から全社の営業方針を変えず、重点顧客層を一つ選び、提案内容と営業先リストを整えて試す方法が現実的です。


例えば、翌月の提案枠の一部を重点層へ振り向けます。期間、担当者、提案件数、期待する粗利益を決め、商談化率・成約率・受注後の対応時間を記録してください。数値目標は、自社の実績と供給能力から設定します。


低採算という理由だけで取引をやめない


比較表は、取引停止の順位表ではありません。低採算の原因が価格、業務範囲、納品回数にあるなら、条件を整えることで改善できる場合があります。


例えば、特急対応の料金を分ける、注文をまとめる、仕様変更の受付条件を明確にするといった方法です。相手にとっての利便性や品質を守りながら、無理なく続けられる条件を話し合います。


紹介への貢献や将来の商品開発など、数字だけに表れない価値もあります。ただし「将来のため」という理由を無期限に使わず、何を、いつまでに確認するかを決めます。


また、一社へ集中しすぎると、契約終了や支払い遅延の影響が大きくなります。重点化と依存は分け、主要顧客の売上・粗利益の構成比も点検してください。


月次会議で「数字→原因→次の一手」をつなぐ


重点顧客を決めた後は、月次で粗利益額、提案・成約の状況、対応時間、回収状況を確認します。数字を増やしすぎず、改善したい行動に関係する指標から始めます。


計画より粗利益が少なければ、件数不足なのか、値引きなのか、原価上昇なのかを分けます。原因が違えば、次の対応も変わります。提案先を増やすのか、見積条件を変えるのか、担当者と期限まで決めて翌月に確認します。


私は、数字は誰かを責めるためではなく、次の一手を決めるために使うものだと考えています。営業担当者の努力と、会社が選んだ顧客層の問題を混同しないことも大切です。


今日、顧客別の比較表を一枚作ってみる


まずは主な顧客10社について、直近12か月の売上、売上原価、粗利益額・率、対応時間、継続見込み、支払条件を一枚に並べてみてください。その中から「増やしたい取引の条件」と「改善を相談したい条件」を一つずつ選びます。


顧客別採算の集計そのものを確認したい方は、関連記事「売上の大きい顧客ほど儲かるとは限らない|顧客別粗利の見方」もご覧ください。


社内だけでは集計基準や優先順位を決めにくいときは、いちご会計事務所の経営強化型税務顧問をご確認ください。月次財務分析や経営戦略の検討、継続的なモニタリングを通じて、数字を経営行動につなげる支援を行っています。


誰に売るかを決めることは、どのお客様へ、より良い仕事を届けるかを決めることでもあります。売上順位を眺めるところから一歩進み、自社の力を生かせる相手を見つけていきましょう。


 
 
 

コメント


bottom of page