残クレアルファードと経営視点
- tomohiro adachi
- 3 日前
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更新日:13 時間前

最近ネットで「残クレアルファード」が盛り上がっています。
言葉だけ聞くと、何やら若者の流行語みたいですが、要はアルファードを残価設定型クレジット(残クレ)で買うという話です。
月々の支払いを軽く見せられるので、高級車でも手が届きやすい。一方で、中古相場の下落が話題になり、「出口」でつまずく人が出やすい──これは、気を付けなければいけない新型金融商品だなと思います。 特に実質所得マイナスのインフレの状況では、資産を早めに手に入れたくなるので、今時に合わせた金融商品とも思います。
「月々○万円で乗れます」の魔力
残クレは、数年後の下取り予想価格(残価)を先に置き、車両価格から残価を差し引いた分だけを分割で払う仕組みです。契約満了時は、①返却(下取りして終了)、②乗り換え、③残価を払って買い取り、という選択になります。
ここで怖いのは、広告や営業トークがどうしても「月々いくら」で売り込んでくることです。
経営者の皆さまなら直感的に分かると思いますが、月々の支払いが軽い=安いではありません。
さらに、残価には「走行距離」「修復歴」など条件が付き、条件を外すと精算が発生する。つまり、“想定どおりに出口へ出られた場合だけ”成立する計画なのです。
つまり、「月々いくら」が安いでつられたまま、出口をしっかり考えておかなければ、残クレ終了時に思わず大きな出費になる可能性があるということです。
ちなみに残クレがネットで話題になった要因の一つに、アルファードの中古相場が大きく下がったという話があります。背景の一因として「残クレ満了で返却・乗り換えが集中し、中古市場に供給が増えたのでは」という見立てが語られていました。
この場合、残クレでの設定していた条件でも、想定金額で売る前提が壊れているかもしれません。
なかなか、出口で危険な金融商品といえます。
残価が崩れる=出口が詰まる(経営でも同じ)
この残クレの話を会社経営に置き換えると、よく投資に関して経営者の方から聞く話と似ています。
· 「この設備投資は、3年後に売却できるから大丈夫」
· 「この人件費増は、売上が伸びたら吸収できる」
· 「借入は、忙しくなれば回るから」
全部、“未来に獲得できる資金=残価が高くなる設定”を置いた計画です。
ところが、市況が変わる・競合が増える・単価が落ちる・人が採れない、で残価(=出口の値段)が崩れる。すると、計画は一気に苦しくなる。
残クレアルファードの騒ぎは、「出口(換金・回収・売却)を甘く見ると、足元のキャッシュが詰まる」という教科書みたいな話だと思うのです。
会計の話:P/Lより、B/Sとキャッシュフローを見る
ここからは会計士らしく、少し数字の話をします。
残クレは月々が軽く見えますが、経営の世界で重要なのは「支払額の見た目」ではなく、将来も含めた債務と資金繰りの形です。
車を事業で使うなら、会計的には(細部は契約形態にもよりますが)車両という資産と、未払(ローン)という負債が立ちます。月々の支払いが少ないからといって、B/Sが軽いわけではない。むしろ「最後に大きな支払い(または精算)」が控える分、資金繰りの地雷になり得ます。
ここで多い失敗が、P/L(損益)で安心することです。
減価償却は毎月の費用に落ちますが、借入返済の元本はP/Lに出ません。P/Lが黒字でも、返済が重なればキャッシュは減ります。だから、社長が見るべきは「利益」だけでなく、営業CF+投資CF+財務CFの合計としての現金増減です。
私は以前、事業に失敗する話として「どうにかなると考えていること」が危ない、と書かれていた例を読みましたが、残クレ的な発想はまさに「どうにかなる」になりやすい。出口が想定どおりである保証は、現実には薄いのです。
経営者向け:残クレ発想を“経営の武器”に変える3つの視点
残クレそのものが悪い、と言いたいわけではありません。金融商品は使い方です。問題は「見せ方に負けること」です。対策はシンプルで、会社にも応用できます。
l 総額で判断する(TCOの発想)月々ではなく、金利・保険・税金・整備・精算可能性まで含めて総額で比較する。
l 出口が崩れた時のシナリオを先に書く中古相場が下がった、傷が付いた、走行距離を超えた、のときの追加負担を“最初に”見積もる。経営も同じで、最悪ケースの資金繰り表を先に作る。
l キャッシュの安全余裕(バッファ)を確保する借入や分割の怖さは「払えないこと」ではなく、「払えるが、次の一手が打てなくなること」です。投資余力を残すのが経営者の仕事です。
残クレアルファードの話題は、少し下世話で面白い一方で、経営者にとってはかなり示唆が深いと思います。
「月々いくら」ではなく、「出口まで含めた総額」と「キャッシュフロー」。ここに意識が向くだけで、会社の意思決定の質は一段上がります。
結局、強い会社はいつも同じで、数字の“見せ方”ではなく、数字の“構造”を見ています。









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