「指摘されない=大丈夫」の落とし穴。銀行の沈黙に気づく経営
- 2 時間前
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日々、多くの中小企業の社長とお話ししていると、資金繰りや銀行との付き合い方で悩んでいる方は本当に多いです。今日は、少し耳が痛いかもしれませんが、経営にとってとても大事なテーマ――「銀行の沈黙」について、私なりの見立てを書きます。
「指摘されない=大丈夫」という落とし穴
業績が苦しい局面になると、どうしても決算書の数字を「工夫」したくなる気持ちは分かります。たとえば在庫を多く見せたり、売上を前倒ししたり。赤字を黒字っぽく見せるような“整え方”ですね。
そして、こう思ってしまう。
銀行に何も言われなかった
融資が続いている
だからバレていない(自分はうまくやれている)
実は、ここが一番危ない。銀行は、こちらが思う以上に決算書を「違和感」で見ています。担当者が若くても、裏側には上司や審査の目がある。社長が思っているほど「素人」ではありません。
なぜ銀行は黙るのか。理由はシンプルです
銀行が「社長、この数字おかしいですよ」と言ってくれたら、社長側も目が覚める。でも現実には、言わないことが多い。
私は理由はシンプルだと思っています。波風を立てるメリットがないからです。
直球で「粉飾ですよね?」と言えば、社長が感情的になることもあります。クレームにもなり得る。そうなると担当者は避けたい。だから、表面上は穏やかにしつつ、内側では淡々と動きます。
保証協会付きの範囲でなら貸す
担保の範囲でなら様子を見る
追加融資は“条件付き”に寄せる
ここで誤解しやすいのは、「認めてくれている」わけではないということです。あくまで銀行側のリスク管理です。
ちなみに信用保証協会の制度は、返済不能時に協会が金融機関へ弁済する仕組み(代位弁済)があります。また「責任共有制度」により、個別貸付の原則80%保証(部分保証方式)など、金融機関側も一定の責任を負う設計になっています。つまり、銀行は「守りが効く枠」の中で、静かに付き合い方を調整できるわけです。
「静かなる撤退」のサインは、だいたい行動に出ます
ある日突然、融資が止まる…というより、銀行は先に距離を取り始めます。
たとえば、
以前はよく来ていた担当者が来なくなる
こちらから連絡しても返事が遅い
やたら資料を求められる(中身の確認が増える)
言い回しが遠回しになる(“真の姿を…”系)
こういう変化は、社長が思うよりも重要なシグナルです。銀行は「怒らない」ことが多い。
だからこそ、社長は沈黙を安心材料にしてはいけないんですね。
本当に怖いのは「リスケ」の瞬間に起きること
資金が回らなくなって「返済を待ってください(リスケ)」となった瞬間、銀行の顔が変わる――これは現場でよく見ます。
これまでの営業担当ではなく、審査・管理寄りの担当が出てくる。そしてそこで求められるのは、きれいな説明ではなく、実態の開示です。粉飾が積み上がっていると、ここからが地獄になりやすい。
在庫の根拠資料を求められる
数字の辻褄が合わず、説明が長引く
「今まで嘘だったのに、今後の計画は信用できるのか」と疑われる
資料作りと銀行対応で社長の時間が溶ける
本来、社長の時間は「現場で稼ぐ」ことに使うべきなのに、交渉に吸われる。これは再建の体力を削ります。
足立の結論:お金があるうちに「真実」と向き合う
ここで私がいつも思い出すのは、弊所の組織づくりの話です。「言わなくてもわかっているだろう」と思っているだけでは、何も伝わらない。だから私は、1on1など“話す仕組み”に変えました。
銀行との関係も似ています。社長が“本当の数字”を出さずに、相手が察してくれるだろう、という形にすると、相手(銀行)は沈黙します。沈黙して、静かに自分の守りを固めるだけです。
そして、粉飾の一番の罪は、道徳の話だけではありません。改善のタイミングを奪うこ(儲からない商品・儲からない客・無駄なコスト)が温存されます。だから私は、社長にはこういう順番をおすすめしています。
まず「真実の数字」を出す
次に「赤字の原因」を特定する
最後に「やめる/変える/値上げする」を決める
経営で一番怖いのは、「どうにかなる」と先送りすることだ――私は常々そう思っています。銀行の沈黙は、その“先送り”を加速させるので厄介なんです。
最後に:銀行はこれから「事業の中身」をより見に来ます
最近は、担保や保証だけでなく、事業性に着目した融資実務を支える制度整備の動きも進んでいます。金融庁も「事業性融資の推進等に関する法律」等に関すつまり今後は、なおさら「数字の見せ方」より、実態と改善の説明力が問われます。
銀行が黙っているときほど、社長がやるべきことはシンプルです。沈黙を“安心”と誤解しない。お金があるうちに、真実の数字で手を打つ。
もし「うちの銀行、最近静かだな」と感じたら、それは動くタイミングかもしれません。









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