その節税、通るかより“説明できるか”—社長が押さえる4つの論点
- 1 日前
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世の中には「今すぐ使える節税テクニック」が数多く出回っています。動画やSNSで見かけた内容を、社長が自社に当てはめたくなる気持ちはよく分かります。実際、申告書は提出すれば基本的に“受理”され、提出時点で「その節税はダメです」と止められることは通常ありません。問題になるのはその後の税務調査局面で、合理的に説明できるかです。
ここで重要なのは、節税を「小技」として扱うのではなく、会計・税務の要件を満たす“設計”として整えることです。設計とは、社内ルール、意思決定の記録、数字の根拠が揃っている状態を指します。これが弱いと、節税の効果以上に、調査対応や修正、資金繰りへの影響が重くのしかかります。
1. 決算の未払計上は「債務の確定」が前提
「支払っていなくても決算で経費にできる」という話は、半分正しく、半分危険です。国税庁の整理では、費用計上(必要経費・損金)は、期末時点で債務が確定しているかが判断軸になります。一般的には、①原因事実が期中に発生し、②支払義務が成立し、③金額を合理的に見積もれること、がポイントです。(国税庁)
実務上の着眼点
給与の締め日以降の期間対応:勤務実態があり、支給が制度として確定しているなら、未払計上の対象になり得ます。
一方で「決算直前に“予定”で作った賞与」などは、決議・算定根拠・支給条件が弱いと否認リスクが上がります。
よくある事例
決算数日前に「利益が出そうだから賞与を未払で入れておいて」と処理する。→ 税務調査で問われるのは「いつ・誰が・どの根拠で・いくら支払うと決めたか」です。ここが薄いと、否認される可能性が高くなります。
2. 旅費規程は「作成」より「運用」で決まる
出張日当や宿泊手当は、制度としては非常に有効です。ただし、税務は形式よりも実質を見ます。国税庁も、出張旅費・宿泊費・日当等について、通常必要と認められる範囲が論点になる旨を示しています。(国税庁)
調査で見られるポイント
出張の業務内容(訪問先、目的、業務上の必要性)
役職間のバランス(社長だけ極端に高い、など)
同業他社の相場感から見て「通常必要」と言えるか
強い会社の共通点(運用の工夫)出張申請書やスケジュールに、
訪問先
目的
成果メモ(1行で十分)を残しています。
現地の領収書の量などより、その経費を使うに至った業務性があるかがどうかがみられます。
3. 役員社宅は「○割落ちる」ではなく「賃貸料相当額」が核心
社宅は節税テーマとして人気ですが、誤解も多い分野です。役員社宅は、一定の計算方法に基づく賃貸料相当額を役員から受け取っていれば、原則として給与課税を回避できます。賃貸料相当額は床面積等を用いて算定する旨が整理されています。(国税庁)
落とし穴(典型例)
役員から家賃相当額を徴収していない(=給与認定リスク)
物件が「豪華社宅」と判断される(=算式ではなく実勢家賃ベースで否認リスク)
契約関係(会社契約か個人契約か)や社内規程が曖昧
実務の結論社宅は“割合”の話ではなく、計算・徴収・規程・記録の4点セットで管理するものです。ここが揃うと、節税は「安定した制度」になります。
4. 貸倒損失は「整理」だが、要件を満たす必要がある
売掛金が長期滞留している会社は少なくありません。回収見込みが薄い債権を放置すると、決算書も資金管理も歪みます。税務上、貸倒損失は、相手先の資産状況・支払能力等から全額回収不能が明らかな場合など、一定の要件のもとで損金算入が認められます。(国税庁)
整えておきたい“最低限の証跡”
督促履歴(メール・書面・チャットでも可)
相手先状況のメモ(倒産、廃業、連絡不能等)
社内での回収方針の決裁(小さくてよい)
これだけで、判断がブレにくくなり、税務説明力も上がります。
結論:節税の成否は「手法」より「説明可能性」で決まる
私は、節税情報そのものを否定しません。むしろ、使えるものは使うべきです。ただし、社長が投下すべき労力は、手法探しよりも、自社の制度設計と説明可能性の整備です。
ルール(規程)を作る
意思決定を残す(議事録・決裁)
数字の根拠を整える(計算・算定資料)
実態をしっかり見極めて、事業性、経費性があるかを判断する
この3点が揃えば、節税は“運任せ”ではなく、経営管理の一部になります。




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