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【2027年4月~】飲食料品の消費税が1%に?飲食店への影響と値下げ・仕入税額控除を税理士が解説

9月7日
読了時間: 12分


2027年4月から、飲食料品の消費税率を現在の8%から1%へ引き下げる方針が政府から示されています。

「食材の消費税が7%も下がるなら、飲食店はかなり得をするのでは?」

そう思う社長も多いかもしれません。

しかし、飲食店についてはそれほど単純ではありません。

食材の仕入れにかかる消費税率が下がる一方、店内で提供する料理や飲み物には、原則として引き続き10%の消費税がかかるためです。

さらに、仕入れ時に支払う消費税が減れば、納税額を計算するときに差し引ける「仕入税額控除」も減ります。

この記事では、飲食料品の消費税1%への引下げによって飲食店の利益や納税額がどう変わるのか、そして経営者が今から何を確認しておくべきかを解説します。

※本記事は2026年9月6日時点で公表されている政府方針等をもとに作成しています。制度はまだ法律として成立しておらず、今後の税制改正や国会審議によって内容が変更される可能性があります。

結論|食材の消費税が1%になっても、飲食店の利益が7%増えるわけではない

最初に結論です。

今回の消費税率引下げについて、飲食店経営者が押さえておきたいポイントは次の5つです。

  1. 2027年4月1日から2年間、軽減税率対象の飲食料品を1%とする政府方針が決まっている

  2. 飲食店の店内飲食は原則として10%のまま

  3. 食材の消費税が下がると、仕入税額控除も減少する

  4. したがって、食材の税込仕入価格が下がっただけで利益が増えるとは限らない

  5. テイクアウトを行う飲食店では、店内飲食との税率差が大きくなる可能性がある

特に注意していただきたいのが、

「仕入れが安くなる=その分だけ利益が増える」

という考え方です。

消費税の仕組みを考えると、一般課税を採用している飲食店では必ずしもそうなりません。


2027年4月から飲食料品の消費税率を1%とする方針

政府は2026年8月5日、給付付き税額控除の導入に向けた基本方針を閣議決定しました。

その中で、

2027年4月1日から2年間、現在の軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を1%とする

方針が示されています。

現在、飲食料品には原則として8%の軽減税率が適用されています。

これが方針どおり実施されれば、

項目

現在

2027年4月以降の方針

軽減税率対象の飲食料品

8%

1%

店内飲食

10%

10%

酒類

10%

10%

となることが想定されます。

ただし、ここで重要なのは、現時点では「法律として確定した制度」ではないということです。

閣議決定は政府としての方針を決めたものです。

実際に消費税率を変更するためには、税制改正の内容を固めたうえで、関連法案が国会で成立する必要があります。

したがって、今の段階でレジの設定や価格表示を変更する必要はありません。

一方で、2027年4月からの実施が想定されている以上、飲食業や食品小売業では今から影響を確認しておく価値があります。


飲食店は「仕入れ1%・売上10%」になる可能性がある

飲食店にとって今回の制度で最も重要なのが、仕入れと売上の税率が違うという点です。

例えば、飲食店が肉、魚、野菜などを仕入れる場合、現在は基本的に8%の軽減税率が適用されます。

方針どおり改正されれば、これが1%になります。

ところが、お客様が店内で飲食した場合は「外食」に該当するため、軽減税率の対象ではありません。

そのため、

店内飲食の売上は10%

のままとなる予定です。

つまり、

食材の仕入れ 1%店内飲食の売上 10%

という大きな税率差が生じます。

一見すると、

「安く仕入れて10%で売れるなら、飲食店には有利では?」

と思うかもしれません。

しかし、消費税の計算ではもう一つ重要なポイントがあります。

それが「仕入税額控除」です。


仕入税額控除とは

一般課税で消費税を計算している会社の場合、基本的な考え方は、

売上で預かった消費税 - 仕入れや経費で支払った消費税

です。

この「仕入れや経費で支払った消費税」を売上の消費税から差し引く仕組みを、仕入税額控除といいます。

例えば、

売上で預かった消費税 200円仕入れで支払った消費税 80円

であれば、

200円-80円=120円

というイメージです。

つまり、仕入れ時に支払う消費税が減れば、同時に差し引ける消費税も少なくなります。

ここが今回の消費税減税を考えるうえで非常に重要です。


数字で見る|本当に飲食店の利益は増えるのか

単純な例で考えてみましょう。

税抜1,000円の食材を仕入れ、それを税抜2,000円の料理として店内で提供するとします。

その他の経費等は無視し、消費税だけを単純化します。

現在|食材8%・店内飲食10%

仕入れは、

1,000円+消費税80円=1,080円

です。

料理を2,000円で販売すると、

2,000円+消費税200円=2,200円

となります。

納付する消費税を単純化すると、

200円-80円=120円

です。

したがって、

2,200円-1,080円-120円=1,000円

が残ります。

改正後|食材1%・店内飲食10%

食材の税率が1%になれば、

1,000円+消費税10円=1,010円

です。

一方、店内飲食は10%のままなので、

2,000円+消費税200円=2,200円

です。

納付する消費税は、

200円-10円=190円

となります。

したがって、

2,200円-1,010円-190円=1,000円

です。

結果を比較すると


現在

1%になった場合

食材の支払額

1,080円

1,010円

売上代金

2,200円

2,200円

消費税納付額

120円

190円

最終的に残る金額

1,000円

1,000円

仕入れ時の支払額は70円減っています。

しかし、その分だけ仕入税額控除も70円減るため、納付する消費税は70円増えています。

結果として、この単純な例では利益は変わりません。

つまり、

「食材の消費税が8%から1%になったから7%分儲かる」わけではない

ということです。


「消費税が下がったから値下げ」は慎重に判断する

飲食店経営者にとって、今後大きな問題になる可能性があるのが価格です。

スーパーなどで販売される食品は消費税率が8%から1%へ下がれば、消費者から見た税込価格も下がる可能性があります。

そのため、お客様から、

「食材の消費税が下がったのに、なぜこの店は値下げしないの?」

と思われる可能性があります。

しかし先ほど説明したとおり、飲食店の場合、

食材の消費税が下がったことと、飲食店の利益が増えることは別問題

です。

仕入れ時の支払額だけを見て価格を下げると、結果として利益率を悪化させる可能性があります。

特に現在の飲食業は、

  • 人件費

  • 電気代

  • ガス代

  • 家賃

  • 食材そのものの価格

  • 包装資材

  • 配送費

など、消費税以外のコストも大きく上昇しています。

したがって価格を決める場合には、

「仕入価格がいくら下がったか」ではなく、「1商品売ったときに最終的にいくら利益が残るのか」

を見る必要があります。

経営者が見るべきなのは消費税率そのものではなく、粗利益です。


テイクアウトをしている飲食店はさらに注意

今回の改正が実現した場合、店内飲食とテイクアウトの税率差はこれまで以上に大きくなります。

現在は、

店内飲食 10%テイクアウト 8%

です。

ところが方針どおりであれば、

店内飲食 10%テイクアウト 1%

となる可能性があります。

税率差は2ポイントから9ポイントへ広がります。

例えば、税抜1,000円の商品であれば、

店内飲食 1,100円テイクアウト 1,010円

となり、税込価格には90円の差が出ます。

ここまで差が大きくなると、これまで以上に、

「これは店内飲食なのか、持ち帰りなのか」

という区分管理が重要になります。

また、同じ商品について税込価格を統一するのか、それとも税率に合わせて価格を変えるのかという価格戦略も検討する必要があります。

特に、

  • 弁当

  • パン

  • ケーキ

  • コーヒー

  • ファストフード

  • 惣菜

  • フードコート

  • テイクアウト併設店

などは影響が大きくなる可能性があります。


簡易課税を選択している飲食店は影響が異なる

ここまで説明した例は、実際の仕入税額を差し引いて消費税を計算する「一般課税」を単純化したものです。

一方、中小企業の中には「簡易課税制度」を選択している会社もあります。

簡易課税制度では、実際に支払った仕入税額をそのまま使うのではなく、業種ごとに決められた「みなし仕入率」によって消費税額を計算します。

そのため、飲食料品の消費税率が1%になった場合の影響は、一般課税とは異なる可能性があります。

政府・与党でも2026年9月時点で、

  • 本則課税へ移行するための特例

  • 簡易課税制度に関する特例

  • 中間申告に関する特例

などが検討されています。

したがって簡易課税を選択している会社については、

「1%になったら一般課税と簡易課税のどちらが有利か」

を改めてシミュレーションする必要が出てくる可能性があります。

ここは会社ごとの売上構成や仕入割合、設備投資の予定などによって結論が変わります。


レジ・POSシステムも確認が必要になる

税率変更が実施されれば、飲食店では会計システムの対応も必要になります。

例えば、

  • POSレジ

  • モバイルオーダー

  • 券売機

  • ECサイト

  • 請求書システム

  • 会計ソフト

  • キャッシュレス決済システム

などです。

現在のシステムが、

「10%と8%」

という前提で作られている場合、

「10%と1%」

に対応できるか確認する必要があります。

特に複数店舗を運営する会社では、直前に対応するとかなり大変です。

制度が正式決定してからで構いませんが、利用しているシステム会社が税率変更に対応する予定なのかは早めに確認しておくとよいでしょう。


値札やメニューの「総額表示」にも特例が検討されている

消費者向けの商品・サービスについては、原則として消費税込みの価格を表示する「総額表示」が必要です。

税率が8%から1%へ変更される場合、小売店や飲食店では大量の値札やメニューを変更しなければならない可能性があります。

そこで2026年9月2日の自民党税制調査会では、税率変更の前後2か月について、一定の条件のもとで税率変更前または変更後の税込価格を表示できる特例を設ける方向が示されています。

ただし、これについても現時点では法令として確定したものではありません。

実際の表示方法については、制度確定後に確認する必要があります。


予約販売・通信販売にも経過措置が検討されている

もう一つ注意したいのが予約販売です。

例えば、

  • おせち

  • クリスマスケーキ

  • ギフト商品

  • 定期購入商品

  • 通信販売

などでは、

「契約した日」

と

「実際に商品を渡す日」

が大きく離れることがあります。

2027年4月をまたぐ取引では、どちらの税率を使うのかという問題が生じます。

政府・与党ではこうした予約販売や通信販売に関する経過的な税率の取扱いについても検討が行われています。

年末年始の商品を扱う会社では、制度開始直前ではなく、予約受付を開始する時点から確認しておいた方がよいでしょう。


中間申告にも影響する可能性がある

ある程度の消費税を納めている会社は、年1回の確定申告だけではなく、年度途中に「中間申告」を行います。

中間申告額は基本的に前期の納税額をもとに計算されるため、消費税率が大きく変わると、

実際の納税見込額に比べて中間納付額が大きくなる

ケースが考えられます。

そのため、中間申告についても特例措置が検討されています。

飲食料品を大量に取り扱う会社では、単なる税額の問題ではなく、資金繰りにも影響するため注意が必要です。


飲食店経営者が今からやっておきたい5つのこと

制度の詳細はまだ確定していません。

そのため、今すぐレジを変更したり価格を変更したりする必要はありません。

ただし、経営者として次の準備はしておいてよいでしょう。

1.自社が一般課税か簡易課税か確認する

まず、自社がどの方法で消費税を計算しているかを確認してください。

一般課税か簡易課税かによって影響が変わります。

2.売上を「店内・テイクアウト」に分けて把握する

店内飲食とテイクアウトでは税率が大きく違う可能性があります。

自社の売上構成を確認しておきましょう。

3.仕入れのうち飲食料品がどのくらいあるか確認する

食材以外の経費については、原則として今回の1%引下げの対象ではありません。

自社の経費のうち、

  • 食材

  • 人件費

  • 家賃

  • 水道光熱費

  • 消耗品

  • 広告費

などがそれぞれどの程度を占めているのか把握することが重要です。

4.価格を変えた場合の利益をシミュレーションする

「消費税が下がるから何円下げる」という考え方ではなく、

価格を変えた結果、粗利益がいくら残るのか

を確認してください。

飲食店経営では、税率よりこちらの方が重要です。

5.POSレジや会計ソフトの対応状況を確認する

制度が正式に決まった段階で、現在使っているシステムが1%の税率に対応できるか確認しましょう。


今回の消費税減税は「税務」だけではなく「価格戦略」の問題

今回の改正で飲食店経営者に一番考えていただきたいのは、単なる消費税の計算ではありません。

重要なのは価格戦略です。

消費者から見れば、

「食品の消費税が下がった」

という非常に分かりやすいニュースになります。

一方、飲食店側では、

  • 人件費は下がらない

  • 家賃は下がらない

  • 水道光熱費も下がらない

  • 食材そのものの価格も下がるとは限らない

  • 仕入税額控除は減る

という事情があります。

したがって、

「減税されたから値下げする」

と短絡的に判断するのではなく、

自社が必要な利益を確保できる価格はいくらなのか

を改めて計算することが重要です。

飲食店は売上が増えていても、原価率や人件費率が少し悪化するだけで利益が大きく減る業種です。

今回の税率変更を機に、

「一皿いくらで売れば、本当に利益が残るのか」

まで確認してみてはいかがでしょうか。



飲食店の価格設定は「消費税」だけで決めないことが重要です

飲食料品の消費税率が1%になった場合、飲食店では仕入税額控除、簡易課税、テイクアウト、価格表示など、さまざまな影響が考えられます。

しかし、経営者にとって本当に重要なのは、

「税率が何%になるか」ではなく、「最終的に会社にいくら利益と現金が残るか」

です。

いちご会計事務所では、税金の計算だけでなく、原価率・粗利益・資金繰りなどを含めて中小企業の経営数字を確認する「経営強化型税務顧問」を行っています。

今回の消費税率変更を機に、

「今の価格で本当に利益が残っているのか」「値上げ・値下げすると利益はいくら変わるのか」「一般課税と簡易課税のどちらが自社に合っているのか」

を確認したい経営者の方は、お気軽にご相談ください。

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