価格競争から抜け出すには?中小企業のためのブルー・オーシャン戦略をわかりやすく解説

「競合会社が値下げしたので、こちらも値下げしないと売れない」
「他社より少しでも良い商品を、少しでも安く提供しよう」
こうした競争を続けている会社は少なくありません。
しかし、競合会社と同じ市場、同じ顧客、同じ商品で戦っている限り、最後には価格競争になる可能性があります。
そこで一度考えてみたいのがブルー・オーシャン戦略です。
これは単に「ライバルのいないニッチ市場を探しましょう」という話ではありません。
競合他社との競争そのものから離れ、新しい価値をつくることで、自社にとって競争の少ない市場をつくっていく。
これが大きな考え方です。
今回は、中小企業の社長さん向けに、ブルー・オーシャン戦略とは何か、自社の経営にどう取り入れればよいのかを考えてみます。
結論|「競合より勝つ」だけでなく「競争しなくてよい場所をつくる」
最初に結論です。
ブルー・オーシャン戦略で重要なのは、
競合会社より少し良い商品をつくることではありません。
考えるべきなのは、
そもそも他社と同じ土俵で戦う必要があるのか
ということです。
例えば、
他社より5%安くする
他社より納期を1日早くする
他社より機能を一つ増やす
という改善も大切です。
ただ、この競争を続けていけば、相手も同じことをしてきます。
すると、
値下げ↓利益率低下↓さらに販売量を増やす必要がある↓社員が忙しくなる↓それでも利益が残らない
という状態になりかねません。
だったら、
「お客様が本当に求めている価値は何か」を考え直し、競争のルールそのものを変えられないか。
ここから考えるのがブルー・オーシャン戦略です。
ブルー・オーシャン戦略とは何か
ブルー・オーシャン戦略では、市場を大きく「レッド・オーシャン」と「ブルー・オーシャン」に分けて考えます。
レッド・オーシャンとは
レッド・オーシャンとは、すでに多くの企業が参入し、競争が激しくなっている既存市場です。
同じような顧客を相手に、
価格
品質
機能
納期
サービス
などを競い合います。
市場そのものが大きくならなければ、基本的には既存のパイを競合会社と奪い合うことになります。
書籍でも、競争が激しくなるほど商品・サービスの違いが小さくなり、最終的には価格競争へ向かいやすい点が説明されています。
ブルー・オーシャンとは
これに対してブルー・オーシャンとは、
これまで存在しなかった新しい価値をつくり、競争の少ない市場をつくること
です。
ここで注意したいのは、
「誰も参入していない小さな市場を探せばいい」
という意味ではないことです。
書籍でも、たまたま見つかったニッチ市場ではなく、企業が主体的に新しい市場を「創造する」ことがブルー・オーシャン戦略のポイントとして説明されています。
なぜ価格競争は会社を疲弊させるのか
価格競争が怖いのは、売上が減ることだけではありません。
利益が減ることです。
例えば、100万円で販売しているサービスの変動費が60万円だったとします。
粗利益は40万円です。
ここから10%値下げして90万円で販売すると、
90万円-60万円=30万円
となります。
売価は10%しか下がっていませんが、粗利益は、
40万円 → 30万円
つまり25%減っています。
同じ粗利益を確保しようとすると、これまで以上に多く販売しなければなりません。
すると、
「安くして仕事を取ったのに、忙しくなるばかりでお金が残らない」
という状態になります。
中小企業では、売上高以上に粗利益をいくら残せるかが重要です。
だからこそ、
競争が激しい場所で「もっと安く、もっと良く」を続けるだけでよいのか
を考える必要があります。
ブルー・オーシャン戦略は「差別化」と少し違う
ここは大切です。
ブルー・オーシャン戦略を、
「他社との差別化をしましょう」
という話だけで理解すると、本質を見失います。
例えば、
競合A社の商品には機能が10個ある。
そこで、
「うちは機能を12個にしよう」
と考えたとします。
確かに差別化ではあります。
しかし、お客様がその追加機能を求めていなければ、会社のコストが増えただけです。
さらに競合会社が翌年13個の機能を搭載すれば、再び競争が始まります。
つまり、
競争相手を見ながら改良するだけでは、競争の枠組みから抜け出せません。
ブルー・オーシャン戦略では、
「競合は何をしているか」
だけではなく、
「お客様は何にお金を払っているのか」
を改めて考えます。
キーワードは「バリュー・イノベーション」
ブルー・オーシャン戦略を理解するときに欠かせないのが、バリュー・イノベーションという考え方です。
簡単に言えば、
お客様にとっての価値を高めながら、同時に不要なコストを減らす
という考え方です。
書籍では、従来型の競争戦略では「低コスト」か「差別化」かのどちらかを選ぶ考え方がある一方、ブルー・オーシャン戦略では両方を同時に実現することを目指す、と整理されています。
ここは中小企業でも非常に重要だと思います。
高付加価値化というと、
「もっとサービスを増やさなければ」
と思いがちです。
しかし、サービスを増やせば当然コストも増えます。
そうではなく、
お客様にとって重要でないものは思い切って減らし、その分、本当に評価される部分に経営資源を集中する。
こちらの方が重要です。
中小企業ならどう考えるか
では、実際の中小企業で考えてみましょう。
例えば、一般的な記帳代行会社があったとします。
競合会社は、
月額2万円月額1万8,000円月額1万5,000円
と値下げ競争をしています。
ここで、
「当社は1万4,800円にします」
とやれば、完全にレッド・オーシャンです。
一方で、
経理入力だけを提供するのではなく、
毎月の利益を社長と確認する
資金繰りの予測をする
商品別の採算を見る
銀行融資に必要な数字を整理する
経営計画とのズレを確認する
というサービスに変えればどうでしょうか。
お客様から見れば、
「記帳を頼むサービス」
ではなく、
「会社の数字を経営判断に使えるようにするサービス」
になります。
比較対象そのものが変わってきます。
重要なのは、これを「サービスをたくさん付ける」という発想だけで考えないことです。
不要な業務は減らし、価値を感じてもらえる業務へ時間を振り向ける。
この考え方が必要です。
「お客様は何を買っているのか」を考えてみる
ブルー・オーシャンを考えるとき、私は、
「お客様は、本当は何を買っているのだろうか」
と考えてみるとよいと思います。
例えば、
建設会社
お客様が買っているものは「工事」だけでしょうか。
もしかすると、
「予定どおり完成する安心」
かもしれません。
印刷会社
お客様が買っているものは「印刷物」でしょうか。
もしかすると、
「展示会で問い合わせを増やすこと」
かもしれません。
システム会社
お客様が買っているものは「システム」でしょうか。
もしかすると、
「社員の残業時間を減らすこと」
かもしれません。
税理士事務所
お客様が買っているものは「申告書」でしょうか。
もちろん申告は重要です。
ただ経営者が求めているのは、
「会社にいくらお金を残せるのか」
「銀行から借りられるのか」
「来年どこまで投資できるのか」
を判断できる状態かもしれません。
商品そのものではなく、
商品を買った結果、お客様が何を得たいのか。
ここまで考えると、新しい市場を考えやすくなります。
持続的イノベーションだけでは競争から抜け出せないことがある
ブルーオーシャン戦略の解説においては、イノベーションについても重要な指摘があります。
既存の商品を、
高性能にする
高機能にする
より便利にする
といった改善は「持続的イノベーション」と考えることができます。
もちろん必要です。
ただ、競合会社も同じ方向へ改善すれば、やがて違いが小さくなります。
そこで必要になるのが、従来とは違う価値軸へ移ることです。
書籍ではデジタルカメラを例に、単純な画素数競争だけではなく、別の価値軸へ移行する考え方が示されています。
中小企業であれば、
「性能を10%上げる」
ではなく、
「そもそもお客様が困っていることを違う方法で解決できないか」
と考えてみることです。
ポーターの競争戦略との違い
経営戦略で有名なのが、マイケル・ポーターの競争戦略です。
ポーターは既存市場の競争構造を分析し、その中で自社をどこに位置づけるかを考えます。
例えば、
新規参入
代替品
売り手
買い手
既存企業同士の競争
などを分析し、競争上有利なポジションを考えます。
一方、ブルー・オーシャン戦略には、
既存の競争環境の中で有利な場所を探すだけでなく、競争そのものが少ない市場をつくろう
という発想があります。
どちらか一方が正しく、もう一方が間違っているという話ではありません。
既存市場を分析することも必要です。
ただ、
「競争にどう勝つか」しか考えていなかった会社に、「競争しなくてよい方法はないか」という新しい視点を与えてくれる。
ここにブルー・オーシャン戦略の面白さがあります。
ブルー・オーシャンは永遠には続かない
もう一つ注意したいことがあります。
良い市場をつくったとしても、永遠に競争相手が現れないわけではありません。
儲かる市場であれば、当然ほかの会社が参入してきます。
つまり、
ブルー・オーシャン↓成功する↓他社が参入する↓競争が激しくなる↓レッド・オーシャン化する
ということは十分考えられます。
だから重要なのは、
一度ブルー・オーシャンを見つけて終わりではなく、お客様が評価する価値を考え続けること
です。
経営戦略は一度作ったら終わりではありません。
環境が変われば戦略も変える必要があります。
自社のブルー・オーシャンを考える5つの質問
難しい経営理論から始める必要はありません。
まず社長さんに考えていただきたいのは次の5つです。
現在、何を理由に競合他社と比較されているか
その競争は本当に続ける必要があるか
お客様が本当に欲しい結果は何か
業界では当たり前だが、お客様には必要ないものはないか
逆に、業界では提供されていないが、お客様が困っていることはないか
特に4番と5番は重要です。
会社は長く同じ業界にいるほど、
「昔からこうだから」
「この業界では当たり前だから」
と考えてしまいます。
しかし、その「当たり前」を疑ったところに、新しい市場が生まれることがあります。
書籍でも、日本企業がブルー・オーシャン戦略を実践するには、業界や市場の常識を突き崩して考えることが重要だと説明されています。
ただし「奇抜なアイデア」を出せばよいわけではない
ブルー・オーシャンという言葉だけを聞くと、
「誰も考えたことがない斬新な事業を始めればいい」
と思うかもしれません。
私は、ここは注意が必要だと思います。
どれほど珍しい商品でも、お客様がお金を払ってくれなければ事業にはなりません。
重要なのは、
新しいこと
ではなく、
お客様にとって新しい価値があること
です。
さらに中小企業の場合には、
本当にお客様がいるか
いくらなら購入してくれるか
粗利益はいくら残るか
必要な設備投資はいくらか
運転資金はどの程度必要か
人員を増やす必要があるか
まで数字で確認する必要があります。
経営戦略と財務は切り離せません。
「面白そうだからやる」ではなく、
価値があるか、そして利益が残るか。
この両方を見ることが重要です。
6.FAQ
Q1.ブルー・オーシャン戦略とは簡単にいうと何ですか?
競合会社との競争に勝つことだけを考えるのではなく、新しい顧客価値をつくることで、競争そのものが少ない市場をつくる考え方です。
単にライバルがいないニッチ市場を探すだけではなく、自社で新しい市場を主体的につくるという点がポイントです。
Q2.中小企業でもブルー・オーシャン戦略は使えますか?
使えます。
むしろ中小企業の場合、大企業と同じ商品、同じ顧客、同じ価格で正面から競争することには限界があります。
すべての市場を狙うのではなく、顧客の特定の困りごとに絞り、独自の価値をつくるという考え方は、中小企業と相性がよい場合があります。
ただし、自社の人員・資金・営業力を考えながら実行する必要があります。
Q3.ブルー・オーシャンと「差別化」は何が違うのでしょうか?
一般的な差別化は、既存の競争軸の中で他社より優れた商品を目指すことがあります。
ブルー・オーシャン戦略では、それだけではなく「競争軸そのものを変えられないか」を考えます。
他社より機能を一つ増やすのではなく、お客様が本当に必要としている価値を改めて考える、という違いがあります。
Q4.競合会社を調べなくてもよいということでしょうか?
そうではありません。
競合分析は必要です。
ただし、競合会社だけを見ていると、どうしても「他社より安く」「他社より早く」「他社より高機能に」という発想になりがちです。
競合を見ると同時に、「そもそも顧客は何を求めているのか」を見ることが重要です。
Q5.ブルー・オーシャンを見つけたら長期間安泰ですか?
必ずしもそうではありません。
利益が出る市場には他社も参入してきます。
そのため、一度新市場をつくって終わるのではなく、顧客ニーズや競争環境の変化を見ながら、新しい価値を考え続ける必要があります。
7.戦略を考えるときこそ、会社の数字も一緒に見てください
「新しい商品を始めたい」
「値下げ競争から抜け出したい」
「利益率の高い事業へ転換したい」
こうした経営戦略を考える際には、アイデアだけでなく、
商品別・顧客別の粗利益
固定費
損益分岐点売上高
設備投資額
資金繰り
借入金返済額
まで一緒に確認することが重要です。
いちご会計事務所では、申告書を作るだけではなく、会社の数字を経営判断に活用するための経営強化型税務顧問に取り組んでいます。
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