良い商品なのに高く売れないのはなぜ?「レモン市場の法則」から考える価格競争を避ける方法
更新日:9月16日

良い商品なのに高く売れないのはなぜ?
「うちの商品は他社より品質がいい。それなのに、なぜ値段ばかり比較されるのか」
こんな疑問を持ったことがある社長は少なくないと思います。
実は、品質の高い商品を作れば、それだけで高く売れるとは限りません。
問題は、売り手には分かっている品質の違いが、買い手には分からないことです。
この状態が続くと、良い商品まで安い価格で評価され、最終的には市場そのものから良い商品が減ってしまうことがあります。
今回は「レモン市場の法則」という考え方から、中小企業が価格競争を避けるために何を考えるべきかを見ていきます。
結論:品質を上げるだけではなく「品質の違いが分かる状態」をつくらなければならない
先に結論です。
良い商品を作ることと、その良さをお客さんに判断してもらえることは別の問題です。
どれだけ品質に自信があっても、お客さんから見て他社との違いが分からなければ、最後は価格で比較されやすくなります。
したがって、中小企業が価格競争を避けるには、
品質を高める
だけでは足りません。
同時に、
「なぜこの商品は高いのか」を買い手が判断できる材料を増やす
必要があります。
ここが今回、一番お伝えしたいところです。
「レモン市場」とは何か
レモン市場という考え方を理解するために、中古車市場を例に考えてみます。
ある中古車市場に、
状態の良い中古車
状態の悪い中古車
が半分ずつ存在しているとします。
仮に、状態の良い車には200万円の価値があり、状態の悪い車には100万円の価値があるとしましょう。
売り手は、自分が売っている車が良い車なのか悪い車なのかを知っています。
ところが買い手には、それが分かりません。
この、
売り手は知っているが、買い手には分からない
という状態を「情報の非対称性」といいます。
買い手は「平均」で考えるようになる
良い車か悪い車か判断できない買い手は、どうするでしょうか。
200万円を出した車が、実は100万円程度の価値しかなかったら困ります。
そこで買い手は、
「良い車かもしれないし、悪い車かもしれない」
と考え、両方の中間あたりの価格しか払いたくなくなります。
例えば150万円です。
ところが、良い車を持っている売り手からすればどうでしょう。
本来200万円の価値がある車なのに150万円でしか売れないのであれば、
「そんな値段なら売らない」
となります。
すると、市場から良い車が減っていきます。
良い車が減れば、買い手はさらに、
「この市場には状態の悪い車が多いのではないか」
と考えるようになります。
その結果、買い手が払ってもよい価格はさらに下がります。
やがて良い商品が市場から姿を消し、質の悪い商品ばかりが残る。
これがレモン市場の法則の基本的な考え方です。
「良いものを作れば売れる」が成立しない理由
この話は中古車に限ったものではありません。
中小企業の経営を考えるうえでも非常に重要です。
社長側からすると、
「うちは材料が違う」
「職人の技術が違う」
「アフターフォローが違う」
「見えないところに手間をかけている」
ということはよくあります。
しかし、その違いをお客さんが購入前に判断できなければどうでしょう。
お客さんからすると、
「結局、何が違うのか分からない」
となります。
違いが分からなければ、比較しやすいものを見るしかありません。
その代表が価格です。
つまり、
品質の差が見えなくなるほど、価格競争が起こりやすくなる
わけです。
ここは非常に重要です。
値下げしている会社ほど、さらに値下げを求められることがある
「競合より良い商品なのに売れない。だったら少し安くしよう」
と考える会社があります。
もちろん、価格を下げること自体が悪いわけではありません。
問題は、
違いが伝わっていない原因を放置したまま値段だけ下げること
です。
例えば、A社の商品が10万円、B社の商品が15万円だったとします。
B社は材料や工程、アフターフォローにコストをかけています。
ところがお客さんには、その違いが分かりません。
そうすると、
「同じような商品なのにB社は5万円高い」
と見えてしまいます。
B社がそこで価格を10万円まで下げれば、一時的に受注は増えるかもしれません。
しかし、もともと品質を高めるためにコストをかけています。
売価だけ下げれば当然、粗利益は減ります。
さらに利益が減れば、品質やサービスにかけられるお金も減っていきます。
これは会社にとって決して良い循環ではありません。
中小企業で起きている「情報の非対称性」
この考え方を実際の中小企業に置き換えてみましょう。
例えば建設会社。
完成した建物を見ただけでは、
下地処理をどこまで丁寧にしているか
どんな材料を使っているか
見えない部分をどう施工しているか
将来のメンテナンスまで考えているか
は、お客さんにはなかなか分かりません。
税理士事務所でも同じです。
「税務顧問料月額3万円」
と書かれているだけでは、
月次でどこまで数字を見るのか
資金繰りについて相談できるのか
銀行融資の相談に乗ってくれるのか
経営計画まで支援するのか
どの程度社長と話をするのか
までは分かりません。
お客さんからすれば違いが分からない。
すると、
「A事務所は月3万円、B事務所は月2万円。だったらB事務所でいいか」
となりやすいわけです。
これは単純な価格の問題ではありません。
価値の違いを判断するための情報が足りない問題なのです。
価格競争を避けるには「見えない品質」を見えるようにする
ではどうすればよいのでしょう。
ここからは、レモン市場の考え方を中小企業経営に置き換えて考えてみます。
重要なのは、
お客さんが品質を判断できる材料を増やすこと
です。
例えば次のようなものがあります。
商品を作る工程を説明する
使用している材料を明らかにする
他社との違いを具体的に説明する
実績を紹介する
お客様の事例を紹介する
購入後の保証内容を明確にする
担当者や会社の考え方を発信する
価格に何が含まれているのか説明する
単なる「当社は高品質です」では足りません。
なぜなら、品質の低い会社でも「高品質です」と書くことはできるからです。
必要なのは、
お客さん自身が違いを判断できる情報
です。
「高い理由」を説明できていますか
価格競争に悩んでいる会社には、一度確認してもらいたいことがあります。
自社の商品が競合より2割高いとしましょう。
そのとき、
「なぜ2割高いのですか?」
と聞かれて、社長以外の社員でも説明できるでしょうか。
例えば、
「品質がいいからです」
だけでは弱いでしょう。
そうではなく、
「一般的には○○までですが、当社では○○まで行っています」
「ここにこの材料を使っているため、初期費用は高くなりますが、この部分の耐久性を重視しています」
「この料金には納品後の○○まで含んでいます」
というように、具体的に説明できることが重要です。
価格は数字なので簡単に比較できます。
一方、品質やサービスは放っておくと比較できません。
だからこそ、
売り手側が比較できる状態をつくらなければならない
のです。
安売りする前に「お客さんからどう見えているか」を考える
売上が落ちたとき、すぐ値下げを考える会社があります。
しかし、その前に確認したいことがあります。
本当に価格が高いのでしょうか。
それとも、
高い理由が伝わっていないだけなのでしょうか。
この2つは似ていますが、経営上はまったく違う問題です。
価格そのものが高すぎるのであれば、価格設定を見直す必要があります。
一方、価値が伝わっていないのであれば、見直すべきなのは価格ではなく、
商品説明
ホームページ
営業資料
見積書
商談方法
情報発信
かもしれません。
価格を下げる前に、一度この点を考えてみる必要があります。
情報を出さないことが「信用されない原因」になることもある
売り手からすると、
「そこまで細かく説明しなくても、分かる人には分かる」
と思うことがあります。
職人の世界などでは特にそうかもしれません。
しかし、お客さんは専門家ではありません。
良いものと悪いものを見分けるための知識を持っていないからこそ、判断材料を求めています。
情報が少なければ、お客さんは慎重になります。
そして判断できないものには、高い金額を払いたくありません。
これはお客さんが価格だけを見ているからとは限りません。
失敗したくないからです。
したがって情報発信というのは、単なる広告ではありません。
買い手と売り手との情報格差を小さくする役割も持っています。
ブログを書く意味もここにある
私は、中小企業にとってブログやホームページから情報を発信する意味は大きいと思っています。
商品を売り込むためだけではありません。
例えば専門的なサービスでは、購入する前に品質を完全に確認することは困難です。
だからこそ、
「この会社はどういう考え方で仕事をしているのか」
「どの程度の知識を持っているのか」
「どこまで説明してくれるのか」
を事前に知ってもらう必要があります。
ブログを読んだから必ず契約する、という単純な話ではありません。
しかし情報がまったくない会社と、考え方や仕事の進め方が分かる会社。
どちらのほうがお客さんが判断しやすいかといえば、後者ではないでしょうか。
価格競争から抜け出す第一歩は、商品の価値を高めることだけではなく、その価値を判断できる情報を増やすことです。
良い会社ほど「伝える努力」が必要
品質に自信がある会社ほど、
「うちはきちんと仕事をしているから分かってもらえる」
と思いがちです。
しかし、レモン市場の話から分かるように、良い商品と悪い商品を買い手が区別できなければ、良い商品であっても正しく評価されません。
むしろ品質にコストをかけている会社ほど、不利になる可能性があります。
だからこそ、
良い商品を作る会社ほど、良さを伝える努力が必要です。
これは派手な広告をしなさい、という話ではありません。
自分たちが当たり前だと思ってやっていることを、
「なぜやっているのか」
「お客さんにとって何が違うのか」
という言葉に変換していく。
そこから始めればよいと思います。
6. 自社の「高い理由」を数字と言葉で説明できますか?
価格競争を避けるには、単に値上げするだけではなく、自社が提供している価値と、その価値を生み出すコストを把握しておく必要があります。
いちご会計事務所では、月次決算や利益構造の分析を通じて、
「どの商品で利益が出ているのか」「どこまで値下げできるのか」「いくらで販売すれば必要な利益を確保できるのか」
といった経営判断も含め、中小企業の経営を数字の面からサポートしています。
価格設定や利益改善についてお悩みの方は、経営強化型税務顧問についてご相談ください。





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