自己資本比率は“税金”じゃなく“生存率”の話
- 5 日前
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社長さんと話していると、たまにこういうことを質問されます。
「自己資本比率って、毎年法人税の税引後純利益を積んであがっていくわけですよね。でも利益がでても低い方が“税金的に得”じゃないですか?。どうして、そんなに税金払ってでも多く利益を出して純資産を増やすべきなんでしょうか?」
気持ちは分かります。利益が出れば税金が出る。だから利益を消したくなる。
でも、会計士・税理士として、そして中小企業の現場を長く見てきた人間として言うと——税金を減らして会社が弱くなるのは本末転倒です。
しかも現実はシビアで、赤字法人は全国で約65%という統計も出ています。つまり、世の中の会社は「利益を出す」ことすら難しい。
だからこそ、利益を残して自己資本を積む会社は、それだけで世間では強い会社なのです。
そして、自己資本比率が高い会社とは、それだけ連続して利益を出し続けて、借金に頼らずでも生きていける会社であるという証明なのです。
実は税金を減らすために利益をあえて低くする会社よりも、税金を払ってでも、多く利益を積んでいくことを目指したほうが、将来はいろいろと楽になります。
今日はそういう自己資本比率を高める意味について、書いてみようと思います。
まずは自己資本比率って、結局なに?
ざっくり言うと、
借金(他人資本)で回してる会社か
自前のお金(自己資本)で回せる会社か
を見る指標です。極端な例でいきますと、
資産が1億円
借入が9,000万円
純資産が1,000万円
このとき自己資本比率は10%。言い換えると、“会社の体力の9割が借金頼み”です。景気が悪くなって銀行の態度が変わった瞬間、資金繰りは一気に詰まります。
ちなみに日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」(情報通信業の例)を見ると、自己資本比率の中央値は14.4%。黒字かつ自己資本プラス企業でも平均は33.5%です。つまり、30%は“現場感としても一つの強さの目安”になりやすい数字だと私は見ています。
ありがちな誤解:「借金返せば比率上がる」は危ない
自己資本比率だけ見れば、借金を返すと上がります。でも、借金返済で現金が減って、運転資金が痩せたら意味がない。
私がよく見る自己資本比率を気にしすぎて、現金が減らして翌期以降困るパターンはこれです。
利益が出たので前倒しで「借金返そう」でキャッシュが減る ↓
翌期以降、売上が少し落ち続け、利益が出なくなってくる ↓
支払いが回らず、追加融資のお願い ↓
銀行「決算での利益が少ないですね」と返済原資があるのか疑われて言われて、融資されずに詰む
社長はP/L(損益)で安心しがちですが、会社を倒すのはキャッシュです。ここを外すと、ほんとに危ない。
税金をゼロに近づけるほど、自己資本は増えない
税金って「利益が出た結果」払うものです。税金が嫌で利益を消すと、税金は減るけど、内部留保(=自己資本の源泉)も減る。
そして不思議なことに、節税意識が強く節税商品などで利益を圧縮する会社ほど資金繰りが苦しいのです。
当たり前の話ですが、利益を圧縮するためには経費を多くする必要があります。そしてその経費はキャッシュアウトと伴います。そうすると税金は少なくなったが、キャッシュは減っているわけですから、その分資金繰りはきつくなりますよね。
なので、節税をせずに利益を残している会社は、税金を払っても資金が残る。現実はシンプルです。
ではどうすれば、自己資本比率を高めて、キャッシュリッチな会社になれるでしょうか?
① まずゴールを決める(ここが9割)
「うちは自己資本比率を、まず20%、次に30%」みたいに目的地を決める。ゴールがないと、決算前の“税金怖い病”に毎年負けます。
② 「税引後利益を残す」ルールを作る
おすすめは単純で、
税引後利益のうち「最低○%は会社に残す」
役員報酬・賞与・設備投資はその枠内で考える
これだけで、会社の体力は数年で変わります。
③ 設備投資は“節税目的”ではなく“事業発展目的”で
投資そのものは否定しません。むしろ必要です。ただし「税金が減るから買う」は危険で、事業発展に寄与する目的のものに寄せるべきです。そのうえで減価償却や租税特別措置法などの減税策を利用すると考えるべきです。節税ありきではいけません。
自己資本比率は、社長の“覚悟”が数字になったもの
私は、自己資本比率は「会社を潰さない」という社長の意思が、B/Sに刻まれたものだと思っています。派手さはない。SNS映えもしない。でも、いざというときに会社と社員を守るのは、だいたいこの数字です。
もし今、自己資本比率が10%前後なら、責める話ではなくて「伸びしろが大きい」ということ。次の決算からでいいので、“税金の最小化”ではなく、“体力の最大化”に一回だけ舵を切ってみてください。会社の景色が変わります。





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