会社はいくら現金を持つべき?中小企業の適正な手元資金と「何か月分必要か」の考え方
- 2 時間前
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「会社には、いくら現金を残しておけば安心なのか」。
黒字経営でも、売掛金の回収が遅れたり、大口取引先を失ったり、税金や賞与の支払いが重なったりすれば、資金繰りは急速に悪化します。一方で、現金をためることだけを優先すると、本来行うべき設備投資や採用まで止まってしまいます。
この記事では、中小企業が持つべき手元資金について、単純な「月商○か月分」だけではなく、自社の支出や事業リスクから適正額を判断する方法を解説します。
結論:まずは「3か月分」、不確実性が高い会社は「6か月分」を一つの目安にする
結論からいえば、中小企業が確保する手元資金は、毎月必要となる資金の3か月分程度を一つの最低ラインとして検討し、事業の変動が大きい会社では6か月分程度まで厚くするという考え方が実務上は使いやすいでしょう。
ただし、「すべての会社が3か月分持つべき」という法律や公的な基準があるわけではありません。
必要な現金は、
売上の安定性
固定費の大きさ
売掛金の回収サイト
在庫の量
借入金の返済額
金融機関からの調達余力
大口取引先への依存度
によって大きく変わります。
したがって、月商だけで決めるのではなく、「売上が減っても何か月会社を維持できるか」という視点から考えることが重要です。
手元資金とは何か
ここでいう手元資金とは、基本的には会社がすぐ支払いに使える現金・預金を指します。
会社の貸借対照表に1億円の資産があっても、その大半が建物や機械、在庫、売掛金であれば、明日の給与支払いに使えるとは限りません。
経営の安全性を考える場合、重要なのは「資産がいくらあるか」よりも、
すぐに使えるお金がいくらあるか
です。
手元資金の厚みを見る代表的な指標に「手元流動性比率」があります。
計算式は、
現預金 ÷ 月商
です。
たとえば、年間売上高が1億2,000万円、現預金が3,000万円なら、
3,000万円 ÷ 1,000万円 = 3か月
となります。
つまり、現時点の現預金が月商の何か月分あるかを示す指標です。
なぜ会社は現金を厚めに持つ必要があるのか
利益が出ていても会社は倒産する
会社経営で特に注意したいのが、利益と現金は別物だという点です。
たとえば1,000万円の商品を販売して利益が計上されても、入金が3か月後なら、その間の給与や家賃、仕入代金は別の現金から支払わなければなりません。
そのため、
黒字=資金繰りが安全
とは限りません。
会社が事業を続けられるかどうかを最後に決めるのは、損益計算書上の利益ではなく、支払日に現金があるかどうかです。
売上減少への対応には時間が必要
売上が急減したからといって、翌月からすべての経費を減らせるわけではありません。
家賃、正社員の給与、リース料、借入金返済などは、売上が減ってもすぐにはなくなりません。
一定の手元資金を持っていれば、
「売上が減ったので、すぐ従業員を減らさなければならない」
という極端な経営判断を避け、事業を立て直す時間を確保できます。
非常時には融資をすぐ受けられるとは限らない
「現金がなくなったら銀行から借りればよい」と考えることにもリスクがあります。
融資には審査があり、会社の業績や金融環境によっては希望どおりに資金調達できない可能性があります。
特に、資金が完全に不足してから金融機関に相談するより、余裕がある段階から資金繰りを管理しておくことが重要です。
公的資料では「何か月分」とされているのか
会社が持つべき現預金について、一律の公的基準が存在するわけではありません。
ただし、参考になる公的資料はあります。
中小企業庁のBCPに関する資料では、災害などの緊急時に備え、月商1か月分程度の現金・預金を持つことが推奨されています。
また、中小企業白書では、新型コロナウイルス感染症の流行後、安定的な事業継続のために「3か月以上」の現預金が必要だと考える企業が増えたことも紹介されています。
そのため、月商1か月分は非常時への最低限の備えとして参考にはなりますが、通常の経営では、それだけで十分とは限りません。
適正な手元資金は「月商」より「毎月出ていくお金」で考える
よく使われるのが、
現預金=月商3か月分
という考え方です。
分かりやすい方法ではありますが、経営判断としては少し粗い指標です。
同じ月商3,000万円の会社でも、利益率や支出構造は大きく異なるからです。
たとえば、
会社A月商3,000万円毎月の支払い2,000万円
会社B月商3,000万円毎月の支払い2,800万円
なら、同じ9,000万円の現金を持っていても、その安全性は違います。
A社なら約4.5か月分ですが、B社なら約3.2か月分しかありません。
そのため、実際には、
必要手元資金 = 1か月当たりの最低必要支出 × 確保したい月数 + 臨時支出
という考え方の方が実態に合っています。
具体例:自社に必要な手元資金を計算してみる
次の会社を例に考えてみます。
毎月の支出 | 金額 |
給与・社会保険料 | 600万円 |
家賃 | 100万円 |
仕入・外注費 | 500万円 |
その他固定的経費 | 200万円 |
借入金返済 | 100万円 |
合計 | 1,500万円 |
この会社が「売上が落ちても3か月は対応できる状態」を作りたいなら、
1,500万円 × 3か月= 4,500万円
が一つの基準になります。
さらに半年以内に、
法人税・消費税 500万円
賞与 500万円
設備更新 300万円
が予定されているなら、単純に4,500万円あればよいとはいえません。
一定の余裕を含め、
4,500万円+近い将来の大型支出
まで見て資金計画を立てる必要があります。
「3か月」でよい会社と「6か月」持った方がよい会社
必要な現金は事業によって違います。
3か月程度から検討しやすい会社
たとえば、
毎月の売上が比較的安定している
顧客が分散している
在庫をほとんど持たない
売掛金の回収が早い
固定費が比較的小さい
金融機関からの調達余力がある
といった会社です。
もっとも、これは「3か月あれば必ず安全」という意味ではありません。
6か月程度まで厚くした方がよい会社
一方、
売上の季節変動が大きい
特定の取引先への依存度が高い
在庫を多く持つ
売掛金の回収期間が長い
人件費など固定費が大きい
借入金返済額が大きい
景気変動の影響を受けやすい
一度売上が落ちると回復まで時間がかかる
会社では、手元資金を厚めに持つ意味が大きくなります。
特に、売掛金の回収期間や在庫の保有期間が長い会社は、利益が出ていても資金が先に不足しやすいため注意が必要です。
借入金があっても現金を持ってよいのか
「借金があるのに銀行預金を持っているのは無駄ではないか」
という質問もよくあります。
必ずしもそうではありません。
たとえば、
借入金 5,000万円現預金 3,000万円
という会社があったとします。
3,000万円をすべて返済すれば借入金は2,000万円になりますが、会社の現金もほぼなくなります。
その直後に、
売上減少
大口取引先の倒産
税金の支払い
設備故障
などが起きると、資金繰りは一気に苦しくなります。
したがって、
借金があるから現金をゼロに近づける
という考え方は適切ではありません。
借入金利だけではなく、会社の資金繰りの安全性とのバランスで判断する必要があります。
現金は多ければ多いほどよいのか
一方で、現金を増やせば増やすほど経営が良くなるわけでもありません。
大切なのは、
とにかく現金をためることではなく、必要額を把握したうえで資金を配分すること
です。
必要以上の現預金を長期間寝かせれば、
生産性向上のための設備投資
採用・人材育成
IT化
新規事業
借入金返済
などに資金を使う機会を逃すことがあります。
「現金を持つこと」と「成長に投資すること」は、どちらか一方を選ぶものではありません。
手元資金を決めるときに確認したい7項目
経営者は最低でも次の7項目を確認するとよいでしょう。
現預金はいくらあるか
毎月必ず出ていく支出はいくらか
売上がゼロになった場合、何か月耐えられるか
売掛金の回収まで何日かかるか
今後6~12か月の税金・賞与・設備投資はいくらか
借入金の毎月返済額はいくらか
追加融資を受けられる余力がどの程度あるか
この数字が分かれば、「現金が多い・少ない」という感覚的な議論から、
あと何万円必要なのか
という具体的な経営判断に変わります。
月次の資金繰り表を作る
適正現金を判断するうえで、最も有効なのが資金繰り表です。
最低でも今後6か月、できれば12か月について、
期首現金+入金予定-支払予定=期末現金
を月別に並べます。
重要なのは平均額ではありません。
最も現金残高が少なくなる月に、いくら残っているか
を見ることです。
年間を通じて利益が出る会社でも、納税や賞与、仕入れが重なる月だけ現金が不足することがあります。
資金繰り表を作れば、そうした不足を事前に把握できます。
手元資金が不足している会社が最初にすべきこと
現金が少ない場合、単純に「もっと売上を増やそう」と考えるだけでは不十分です。
まず、
売掛金の回収を早められないか
不要在庫を減らせないか
支払条件を見直せないか
不要な固定費がないか
借入金返済条件に無理がないか
必要であれば早めに金融機関と相談できないか
を確認します。
特に融資は、資金が完全に尽きてからではなく、余裕があるうちに相談することが重要です。
適正な手元資金は「安心して経営判断できる期間」で考える
手元資金の目的は、預金残高を大きく見せることではありません。
本当の目的は、
予想外の事態が起きても、慌てて不利な経営判断をしなくて済む時間を確保すること
です。
現金が十分にあれば、
「来月払えないから、とにかく受注する」
のではなく、
「利益の出る仕事を選ぶ」
ことができます。
採用や設備投資についても、短期的な資金繰りだけに振り回されず判断できます。
したがって適正現預金は、
「一般的に何か月か」
だけでなく、
自社が経営を立て直すために何か月必要なのか
という視点で決めることが重要です。
まとめ
会社が持つべき現金に、すべての企業に共通する正解はありません。
ただし、中小企業ではまず、毎月必要となる資金の3か月分程度を一つの検討ラインとし、売上変動が大きい会社や固定費の重い会社では6か月分程度まで厚くするという考え方が実務上は使いやすいでしょう。
重要なのは、
月商だけで判断しない
毎月の実際の支出額を見る
税金や賞与などの大型支出も含める
売掛金・在庫・借入返済まで確認する
6~12か月の資金繰り表を作る
ことです。
「現預金残高○○万円」だけを見ても、その会社の安全性は分かりません。
現在の現金で会社が何か月生き残れるのか。
この数字を経営者自身が把握できる状態を作ることが、資金繰り管理の第一歩です。
6.自社に必要な現預金額を把握できていますか?
「預金はあるが、本当に十分なのか分からない」「利益は出ているのに、いつも資金繰りに余裕がない」という会社では、決算書だけでなく、月々の入出金まで含めた資金繰りの確認が必要です。
当事務所では、月次決算や資金繰り表をもとに、今後の納税・借入返済・設備投資なども含めた資金計画についてご相談いただけます。
自社に必要な手元資金を具体的に把握したい場合は、お気軽にご相談ください。





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