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労基法改正が止まっても、人が辞める会社は止まらない

  • 10 時間前
  • 読了時間: 5分



最近、労働基準法の大きな見直しが話題になっていました。

「14日以上の連続勤務の禁止」や「勤務間インターバル」、「つながらない権利」の話を耳にして、「いよいよ来るのか」と思われた経営者の方も多かったのではないでしょうか。

ところが、世の中の空気としては、少しトーンダウンしました。そのため、「結局、あの話はなくなったのか」と受け止めている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、私はそうは見ていません。

2025年1月に厚生労働省の研究会報告書が公表され、その中では勤務間インターバルについて、義務化も視野に法規制の強化を検討する必要があるとされ、11時間確保を原則とする考え方や、勤務時間外の連絡の在り方、いわゆる「つながらない権利」についてもガイドライン等を含めた検討が必要と整理されています。さらに、2025年は労働政策審議会の労働条件分科会でこの論点が継続的に議題となっており、議論自体が消えたわけではありません。


私は、こういう話を聞くといつも思うのです。法律が先か、経営の常識が先か、ということです。


経営者の中には、「人が足りないのだから仕方ない」「忙しい時期だけだから問題ない」と考える方もおられます。気持ちはわかります。中小企業は、きれいごとだけでは回りません。納期もあります。資金繰りもあります。取引先との関係もあります。


しかし、それでもなお申し上げたいのは、長時間労働に会社を支えさせる経営は、もう限界に来ているということです。

人手不足は、単なる採用難ではありません。経営の土台を崩す問題になっています。帝国データバンクによると、2025年の人手不足倒産は427件で過去最多、前年比24.9%増でした。建設業や物流業で特に増え、小規模企業での発生が目立っています。


ここで経営者が誤解しやすいのは、「社員が弱くなった」と考えてしまうことです。

私は、そうではないと思っています。本質は、いまの時代に合わない働かせ方を続けている会社が、選ばれなくなってきたということです。


たとえば、こんな会社はどうでしょうか。

繁忙期になると2週間近く休みなし。夜遅く帰って、翌朝また早く出社。休日でも社長や上司からLINEが来る。電話に出なければ、「なぜ返信しない」と言われる。有給はあるが、実質的には取りづらい。

こういう会社に、優秀な人材が来るでしょうか。来たとして、長く残るでしょうか。


私は難しいと思います。


いまは求人票より先に、会社の評判が見られる時代です。給与水準だけでなく、「この会社で安心して働けるか」が問われています。つまり労務管理は、法務の問題である以前に、採用と定着の問題であり、もっと言えば経営戦略の問題なのです。

中小企業の持続的な成長の条件は、顧客だけでなく、社内にいる人からも見放されないことです。


では、社長は何から手をつければよいのでしょうか。

私は、最低限この3つだと思います。


第一に、14日を超える連続勤務を出さない前提で仕事を組み直すことです。法律上の最終結論がどうなるかを待つのではなく、まずは自社の繁忙期の仕事の山を見える化する。その上で、「誰かが無理をして埋める」前提をやめる。応援体制、前倒し処理、外注、設備投資、業務の簡素化。やるべきことは、根性論の前にたくさんあります。

第二に、終業から始業までの休息時間を確保することです。11時間を厳密に制度化するかどうかは今後の議論ですが、少なくとも「夜遅くまで働かせて、翌朝また通常どおり来てもらう」ことを当たり前にしてはいけません。睡眠不足の社員に、良い判断も、良い接客も、良い品質も期待できないからです。これは優しさの問題ではなく、生産性の問題です。

第三に、勤務時間外の連絡ルールを明確にすることです。緊急時以外は連絡しない。連絡しても、返信を義務にしない。休日の連絡は、翌営業日対応を原則にする。これだけでも社員の心理的負担は大きく変わります。フランスでは「つながらない権利」が法制化され、日本でも研究会報告書で社内ルールづくりやガイドライン整備の必要性が示されています。


私は昔から、日本人は「努力で乗り切る」ことが好きな民族だと思っています。しかし、経営においては、努力で埋めるのではなく、仕組みで解決しなければなりません。無理をする会社ほど、いつか必ず人が離れます。そして人が離れた後に残るのは、「もっと早く変えておけばよかった」という後悔だけです。

社長の仕事は、社員を限界まで使うことではありません。社員が安心して力を出せる土台を作ることです。

法改正が明日あるかどうかは、もちろん大事です。

しかし、それ以上に大事なのは、法改正がなくても、自社としてそこまでやるかどうかです。

伸びている会社ほど、実はこの点に敏感です。働きやすさを整え、仕組みを作り、利益が出れば人に還元する。そういう会社に、人は集まります。逆に、古いやり方にしがみつく会社は、静かに人が減り、静かに弱っていきます。

経営とは、未来に向けて種をまくことです。労務管理もまた、未来への投資です。

「まだ法律で決まっていないから」と先送りするのか。「どうせ来る流れだ」と見て今から整えるのか。数年後、その差はかなり大きくなっていると思います。

私は、社長の器は、忙しいときほど表れると思っています。苦しい時に人を守る会社だけが、結局は強い会社になるのではないでしょうか。

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