2026年「年収の壁」はいくら?178万円・130万円・169万円の違いを税理士が解説
- 21 時間前
- 読了時間: 9分

「扶養の範囲で働きたいけれど、2026年はいくらまで働いていいのか分からない」
パート・アルバイトで働く方だけでなく、その方を雇う中小企業の経営者からも、こうした相談が増えています。
2026年は所得税の「年収の壁」が大きく変わります。ただし、税金の壁と社会保険の壁は別物です。
この記事では、2026年の「178万円・119万円・130万円・136万円・169万円・207万円」がそれぞれ何を意味するのかを整理します。
結論|2026年は「178万円」だけ見てはいけない
まず結論です。
給与収入だけの場合、2026年に確認したい主な金額は次のとおりです。
年収の目安 | 何に関係する? | ポイント |
119万円 | 住民税 | 所得割が原則かからない目安 |
130万円未満 | 社会保険 | 配偶者の社会保険の扶養を考える際の重要な基準 |
136万円以下 | 配偶者控除 | 給与だけなら配偶者控除の対象となる収入の目安 |
169万円以下 | 配偶者特別控除 | 一定の場合、38万円の控除を維持できる目安 |
178万円以下 | 本人の所得税 | 給与だけで他に所得がなければ原則所得税がかからない |
207万円以下 | 配偶者特別控除 | 配偶者特別控除を受けられる上限の目安 |
重要なのは、
「178万円まで所得税がかからない」=「178万円まで扶養のまま働ける」ではない
ということです。
税金と社会保険では、まったく別のルールで判定します。
2026年から所得税の「壁」は178万円へ
2026年度税制改正により、所得税の課税最低限は178万円まで引き上げられます。財務省は、基礎控除や給与所得控除を見直し、中低所得者について課税最低限を178万円まで引き上げるとしています。
給与収入だけで、ほかに所得がない方の場合、
給与収入178万円以下であれば、原則として所得税はかかりません。
国税庁も、給与所得控除の最低額74万円と基礎控除最高104万円を前提に、178万円以下であれば所得税等がかからないと案内しています。
2025年までの160万円から178万円へ
2025年分では、所得税がかからない給与収入の目安は160万円でした。
2026年分からは178万円となります。
つまり、
160万円 → 178万円
と18万円引き上げられます。
ただし、この改正は原則として2026年12月1日に施行され、2026年分の所得税から適用されます。
そのため、会社が行う毎月の源泉徴収については2026年11月までは従来どおりで、12月の年末調整などで精算する仕組みになっています。
経営者・給与担当者の方は、この点も押さえておきましょう。
住民税は「119万円」がひとつの目安
2026年分の給与収入について、住民税の所得割がかからない目安も変わります。
給与収入だけの場合、
119万円以下
がひとつの目安です。
国税庁によると、総所得金額等が45万円以下であれば住民税の所得割は非課税となり、給与だけであれば給与収入119万円以下が目安となります。住民税については2027年度分から反映されます。
119万円以下なら住民税が必ずゼロとは限らない
ここは注意が必要です。
119万円という基準は、主に住民税の所得割についての話です。
自治体によっては、119万円以下であっても「均等割」が課税される場合があります。国税庁も、市区町村によって取扱いが異なる可能性があると案内しています。
したがって、
「119万円以下なら住民税が絶対にかからない」
と考えないほうがよいでしょう。
お住まいの自治体で確認してください。
一番注意したいのは社会保険の「130万円」
ここまで説明した所得税や住民税は、壁を少し超えたからといって、急に大きく手取りが減る制度ではありません。
一方、手取りへの影響が大きくなりやすいのが社会保険です。
配偶者の健康保険の扶養に入っている方については、原則として
年間収入130万円未満
が重要な基準となります。
60歳以上または一定の障害者の場合は180万円未満です。
130万円を超えると手取りが減ることがある
社会保険の扶養から外れると、自分で健康保険や年金の保険料を負担することになります。
そのため、
「年収が少し増えたのに、手取りが思ったほど増えない」
あるいはケースによっては、
「働く時間を増やしたのに、当面の手取りが減った」
ということが起こります。
これが、税金の壁と社会保険の壁の大きな違いです。
2026年4月から130万円の判定方法も変わっています
2026年4月1日から、社会保険の被扶養者認定について新しい取扱いが始まりました。
労働条件通知書などに記載された賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であり、他の収入が見込まれないなど一定の条件を満たす場合、その労働契約の内容をもとに被扶養者として判定する取扱いになっています。
つまり、
「今年たまたま残業が多かったからどうなるか」だけで判断するのではなく、労働契約そのものも重要になる
ということです。
ただし、同居・別居や扶養する側の収入など、130万円以外にも要件があります。
個別のケースでは加入している健康保険組合等への確認が必要です。
「130万円未満なら社会保険に入らなくていい」とも限らない
もう一つ重要な注意点があります。
勤務先で本人が社会保険の加入対象になれば、130万円未満であっても配偶者の扶養には入りません。
2026年8月現在、短時間労働者については、一定規模以上の企業で週20時間以上勤務するなど一定の条件を満たした場合、健康保険・厚生年金への加入対象となります。
これまで「106万円の壁」と呼ばれてきた月額8.8万円以上という賃金要件については、厚生労働省が2026年10月に撤廃予定と案内しています。
したがって今後は、
「年収いくらか」だけではなく「週何時間働くか」「どの会社で働くか」
を見ることが、さらに重要になります。
配偶者控除の壁は136万円
次に、世帯全体の税金を考えてみましょう。
配偶者の給与収入が
136万円以下
であれば、一定の要件を満たすことで配偶者控除の対象となります。
2026年度税制改正では、同一生計配偶者の所得要件が62万円以下に引き上げられました。
給与収入だけの場合、給与所得控除74万円を加え、
62万円+74万円=136万円
となります。
136万円を超えても、すぐに控除がなくなるわけではない
ここは勘違いされやすいところです。
「136万円を1円でも超えたら、配偶者に関する控除が全部なくなる」
わけではありません。
136万円を超えると「配偶者控除」から「配偶者特別控除」へ移ります。
そして一定の場合、配偶者の給与収入が
169万円以下
であれば、38万円の配偶者特別控除を受けることができます。
国税庁も、パート収入169万円以下の場合、一定の要件を満たせば38万円の配偶者(特別)控除を受けられるとしています。
169万円を超えると控除額が段階的に減る
給与収入が169万円を超えると、配偶者特別控除は徐々に減っていきます。
そして、
207万円を超えると配偶者特別控除の対象外
となります。
国税庁の2026年分資料では、給与収入のみの場合、配偶者特別控除の対象となる配偶者の収入範囲を136万円超207万円以下としています。
ただし、実際の控除額は、扶養する側の合計所得金額によっても変わります。
特に、扶養する側の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、配偶者控除・配偶者特別控除は受けられません。
5つの壁を順番に整理するとこうなる
給与収入だけの場合を簡単に整理してみます。
年収119万円
住民税の所得割が原則かからない目安。
ただし、自治体によって均等割が課税される場合があります。
年収130万円
社会保険の扶養を考えるうえで重要な基準。
税金よりも手取りへの影響が大きくなる可能性があります。
年収136万円
配偶者控除から配偶者特別控除へ切り替わる目安。
年収169万円
一定の場合、38万円の配偶者特別控除を維持できる上限の目安。
年収178万円
本人に所得税がかからない給与収入の目安。
年収207万円
配偶者特別控除を受けられる給与収入の上限の目安。
こうして並べてみると分かりますが、
「年収の壁」は一つではありません。
ケース|年収125万円と150万円では何が違う?
例えば、配偶者の扶養に入っているパート従業員について考えてみましょう。
ケース1 給与収入125万円
所得税は原則かかりません。
配偶者控除についても、給与だけであれば136万円以下なので、その他の要件を満たせば対象になります。
社会保険については130万円未満ですが、勤務先で本人が社会保険の加入対象になる場合は別です。
ケース2 給与収入150万円
所得税は原則かかりません。
ただし、136万円を超えているため「配偶者控除」ではなく「配偶者特別控除」の対象になります。
さらに、原則的な130万円の基準を超えるため、配偶者の社会保険の扶養から外れる可能性があります。
ここがポイントです。
150万円は178万円以下なので所得税だけ見れば問題ありませんが、社会保険まで含めると話が大きく変わります。
だからこそ「178万円になったから、今までより自由に働ける」と単純には考えないほうがよいのです。
会社独自の「配偶者手当」も確認する
税金と社会保険だけ確認して終わりではありません。
会社によっては、
配偶者手当
家族手当
扶養手当
などを支給しています。
その支給要件として、
「配偶者の年収130万円以下」
など会社独自の基準を設けていることがあります。
税制改正によって所得税の壁が178万円になっても、会社の就業規則や給与規程が自動的に変わるわけではありません。
ご自身または配偶者の勤務先の規程も確認してください。
中小企業経営者も「年収の壁」を理解しておくべき理由
年収の壁は従業員個人だけの問題ではありません。
中小企業にとっても、
「年末になるとパートさんが勤務時間を減らしてしまう」
という問題につながります。
特に人手不足の会社では大きな問題です。
経営者としては、
「何万円まで働けるか」だけを従業員に説明するのではなく、税金・社会保険・配偶者控除を分けて説明すること
が大切です。
2026年は制度変更が多いため、
「130万円を超えなければ全部大丈夫」
「178万円まで扶養だから大丈夫」
といった説明は避けたほうがよいでしょう。
まとめ|2026年の年収の壁は「税金」と「社会保険」を分けて考える
2026年の主な年収の壁を整理すると、
所得税は178万円
住民税の所得割は119万円が一つの目安
社会保険の扶養は原則130万円未満
配偶者控除は給与収入136万円以下が目安
配偶者特別控除の満額の目安は169万円
配偶者特別控除は207万円以下まで段階的に残る
となります。
ただし、最も重要なのは、
「壁の金額だけを見て働き方を決めないこと」
です。
本人の税金だけでなく、
社会保険料、配偶者の税金、勤務先の家族手当、今後受け取る年金などによって、世帯全体の損得は変わります。
「いくらまでなら働いていいか」ではなく、
世帯全体の手取りを見ながら、どの程度働くのがよいか
で考えることをおすすめします。
従業員の「年収の壁」、会社として一度整理してみませんか?
2026年は所得税の178万円への引上げだけでなく、社会保険制度についても変更が続いています。
特にパート・アルバイトを多く雇用している会社では、
年末になると勤務時間を減らす従業員がいる
どこまで働いてもらえばよいか分からない
年末調整への影響が分からない
従業員に制度をどう説明すればよいか分からない
ということもあると思います。
いちご会計事務所では、税務申告だけではなく、会社の給与・税務・経営への影響まで含めて数字を整理しています。
「自社の場合はどう考えればよいのか」と気になる場合には、一度ご相談ください。





コメント