数字を眺めるだけでは、会社は強くならない
- 23 分前
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最近、私はあらためて思うのです。
中小企業の経営者が利益を増やしたいのであれば、結局いちばん大事な学びは「管理会計」ではないか、と。
世の中には、経営者向けの情報があふれています。
補助金、節税、SNS集客、採用、DX、生成AI――どれも大事です。私もそれぞれ必要な知識だと思います。
ただ、利益を増やすという一点に絞って申し上げるなら、まず身につけるべきは、自社の数字を“未来の意思決定”に使う力です。
いまの中小企業を取り巻く環境は、決して楽ではありません。価格転嫁は以前より進んできたとはいえ、なお十分とは言えず、中小企業庁も2025年版中小企業白書でその課題を整理しています。公正取引委員会も、労務費・原材料費・エネルギーコストの上昇を踏まえ、価格交渉の指針を示しています。さらに東京商工リサーチは、2025年も小・零細規模を中心に倒産が高水準で推移したと公表しています。つまり、いまは「頑張って売る」だけでは利益が残りにくい時代なのです。
ここで大事になるのが、財務会計ではなく、管理会計です。
税理士から毎月試算表をもらっている会社は多いでしょう。
しかし、その数字を見て「今月は黒字だった」「思ったより利益が出ていない」で終わってしまう会社も、また多いのではないでしょうか。
私は、そこが分かれ目だと思っています。
過去の数字を眺めるだけでは、会社は強くなりません。
過去の数字を分解して、「では次にどこを改善するか」を考えるところまで行って、初めて数字が経営の武器になります。
たとえば、同じ月商3,000万円の会社でも、中身はまったく違います。
ある会社は、大口取引先の売上が大きく、一見すると順調です。
ところが、得意先別に粗利を見てみると、その取引先は値引きが大きく、手間も多く、実は利益が薄い。
一方で、売上規模は小さくても、手離れがよく、粗利率の高い商品や顧客がある。
この事実が見えるだけで、営業のかけ方も、値上げ交渉の優先順位も、社内の人の動かし方も変わります。
また、飲食店や美容業、建設業でも同じです。
「忙しいのに儲からない」という会社がありますが、これは珍しくありません。
店舗別、案件別、取引先別で見れば、儲かる仕事と儲からない仕事が混ざっているからです。
管理会計とは、その混ざったものを分けて見る技術です。
さらに損益分岐点を把握しているかどうかでも、経営判断は変わります。
月にいくら売れば赤字にならないのか。
人件費が上がったら、その分いくら値上げしなければならないのか。
設備投資をしても回収できるのは何か月後なのか。
このあたりを感覚でやるのと、数字で把握してやるのとでは、意思決定の質がまるで違います。
いま、公的にも価格転嫁の必要性が繰り返し言われていますが、交渉の現場では「なぜ、いくら上げる必要があるのか」を説明できなければ通りません。感覚的に「厳しいから上げてください」と言うのと、原価・労務費・固定費の増加を根拠に説明するのとでは、相手の受け止め方は全く違います。管理会計は、値上げの勇気を与えるだけでなく、その根拠を与えてくれるのです。
私は、公認会計士・税理士として多くの会社を見てきましたが、伸びていく会社の社長ほど、数字を「税金計算の材料」としてではなく、「経営判断の材料」として使っています。
逆に、苦しくなっていく会社ほど、数字を見るのを後回しにしてしまう傾向があります。
利益とは、単に残ったお金ではありません。
それは、お客様が価値を認めてくれた結果であり、同時に、自社の経営システムが機能しているかどうかを示す指標でもあります。
だからこそ、利益を増やしたいのであれば、「もっと売れ」では足りないのです。
どこで粗利が出ているのか。
どの仕事が固定費を回収しているのか。
どの商品・どの顧客・どの社員配置が、利益に結びついているのか。
そこまで見なければ、本当の意味で利益は増えません。
経営者は忙しいものです。
目の前の仕事に追われ、数字を見る時間も、考える時間も取りにくい。
それでも、私はあえて申し上げたいのです。
利益を増やしたいなら、管理会計を学ぶことです。
これは遠回りに見えて、実は一番の近道です。
補助金や節税は、一時的に会社を助けることがあります。
しかし、管理会計は会社そのものを強くします。
過去を整理し、現在を把握し、未来を決める。
そのための数字の使い方を覚えた会社は、やはり強いのです。
私は、経営者にとって本当に必要なのは、「数字に強くなること」ではなく、「数字を使って考えられるようになること」だと思っています。
その第一歩が、管理会計なのではないでしょうか。





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