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銀行に嫌われる社長、信頼される社長

  • 1月26日
  • 読了時間: 4分

資金繰りの相談に乗っていると、結局のところ話はいつも「銀行」との関係に戻ってきます。中小企業経営において、資金は血液です。血液が止まれば倒れます。だからこそ「雨が降る前に傘を借りろ」という言葉が、これほど実務的に効いてくるのだと思います。

先日、ある金融機関の方と話す機会があり、「銀行から嫌われる社長、応援したくなる社長」の違いが話題になりました。興味深かったのは、決算書の点数の話より先に、「人としてどう振る舞うか」が出てきたことです。融資は制度であり商品でもありますが、最後にボタンを押すのはやはり人間です。仮に今後、AI審査が進んでも、厳しい局面での“追加のひと押し”は、担当者や支店長の腹の決まり方で変わります。

では、銀行から応援される社長の条件は何か。私なりに、現場で見てきたことも含めて整理してみます(自戒も込めて、です)。

1.「悪い知らせ」を一番に持ってくる

業績が悪化したときに、社長がやりがちなのが「しばらく様子を見る」です。気持ちは分かります。私も、嫌な報告は先送りしたくなる人間です。しかし、銀行に対してこれをやると、後で必ず重くなります。

資金繰りが厳しくなってから慌てて相談に行くと、銀行側はどう見ても“火事の後の放水”になります。逆に、まだ余裕がある段階で「来月から受注が落ちそうです。対策はこう考えています」と先に言える社長は強い。銀行は「この人は現実を見ている」「逃げない」と判断しやすくなります。結局、信頼とは“報告の速さ”で積み上がる部分が大きいのです。


2.「借りてやってる」ではなく「一緒に勝ちたい」

銀行員の方が苦笑いしながら言っていたのが、高圧的な態度の社長ほど、いざという時に支援が薄くなる、という話でした。もちろん理屈の上では、融資は取引です。金利も払っています。しかし、銀行が出しているのは“誰かの預金”です。そして、貸した瞬間から銀行もリスクを背負います。

私が好きな問いかけがあります。「無条件で1,000万円を貸してくれる友人が何人いますか?」と。銀行は友人ではありませんが、社長の事業に“賭けてくれるパートナー”です。だから、面談で大事なのは上手い言い回しより、感謝と敬意と、そして「この資金でこう勝ちにいきます」という腹の据わった説明です。そこに人は動きます。


3.数字を“丸投げ”しない

「数字のことは税理士に聞いてください」――これは銀行員が最も困る言葉のひとつだそうです。専門家に任せるのは良いのですが、任せた結果として「社長が自社の状況を語れない」状態になっていると、信用は一気に落ちます。

社長は、細かい会計処理を暗記する必要はありません。ただ、最低限の“物語”は自分の言葉で語るべきです。たとえば、

  • 今期の増減の理由(何が伸び、何が落ちたか)

  • その原因が一過性か構造的か

  • 手を打っていること(やめたこと/始めたこと)

  • 来期の見通しと、資金の使い道このあたりを、A4一枚でも良いので整理して話せる社長は強い。銀行は決算書だけでなく「社長の解像度」を見ています。


4.公私の線を引く

赤字なのに役員報酬が高すぎる、資金が厳しいのに交際費が減らない。こうした“公私混同”は、数字以上に印象が悪いです。なぜなら「この社長は、会社を守る気があるのか」という疑念に直結するからです。銀行は、返済原資の議論の前に、経営の姿勢を見ています。姿勢が疑われた瞬間、条件は厳しくなります。


5.結局は「人間力」が財務を強くする

ここまで書くと、特別なテクニックは一つもありません。誠実であること、謙虚であること、現実を直視して説明できること。そして責任を引き受けること。つまり「経営者としての人間力」そのものです。

財務とは、数字の世界に見えて、実は“信頼の世界”です。信頼があれば、時間が買えます。時間が買えれば、手が打てます。手が打てれば、業績は戻せます。逆に信頼を失うと、時間が奪われ、選択肢が減り、最後は追い込まれます。私は、これを何度も見てきました。

資金調達は、決算書の点数勝負である前に、「この社長なら一緒に雨の中を歩ける」と思ってもらえるかの勝負です。ピンチの時こそ本性が出ます。だからこそ、平時の小さな約束――連絡を返す、時間を守る、悪い情報を先に出す――そういう当たり前の積み重ねが、最強の財務戦略になります。

私も、まだまだ修行中です。自分に言い聞かせる意味も込めて、今月はこの話を書いてみました。


いちご会計事務所 所長公認会計士・税理士 足立知弘

 
 
 

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