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中小企業の経営戦略の立て方|社長が最初に決めるべき5つのこと

9月17日
読了時間: 10分
中小企業の経営戦略の立て方|社長が最初に決める5つのこと


「今年こそ、きちんと経営戦略を考えよう」

そう思ってSWOT分析や3C分析を始めたものの、資料を作ったところで止まってしまった。そんな経験はないでしょうか。

結論から言えば、中小企業の経営戦略で最初に必要なのは、難しいフレームワークではありません。

社長が「どこを目指すのか」「誰を顧客にするのか」「何で選ばれるのか」「何をやらないのか」「どの数字を見るのか」を決めることです。

中小企業には、人も時間もお金も限りがあります。だからこそ、全部をやろうとしないことが大切です。

経営戦略とは、限られた経営資源をどこへ集中するのかを決めることだと、私は考えています。


中小企業の経営戦略とは「集中する場所を決めること」

「経営戦略を作る」と聞くと、立派な経営計画書を作ることだと思われるかもしれません。

しかし、計画書が何十ページあっても、社員から「結局、うちの会社は何を一番大切にするのですか」と聞かれたときに、社長が答えられなければ戦略としては弱いでしょう。

大企業であれば、複数の商品、地域、販売方法へ同時に投資できます。しかし、中小企業が同じことをすれば、人もお金も社長の時間も分散します。

だから、「何をするか」だけでは足りません。

何に集中し、その代わりに何をやらないのか。ここまで決めて初めて、戦略になります。

中小企業庁の白書でも、自社の経営資源だけを見るのではなく、市場や顧客の状況を踏まえながら、自社がどこで差別化するかを考える重要性が示されています。

では、社長は具体的に何から決めればよいのでしょうか。

私は、次の5つを順番に考えると整理しやすいと思っています。


1.3年後、どんな会社になりたいかを決める

最初に決めるのは、会社の行き先です。

「売上を増やしたい」「会社をもっと大きくしたい」

これだけでは、まだ戦略とは言えません。

たとえば、「3年後に売上3億円、営業利益2,000万円を目指す」という目標でもいいでしょう。

一方で、「売上規模を追うより、社員一人当たりの粗利益を高めたい」「福岡市内の特定分野で一番に選ばれる会社になりたい」という方向もあります。

大切なのは、他社が目指している数字ではなく、自分たちはどのような会社をつくりたいのかを決めることです。

売上5億円になったとしても、資金繰りが苦しく、社長も社員も疲れ切っているのであれば、それは本当に目指したかった会社なのでしょうか。

売上だけでなく、利益、現金、人員、働き方まで含めて考える必要があります。

戦略は、「今できること」の延長だけで考えるのではありません。

まず3年後の姿を決め、そこから逆算して「今年何をするのか」を考える。その順番が大切です。


2.誰を顧客にするかを決める

次に決めるのは、「誰に買ってもらう会社になるのか」です。

ここが曖昧な会社は、商品も営業も広告も曖昧になります。

たとえば「福岡県内の中小企業を対象にしています」というだけでは、まだかなり広いでしょう。

同じ中小企業でも、創業したばかりの会社と、社員30人になって組織化に悩んでいる会社では、困っていることがまったく違います。

製造業と飲食業でも違いますし、30代の後継社長と60代の創業社長でも、経営課題は変わります。

だからこそ、「誰でもお客様です」から一歩進めて考える必要があります。

たとえば、「福岡都市圏にある従業員20~50人程度の製造業」「多店舗化を始めたサービス業」「会社を引き継いだ後継社長」のように考えていくと、その顧客が本当に困っていることが見えやすくなります。

顧客を絞ることは、それ以外のお客様を断るという意味ではありません。

「誰に最も強く選ばれる会社をつくるのか」を決めるということです。


3.何で選ばれる会社になるかを決める

顧客を決めたら、次に考えたいのが、「その顧客が、なぜ競合ではなく自社を選ぶのか」です。

価格なのか。品質なのか。対応の速さなのか。専門性なのか。地域密着なのか。

ここでよくあるのが、「うちの強みは技術力です」「うちはサービスが丁寧です」という説明です。

もちろん、それ自体は悪くありません。

ただし、その強みを社長だけが強みだと思っていても意味がありません。

顧客がその違いを感じ、その違いに価値を認め、お金を払ってくれて初めて「経営上の強み」になります。

私は、ここを考えるときに、

「なぜ既存のお客様は、競合ではなく当社を選んでくれているのか」

という問いが重要だと考えています。

社長が「品質だろう」と思っていても、お客様に聞くと「とにかく対応が速いから」と言われるかもしれません。

あるいは、商品の性能より「担当者が自社のことをよく理解してくれるから」という理由かもしれません。

戦略を考えるときには、自分たちが売りたい価値だけでなく、顧客が買っている価値を見る必要があります。


4.「何をやらないか」を決める

ここが、中小企業の経営戦略では特に重要だと思っています。

経営をしていると、やりたいことは次々に増えていきます。

新商品を作る。SNSを始める。営業マンを採用する。新店舗を出す。DXを進める。新規事業を始める。

どれも間違いではありません。

問題は、それを全部同時にやろうとすることです。

社員20人の会社で10個の重点施策を同時に進めれば、結局どの施策にも十分な人と時間を使えなくなることがあります。

戦略とは足し算だけではありません。

むしろ、中小企業では引き算のほうが重要になる場面があります。

私が会社を見るときも、「何を伸ばすか」だけではなく、「何をやめるか」「何を縮小するか」を確認します。

実際の中小企業の現場でも、業績が悪化すると「もっと売上を増やさなければ」と考えがちです。

しかし、数字を細かく見ていくと、特定の商品や顧客、事業そのものが利益を押し下げていることがあります。

そうであれば、売上を増やす前に不採算の仕事を見直すほうが先かもしれません。

限られた人と時間を、利益を生まない仕事から、将来伸ばしたい仕事へ移す。

これも立派な経営戦略です。


5.どの数字を見て戦略を修正するか決める

最後に決めたいのが、数字です。

経営戦略を作っても、「頑張る」「売上を伸ばす」「利益を増やす」だけでは現場は動きません。

たとえば売上であれば、「顧客数×平均単価」に分解できます。

売上が足りないのであれば、新規顧客が少ないのか、既存顧客が離れているのか、単価が低いのかによって打ち手は違います。

さらに、新規顧客を増やすのであれば、問い合わせ数、商談数、成約率などを見る必要があります。

利益を増やしたいのであれば、売上だけでなく粗利益率、一人当たり粗利益、商品別や顧客別の採算を見る必要があるでしょう。

大切なのは、数字をたくさん管理することではありません。

「この数字が変われば、最終的に利益やキャッシュが変わる」という数字を見つけることです。

私は、KPIは社員を管理するための数字ではなく、現場の行動と会社の利益をつなぐ数字だと考えています。

そして、戦略は一度決めたら終わりではありません。

毎月数字を見ながら、「今のやり方で本当に目標へ近づいているのか」を確認し、違っていれば修正します。

中小企業庁の白書でも、経営計画については、策定するだけではなく、その後の振り返りや見直しまで含めて取り組むことの重要性が示されています。

経営計画は作った瞬間には会社を変えません。

計画を見ながら、社長と社員の行動が変わったときに初めて会社が変わります。


「売上を増やす」を経営戦略に変えてみる

たとえば、年商3億円の会社が「来年は売上を10%増やそう」と決めたとします。

これは経営目標ではありますが、まだ戦略ではありません。

「どうやって増やすのか」が決まっていないからです。

既存の商品を今までと同じように販売し、営業社員全員に「もっと頑張れ」と言うだけでは、戦略とは呼びにくいでしょう。

ここで、「利益率が高く、自社の強みを評価してくれる特定顧客への営業に集中する」と決めたらどうでしょうか。

さらに、低採算の商品や案件は見直し、売上だけでなく粗利益率と一人当たり粗利益を毎月確認する。

営業会議でも、売上結果だけを確認するのではなく、商談数、成約率、平均単価を確認する。

ここまで決まると、社員も何を変えればよいのかが分かってきます。

数字で考えてみましょう。

年商3億円の会社が、売上を増やさずに粗利益率を30%から31%へ1ポイント改善できれば、粗利益は年間300万円増えます。

問題は、「もっと頑張ろう」ではありません。

どの商品で、どの顧客で、どの仕事のやり方を変えれば、その300万円を生み出せるのか。

そこまで考えることで、経営戦略と日々の仕事がつながります。


福岡の中小企業だからこそ「全部やる」を避ける

福岡市には、小売、サービス、飲食、建設、情報通信など、さまざまな企業が集まっています。

2021年の経済センサスでは、福岡市内には7万を超える事業所があり、卸売・小売業や宿泊・飲食サービス業なども大きな割合を占めています。

企業が多く集まる都市だからこそ、競合も多く、顧客から見た選択肢も多くなります。

その中で「福岡の皆さんに良い商品を提供します」だけでは、なかなか違いは伝わりません。

福岡市全体を狙うのか、もっと狭い地域に絞るのか。

法人なのか、個人なのか。

価格で選ばれるのか、専門性なのか、速さなのか。

新規顧客を増やすのか、既存顧客との取引を深めるのか。

同じ福岡の会社でも、答えは会社ごとに違います。

中小企業が大企業と同じように全方位で戦う必要はありません。

むしろ、地域、顧客、商品、営業方法を絞り、自社が強くなれる小さな市場を見つけるほうが現実的です。


私が経営戦略を見るときに確認すること

私が経営戦略を考えるときは、立派な資料ができているかどうかよりも、その戦略が実際の経営につながっているかを見ます。

まず、事実を数字と現場で確認できているか。

次に、その戦略が売上だけではなく、粗利益と資金にどう影響するのか。

そして、限られた人、時間、お金を本当に重要なところへ集中できているか。

最後に、「誰が、いつ、何をするのか」まで決まっているかです。

SWOT分析も3C分析も、もちろん役に立ちます。

ただ、フレームワークを埋めること自体が目的になってしまうと、会社は何も変わりません。

分析した結果として、

「うちは、この顧客に、この価値を提供する。そのために、ここへ経営資源を集中する。そして、これはやらない」

と社長が決める。

そこから経営戦略が始まるのだと思います。


まとめ|戦略は「決めること」から始まる

中小企業の経営戦略は、難しい理論から始める必要はありません。

まず3年後にどのような会社になりたいのかを決める。次に、誰を顧客にし、何で選ばれる会社になるのかを考える。そして、限られた経営資源を集中させるために、何をやらないかを決めます。

最後に、その戦略がうまく進んでいるかを確認する数字を決める。

この5つがつながれば、経営戦略は単なる資料ではなく、毎日の意思決定の基準になります。

中小企業には、人も時間も資金も限りがあります。

だからこそ、全部を追わないことです。

数字を見るのも、過去の経営を責めるためではありません。

自社が本当に進みたい方向を確認し、限られた経営資源をどこへ集中するのかを決めるためです。

経営戦略とは、未来を正確に予測することではありません。

自分たちはどこへ向かうのかを決め、今日の一手を選び続けることなのだと思います。


参考資料

本記事の作成にあたっては、主に以下の公的資料を確認しています。

中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書」経営計画の策定や、その後の振り返り・見直し、経営課題への対応などを確認するために参照しました。

中小企業庁「2025年版 中小企業白書」中小企業が自社の経営資源と市場環境をどのように捉えるか、差別化やターゲット市場を考える際の基礎資料として参照しました。

中小企業庁「経営力向上計画」関連資料人材育成、コスト管理、設備投資などを経営計画へ落とし込む考え方を確認するために参照しました。

福岡市「令和3年経済センサス‐活動調査 福岡市結果」福岡市内の事業所数や産業構成を確認するために参照しました。

※統計数値や制度内容は公表後に更新される場合があります。最新情報については、各省庁・自治体の公式資料をご確認ください。

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