内部留保とは?「会社に現金が貯まっている」は間違い|中小企業の社長が知るべき利益剰余金の見方
- 2 時間前
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「会社には内部留保が3,000万円あるから、お金には余裕がある」
このように考えている社長は注意が必要です。
内部留保は、一般に貸借対照表の「利益剰余金」と結び付けて説明されます。しかし、利益剰余金が3,000万円あるからといって、銀行口座に3,000万円あるとは限りません。
その利益は、すでに設備や在庫、売掛金などに姿を変えているかもしれないからです。
この記事では、内部留保とは何か、なぜ現金と一致しないのか、そして中小企業の社長が本当に見るべき数字について解説します。
結論|内部留保で重要なのは「いくらあるか」より「何に変わっているか」
最初に結論です。
内部留保について経営者が押さえておきたいポイントは、次の4つです。
内部留保は、一般に利益剰余金を中心に説明される
内部留保と現預金は同じではない
利益剰余金を積み上げることは、会社の財務基盤の強化につながる
会社の支払いを支えるのは、最終的には「使える現金」である
つまり、
「内部留保が多い会社=現金をたくさん持っている会社」ではありません。
社長が確認すべきなのは、
「利益剰余金はいくらあるか」
だけではなく、
「これまで稼いだ利益が、今どの資産に変わっているのか」
です。
内部留保とは何か
「内部留保」という言葉はよく使われますが、貸借対照表に「内部留保」という勘定科目があるわけではありません。
一般的には、会社がこれまで稼いできた利益のうち、配当などで社外へ出さず、会社の中に蓄積してきた部分を指す言葉として使われています。
中小企業の決算書を見る場合には、貸借対照表の純資産の部にある「利益剰余金」を中心に考えると分かりやすいでしょう。
利益剰余金とは簡単に言えば、
会社が設立されてから現在までに積み上げてきた利益の蓄積
です。
例えば、毎年500万円ずつ利益を残すことができれば、単純化すると5年間で2,500万円の利益が社内に積み上がります。
これが会社の財務体質を強くしていきます。
ただし、ここで大きな勘違いが起きます。
それが、
「利益剰余金=会社に残っている現金」
と考えてしまうことです。
最大の誤解|内部留保=現金ではない
ここが一番重要です。
例えば、次のような貸借対照表の会社があったとします。
項目 | 金額 |
現預金 | 500万円 |
売掛金 | 1,500万円 |
在庫 | 1,000万円 |
機械・設備など | 3,000万円 |
その他の資産 | 1,000万円 |
資産合計 | 7,000万円 |
そして純資産の中に、
利益剰余金3,000万円
があったとします。
この会社を見て、
「内部留保が3,000万円あるから、3,000万円自由に使える」
と考えるのは間違いです。
実際の現預金は500万円しかありません。
これまで稼いできた利益が、
機械や設備
建物
商品や在庫
売掛金
などに姿を変えているからです。
つまり、
利益剰余金は「これまで利益をどれだけ積み上げてきたか」を表す数字。
一方、
現預金は「今、支払いに使えるお金がいくらあるか」を表す数字。
この2つはまったく別のものです。
なぜ内部留保を増やすことが重要なのか
「内部留保が現金ではないなら、増やす意味はないのでは?」
と思うかもしれません。
もちろん、そんなことはありません。
中小企業にとって、利益を出して利益剰余金を積み上げていくことは非常に重要です。
1.会社の財務体質が強くなる
利益を出して利益剰余金が増えると、原則として純資産も増えていきます。
例えば、
資産5,000万円負債4,000万円純資産1,000万円
という会社が、利益を積み上げて、
資産7,000万円負債4,000万円純資産3,000万円
になったとします。
負債に対して純資産が厚くなり、会社の財務体質は強くなっています。
借入だけで会社を大きくしてきたのではなく、
自社で稼いだ利益によって会社を強くしてきた
ことが貸借対照表に表れているわけです。
2.赤字に耐えられる会社になる
会社は毎年必ず黒字になるとは限りません。
経営をしていれば、
大口取引先との取引終了
売上の急減
原材料価格の上昇
人件費の増加
取引先の倒産
災害
市場環境の急激な変化
など、予想していなかったことが起こります。
こうしたとき、利益剰余金が十分に積み上がっていれば、一時的な赤字を吸収する余力があります。
一方で、過去の赤字によって利益剰余金が大きくマイナスになっている会社では、さらに赤字が続くと債務超過に近づいていきます。
内部留保は、
会社の「体力」を作るもの
と考えると分かりやすいでしょう。
3.将来への投資がしやすくなる
利益を継続して積み上げることができれば、将来の投資についても選択肢が増えます。
例えば、
新しい機械を導入する
店舗を出す
人を採用する
社員教育にお金を使う
DXに投資する
新しい商品・サービスを開発する
といった経営判断です。
会社の財務基盤が弱い状態では、
「投資したいけれど、お金が怖くて使えない」
という状態になりがちです。
利益を蓄積して財務体質を強くしておくことで、必要なときに経営判断をしやすくなります。
内部留保が多ければ借金は不要なのか
ここも誤解されやすいところです。
「内部留保が十分あるなら、借入はしない方がいい」
とは限りません。
例えば、
利益剰余金 5,000万円現預金 1,000万円
という会社が、
3,000万円の設備投資
を予定しているとします。
利益剰余金だけを見れば、5,000万円あります。
「3,000万円くらいなら自己資金で払えるだろう」
と思うかもしれません。
しかし、現預金は1,000万円しかありません。
そもそも3,000万円の現金を持っていないわけです。
仮に現預金が4,000万円あったとしても、そのうち3,000万円を設備投資に使ってしまえば、残る現金は1,000万円です。
その後に、
給料
仕入代金
家賃
税金
社会保険料
借入金の返済
などを支払う必要があります。
設備を買った直後に売上が落ちれば、一気に資金繰りが苦しくなるかもしれません。
重要なのは、
自己資本が厚いことと、手元資金が十分あることを分けて考えること
です。
財務体質が良い会社であっても、必要に応じて銀行借入を利用し、一定の現預金を確保したまま投資するという選択肢があります。
借入金があること自体が悪いわけではありません。
問題なのは、
会社の返済能力を超えて借りること
です。
内部留保のデメリットは「貯めること」ではない
「企業は内部留保を貯め込みすぎている」
という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
ただ、中小企業の場合、利益を出して利益剰余金が増えていくこと自体を悪いことと考える必要はありません。
むしろ、十分な利益を蓄積できていない中小企業は少なくありません。
注意したいのは、
会社にお金を残すこと自体ではなく、そのお金をどう使うかを考えていないこと
です。
例えば、多額の現預金があるにもかかわらず、
古い設備を使い続けて生産性が上がらない
人材採用を控え続ける
社員教育を行わない
将来の新規事業に投資しない
必要なシステム投資を行わない
という状態であれば、本当にそれが会社にとって最善なのかを考える必要があります。
一方で、すべてを投資に回して現金をほとんど残さない経営も危険です。
中小企業の社長は、
「守るお金」と「使うお金」のバランス
を考える必要があります。
「内部留保はいくら必要か」に絶対的な答えはない
では、内部留保はいくらあれば十分なのでしょうか。
結論として、
すべての中小企業に共通する絶対的な金額や比率はありません。
必要な財務余力は会社によって大きく違います。
例えば、
売上が安定しているか
固定費はいくらか
借入金の年間返済額はいくらか
売掛金の回収まで何か月かかるか
在庫をどれくらい持つ必要があるか
今後大きな設備投資を予定しているか
金融機関から追加融資を受けられるか
などによって必要な資金は変わります。
そのため、
「内部留保が売上の○%あれば安心」
「利益剰余金が○千万円あれば安全」
といった数字だけで判断するのはおすすめしません。
それよりも経営者が確認しておきたいのは、
もし売上が急に減ったら、現在の現預金で何か月会社を維持できるのか
ということです。
この視点は、会社を守るうえで非常に重要です。
社長が見るべきなのは「利益剰余金」と「現預金」の両方
貸借対照表を見るときは、利益剰余金だけを見るのではなく、少なくとも次の項目を前年と比較してみてください。
項目 | 確認するポイント |
現預金 | 実際に使えるお金が増えているか |
売掛金 | まだ回収していないお金が増えすぎていないか |
在庫 | お金が商品に寝ていないか |
固定資産 | 設備投資にいくら使ったか |
借入金 | 借金が増えているか、減っているか |
純資産 | 会社の財務体質が強くなっているか |
利益剰余金 | 利益を継続して積み上げられているか |
例えば、
利益剰余金2,000万円 → 3,000万円
となっていれば、一見すると順調に見えます。
しかし、
現預金2,000万円 → 700万円
在庫500万円 → 1,800万円
となっていたらどうでしょうか。
利益は積み上がっている一方で、
現金が在庫に姿を変えている
可能性があります。
この会社で本当に確認すべきなのは、
「利益剰余金が1,000万円増えた」
という事実だけではありません。
「なぜ現預金が1,300万円減ったのか」
です。
例えば、
「売上が増えると思って大量に仕入れたけれど、商品が売れていない」
のであれば注意が必要です。
決算書を見るときには、一つの数字だけを見るのではなく、
数字がなぜ動いたのか
まで確認することが重要です。
利益を出すだけでなく「利益を現金として残す」
中小企業の経営では、
売上↓利益↓内部留保
だけを追いかけても十分ではありません。
本当に財務が強い会社は、
利益を出す↓税金を払う↓借入金を返済する↓必要な設備投資をする↓それでも現金が残る
という状態を継続しています。
ここで重要なのが、
「利益」と「現金」は同じではない
ということです。
例えば、1,000万円の利益が出たとしても、その間に、
売掛金が増えた
在庫が増えた
設備を購入した
借入金を返済した
といったことがあれば、銀行預金はほとんど増えていないことがあります。
反対に、利益がそれほど出ていなくても、新たな借入をすれば現預金は増えます。
そのため、社長が会社の数字を見るときには、
損益計算書+貸借対照表+資金繰り
をセットで確認することが大切です。
まとめ|内部留保を見るときは「現金」と切り分ける
内部留保について重要なポイントを整理します。
内部留保は一般に利益剰余金を中心に考える
利益剰余金は、これまで積み上げてきた利益を表す
内部留保と現預金は同じではない
利益は設備、在庫、売掛金などに姿を変えている場合がある
利益剰余金を積み上げることは財務基盤の強化につながる
会社の日々の支払いを支えるのは現預金である
利益剰余金だけでなく、現預金、借入金、売掛金、在庫も合わせて見る
内部留保が3,000万円あるから安心。
借入金があるから危険。
現預金が多いから安心。
このように一つの数字だけで会社を判断すると、経営の実態を見誤ります。
重要なのは、
会社がこれまで稼いできた利益が現在どこにあり、それがこれからどのように現金を生み出していくのか
を見ることです。
貸借対照表は、税務署や銀行に提出するためだけの書類ではありません。
会社のお金が今どこにあるのかを示す、
経営の地図
として使ってみてください。




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