1,000万円のベンツで300万円の節税は、本当に「得」なのか
- tomohiro adachi
- 1月26日
- 読了時間: 3分

顧問先の社長様とお話ししていると、決算前によく出る話題があります。
「利益が出そうだから、節税のためにベンツ(高級車)でも買おうか」というお話です。
確かに、経営者として成功し、その証として良い車に乗りたいという夢を持つことは素晴らしいことです。
また、一定の条件(例えば4年落ちの中古車など)を満たせば、購入費用を単年度で経費に落としやすいという税務上の仕組みがあるのも事実です。 しかし、私は創業してまだ日が浅かったり、資金潤沢とは言えない段階での「節税目的の高級車購入」には、待ったをかけるようにしています。
それはなぜか。公認会計士・税理士としての視点、そして経営システムの視点から、少し厳しいことを言うようですが、以下の理由があるからです。
1.「節税」はお金を増やすことではない
まず基本的なことですが、経費で落とすということは、税金は減りますが、それ以上にお金(キャッシュ)が出ていくということです。
仮に1,000万円の車を買って、税金が約300万円安くなったとします。
しかし、手元からは1,000万円の現金が出ていくのです。差し引き700万円のキャッシュが会社から消えることになります。 以前のコラムでも書きましたが、「利益は幻想、キャッシュは現実」です。
経営において最も重要なのは、会社を存続させるための現金です。節税という言葉に踊らされて、虎の子の現金を減らしてしまうことは、経営の安全性を損なう行為になりかねません。
2.未来への投資機会を失う(機会損失)
ドラッカーは、利益の役割の一つとして「未来への投資」を挙げています。
1,000万円の資金があれば何ができるでしょうか? 新しい機械を導入して生産性を上げることができるかもしれません。優秀な人材を採用して営業力を強化できるかもしれません。あるいは、広告宣伝にお金を使って新たな顧客を獲得できるかもしれません。
これらはすべて、将来の「売上」と「利益」を生み出すための「投資」です。 一方で、高級車は利益を生み出しません。むしろ維持費というコストがかかります。
成長段階にある企業にとって、資金は事業を拡大させるための燃料です。それを利益を生まない資産に変えてしまうことは、将来得られるはずだった利益を捨てる「機会損失」に他ならないのです。
3.経営環境の変化への対応
創業して数年、たまたま業績が良い時期があるかもしれません。しかし、経営環境は常に変化します。 ある特定の大口取引先に依存していたり、一時的なブームに乗っているだけだったりする場合、売上が急減するリスクは常にあります。 松下幸之助氏は「ダム式経営」、つまり余裕を持った経営の重要性を説かれました。 売上が落ちた時、高級車のローンや維持費は重くのしかかります。「苦しくなったら売ればいい」と仰る方もいますが、人間には「見栄」や「プライド」があります。一度手にした成功の証を手放すこと、あるいは取引先に「あそこは経営が苦しいのか」と思われることを恐れ、倒産寸前まで手放せない経営者を私は何人も見てきました。
経営者の皆様へ
利益が出ているというのは、お客様に満足を提供できている証拠であり、素晴らしいことです。
しかし、その利益を安易な節税(消費)に回すのではなく、まずは盤石な財務基盤を作るため、そして次の成長のための投資に回していただきたいのです。
本当の「経営パワー」とは、乗っている車の値段ではなく、危機に耐えうる現預金の厚みと、収益を生み出し続ける強い事業構造(経営システム)に宿るものだと、私は考えております。
まずは事業を盤石にし、誰が見ても文句のないくらい会社を大きくしてから、ご褒美として最高の車を買う。その順番を間違えないでいただきたいと、自戒を込めて思うのです。









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