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銀行は決算書のどこを見る?融資審査でチェックされる7つのポイントを税理士が解説

9月7日
読了時間: 12分

「銀行に融資を申し込む予定ですが、決算書のどこを見られるのでしょうか?」

中小企業の経営者からよく受ける質問です。

「黒字なら大丈夫」「売上が増えていれば借りられる」

と思われがちですが、銀行は利益だけを見て融資を判断しているわけではありません。

この記事では、銀行が融資審査で決算書のどこを確認するのか、そして融資を申し込む前に経営者自身が確認しておきたいポイントを具体的に解説します。

結論|銀行が見ているのは「この会社は返せるか」と「これからも返せるか」

最初に結論です。

銀行が決算書を見る大きな目的は、

「この会社に貸したお金がきちんと返ってくるか」

を判断することです。

そのため、単純に「黒字か赤字か」だけではなく、

  1. 売上は維持・成長しているか

  2. 本業で利益を出せているか

  3. 現金を持っているか

  4. 売掛金や在庫が膨らんでいないか

  5. 借入金が多すぎないか

  6. 純資産が十分あるか

  7. 利益から借入金を返済できるか

といった項目を総合的に見ます。

さらに現在の金融行政では、財務データや担保・保証だけに過度に依存せず、会社の事業内容や成長可能性も含めて評価する「事業性評価」が重視されています。金融庁も地域金融機関に対し、事業性評価に基づく融資への取組を促しています。

つまり、

決算書は重要。しかし、決算書だけで融資が決まるわけでもない

ということです。


銀行は決算書を「点」ではなく「流れ」で見る

まず理解しておきたいのは、銀行は今期の利益だけを見ているわけではないということです。

例えば、


前々期

前期

今期

売上高

1億円

9,000万円

8,000万円

営業利益

800万円

400万円

100万円

という会社があったとします。

今期も100万円の黒字なので、決算書上は赤字ではありません。

しかし銀行から見ると、

「売上も利益も3年間下がり続けている」

という点が気になります。

反対に、


前々期

前期

今期

売上高

7,000万円

8,000万円

9,000万円

営業利益

▲200万円

100万円

500万円

なら、過去に赤字があっても、

「改善傾向にある会社」

と説明することができます。

日本政策金融公庫でも、既に事業を行っている法人が融資を申し込む場合、原則として最近2期分の確定申告書・決算書などを準備することとされており、決算後6か月以上経過している場合には最近の試算表も求めています。

金融機関によって必要資料や審査方法は異なりますが、

1期だけではなく、複数期間の推移を見る

という考え方は非常に重要です。


銀行が決算書で見る7つのポイント

1.売上高|「大きさ」よりも推移を見る

まず確認される数字の一つが売上高です。

ただし、

「売上1億円だから良い会社」「売上3,000万円だから悪い会社」

という単純な話ではありません。

重要なのは、

その会社の売上が維持・成長しているか

です。

経済産業省の「ローカルベンチマーク」でも、企業の財務状況を見る指標の一つとして「売上増加率」が採用されています。

特に銀行から質問されやすいのは、

  • 売上が前年から大きく落ちた

  • 特定の得意先への依存度が高い

  • 売上が急激に増えた

  • 売上の季節変動が大きい

といったケースです。

売上が減ったから即座に融資不可ということではありません。

重要なのは、

なぜ減ったのか、今後どうなるのかを説明できること

です。


2.営業利益|本業できちんと稼げているか

次に重要なのが利益です。

特に確認したいのが、

営業利益

です。

営業利益とは、会社が本業で稼いだ利益です。

例えば、

売上高 1億円営業利益 ▲300万円固定資産売却益 1,000万円当期利益 500万円

という会社があったとします。

最終的には黒字ですが、本業は赤字です。

この場合、

「今年は500万円黒字でした」

だけでは十分ではありません。

銀行側からすると、

来年も固定資産を売らなければ利益が出ないのではないか

という疑問が出ます。

ローカルベンチマークでも「営業利益率」が企業の収益性を見る財務指標として採用されています。


したがって社長も、


「最終利益はいくらだったか」


だけではなく、


本業で利益を出せているか


を見る必要があります。


3.現預金|会社に実際のお金がいくら残っているか

貸借対照表でまず確認したいのが、

現金・預金

です。

利益が出ていても、会社に現金がほとんどなければ資金繰りは不安定です。

例えば、

借入金返済 300万円給与    500万円仕入代金  500万円

が毎月必要な会社で、預金が300万円しかなければ、少し入金が遅れただけでも資金繰りが厳しくなります。

反対に、一定の現預金を持っている会社であれば、突然売上が落ちても立て直す時間があります。

銀行にとっても、

「今いくら利益が出ているか」だけでなく「現在いくら支払能力があるか」

は重要な情報です。

2026年版中小企業白書・小規模企業白書でも、貸借対照表を活用する企業では、借入金の返済能力や資産・負債のバランスなどを分析しており、貸借対照表を活用している事業者ほど資金繰りに余裕がある傾向が示されています。

4.売掛金・在庫|数字の中身まで確認される

決算書を見るときに注意したいのが、

  • 売掛金

  • 棚卸資産

です。

例えば売上が、

前年 1億円今年 1億円

と変わっていないのに、

売掛金が、

前年 1,000万円今年 3,000万円

に増えていたとします。

この場合、

「なぜ売掛金だけ増えたのか?」

という疑問が出ます。

考えられる理由としては、

  • 回収サイトが長くなった

  • 入金が遅れている得意先がある

  • 大型案件の売上が期末に集中した

などがあります。

在庫も同じです。

売上が増えていないのに、

在庫 1,000万円 → 3,000万円

となっていれば、

「売れない在庫が残っているのではないか」

という確認が必要になります。

経済産業省のローカルベンチマークでも、売掛金・在庫・買掛金などから事業に必要な運転資金の状態を見る「営業運転資本回転期間」が財務指標に含まれています。

つまり銀行は、

決算書に載っている金額だけでなく、その中身も見る

と考えておいた方がよいでしょう。


5.借入金|残高だけでなく「返せる金額か」を見る

「借入金が多いと融資を受けられないのでしょうか?」

これもよく聞かれます。

借入金が多いことだけで融資が決まるわけではありません。

重要なのは、

会社が生み出すキャッシュに対して借入金が多すぎないか

です。

経済産業省のローカルベンチマークには、

EBITDA有利子負債倍率

という指標があります。

簡略化すると、

(借入金-現預金)÷(営業利益+減価償却費)

で計算します。citeturn315084search32

例えば、

借入金 5,000万円現預金 1,000万円営業利益 500万円減価償却費 300万円

なら、

(5,000万円-1,000万円)÷(500万円+300万円)

=5倍

です。

これは、現在の利益水準に対して借入金がどの程度あるのかを見る一つの方法です。

ただし、実際の融資審査はこの指標だけで決まるものではありません。

借入金の返済期間、金利、資金使途、今後の設備投資、事業の成長性なども含めて総合的に判断されます。


6.純資産|会社がこれまでどれだけ利益を蓄積してきたか

貸借対照表の下にある、

純資産

も重要です。

特に確認したいのが、

債務超過になっていないか

です。

例えば、

資産 5,000万円負債 6,000万円

なら、

純資産は▲1,000万円

です。

つまり、会社が持っている資産をすべて使っても負債を返済できない状態になっています。

ただし、

債務超過=絶対に融資を受けられない

という意味ではありません。

債務超過になった原因や、

  • 足元の業績

  • 今後の利益計画

  • 経営改善の進捗

  • 事業の将来性

などによって金融機関の判断は異なります。


とはいえ、純資産は会社が過去に積み上げてきた利益の結果でもあります。



7.最も重要なのは「返済できるか」

最終的に重要なのは、

借りたお金を返済できる利益とキャッシュを生み出せるか

です。

例えば、

税引後利益 500万円減価償却費 300万円

なら、単純化すれば、

500万円+300万円=800万円

程度のキャッシュ創出力があります。

一方で、

年間借入元本返済額 1,200万円

なら、

800万円-1,200万円=▲400万円

です。

もちろん実際のキャッシュフローは、

  • 売掛金

  • 在庫

  • 買掛金

  • 設備投資

  • 納税

などによって変わるため、これだけで判断することはできません。

しかし、

毎年生み出せるお金より、借入金返済額の方が大きい

という状態が続けば、預金は減っていきます。

これは銀行だけが確認すべき数字ではありません。

経営者自身が最も確認しておきたい数字です。


「黒字なのに融資が難しい会社」がある理由

ここまで見ると、

「黒字なら大丈夫」

とは限らないことが分かります。

例えば、

当期利益 1,000万円

でも、

  • 売掛金が急増している

  • 在庫が膨らんでいる

  • 借入金が多い

  • 年間返済額が1,500万円ある

  • 現預金がほとんどない

という会社なら、銀行としては慎重に確認する必要があります。

反対に、一時的な赤字でも、

  • 一過性の設備投資が原因

  • 不採算事業をすでに撤退済み

  • 足元の月次では黒字化している

  • 現預金を十分持っている

  • 今後の受注が具体的に見えている

のであれば、決算書だけでは分からない事情を説明できる可能性があります。

重要なのは、

良い数字だけを見せることではなく、悪い数字について合理的に説明できること

です。


融資を申し込む前に経営者が確認したい10項目

銀行に相談する前に、最低でも次の数字は確認しておきましょう。

  1. 売上高は3年間で増えているか、減っているか

  2. 営業利益は黒字か

  3. 粗利益率が悪化していないか

  4. 現預金はいくらあるか

  5. 売掛金が異常に増えていないか

  6. 在庫が異常に増えていないか

  7. 借入金残高はいくらか

  8. 年間元本返済額はいくらか

  9. 純資産はプラスか

  10. 直近の試算表では改善しているか

ここまで答えられれば、

「銀行にいくら借りられるでしょうか?」

という相談から、

「現在の返済能力から考えて、いくらの融資をどの期間で組むのが適切か」

という具体的な資金調達の検討に変えることができます。


決算が終わってから対策しても遅い

融資を予定している会社にとって重要なのは、

決算書が完成してから銀行対策を始めないこと

です。

決算が終わった後に、

「もっと利益を出しておけばよかった」

「在庫を整理しておけばよかった」

「この役員貸付金は何とかならなかったのか」

と思っても、既に確定した決算を融資のためだけに変えることはできません。

だからこそ、

  • 毎月試算表を作る

  • 利益予測をする

  • 現預金を確認する

  • 借入金返済額を確認する

  • 決算前に着地見込みを把握する

ことが重要です。

これは銀行のために決算書を作るという意味ではありません。

会社の経営状態を経営者自身が把握した結果として、銀行にも説明しやすい決算書になる

という順番が理想です。


銀行は決算書以外も見ている

最後に重要な点があります。

現在の融資審査は、

決算書だけですべてが決まるわけではありません。

財務情報だけでなく、

  • 経営者

  • 事業

  • 企業を取り巻く環境・関係者

  • 内部管理体制

  • 商流

  • 業務フロー

といった非財務情報も整理する仕組みになっています。

したがって、

「赤字だから絶対に借りられない」

「自己資本比率が○%なら必ず借りられる」

といった一律の基準で考えるべきではありません。

決算書は重要ですが、

数字+事業内容+将来の見通し

をセットで説明することが重要です。


6.FAQ

Q1.赤字決算だと銀行融資は受けられませんか?

必ずしもそうではありません。

赤字になった原因、過去からの推移、直近の業績、今後の事業計画、現預金、借入状況などを含めて総合的に判断されます。

一過性の損失なのか、本業そのものが継続的に赤字なのかでも意味は大きく異なります。

Q2.銀行は営業利益と経常利益のどちらを見ますか?

どちらも確認されると考えておいた方がよいでしょう。

営業利益は本業の収益力を見るうえで重要です。一方、経常利益では支払利息なども含めた通常の事業活動全体の収益性を見ることができます。

一つの利益だけを見るのではなく、売上総利益、営業利益、経常利益、当期利益まで流れで確認することが重要です。

Q3.債務超過だと融資は無理ですか?

債務超過は融資審査上、重要な確認事項になりますが、それだけで一律に融資不可と決まるわけではありません。

債務超過になった原因、足元の業績、事業の将来性、経営改善計画などによって判断は異なります。

個別の金融機関や保証制度によっても取扱いが異なるため、早めに相談することが重要です。

Q4.節税して利益を減らすと融資に影響しますか?

可能性はあります。

利益を減らせば税負担は小さくなる場合がありますが、同時に決算書上の収益力や純資産の積み上がりも小さくなります。

特に近い将来に融資を予定している場合には、

「税金をいくら減らせるか」だけではなく、「会社にいくら利益と現金を残すか」

という視点で決算を考える必要があります。

Q5.融資の相談はいつ銀行にすればいいですか?

資金がなくなる直前ではなく、できるだけ余裕がある段階で相談することをおすすめします。

資金繰り表を作り、

  • いつ

  • 何に

  • いくら必要なのか

  • どのように返済するのか

を説明できる状態にしておくと、金融機関とも具体的な相談がしやすくなります。


まとめ|銀行対策より先に「自社の数字」を理解する

銀行が決算書で確認する代表的なポイントは、

  1. 売上高の推移

  2. 営業利益など本業の収益力

  3. 現預金

  4. 売掛金・在庫

  5. 借入金

  6. 純資産

  7. 借入金の返済能力

です。

ただし、融資審査は特定の数字一つで決まるものではありません。

銀行が知りたいのは、

「この会社はこれからも利益とキャッシュを生み出し、貸したお金を返していけるのか」

です。

そのためには、融資を申し込む直前だけ決算書を見るのではなく、毎月、

損益計算書+貸借対照表+資金繰り

を確認する必要があります。

銀行に説明するために会社の数字を見るのではありません。

経営者自身が会社の数字を理解していれば、その結果として銀行にも会社の状況を説明できるようになります。

融資に強い会社とは、

「決算書の数字が完璧な会社」

ではなく、

自社の数字の良いところも悪いところも把握し、その理由と今後について説明できる会社

だと考えるとよいでしょう。


7.銀行に相談する前に、自社の返済能力を数字で確認してみませんか?

融資を検討するとき、

「銀行が貸してくれるか」

だけを考えるのでは不十分です。

本来確認すべきなのは、

「いくら借りれば資金繰りが安定し、その借入金を無理なく返済できるのか」

です。

いちご会計事務所では、税務申告だけでなく、

  • 月次決算・試算表の整備

  • 決算書分析

  • 資金繰り予測

  • 借入金返済計画

  • 予算・実績管理

  • 金融機関へ説明するための数字の整理

などを通じて、中小企業の経営者が数字を経営判断に使える体制づくりを支援しています。

「近いうちに融資を検討している」

「今の借入金が多いのか分からない」

「銀行に決算書をどう説明すればよいか分からない」

という場合には、融資申込みの直前ではなく、早い段階で自社の決算書と資金繰りを整理しておくことをおすすめします。

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