粗利益率を1%改善すると利益はいくら増える?中小企業の利益改善を具体例で解説

粗利益率を1%改善すると利益はいくら増える?中小企業の利益改善を具体例で解説
「売上をもっと増やさないと利益は増えない」
そう考えている経営者は多いかもしれません。
しかし、利益を増やす方法は売上を増やすことだけではありません。
例えば、年間売上1億円の会社であれば、粗利益率を1%改善するだけで、単純計算では年間100万円の粗利益改善につながります。
売上を増やさなくてもです。
この記事では、粗利益率1%の改善が会社の利益にどれくらい影響するのか、具体的な数字を使って解説します。
結論|売上1億円なら粗利益率1%の改善で年間100万円変わる
最初に結論です。
売上高が変わらず、その他の条件も同じとすると、
粗利益率が1ポイント改善すれば、「売上高×1%」だけ粗利益額が増えます。
例えば、
年間売上1億円なら、
1億円 × 1% = 100万円
です。
売上規模別にすると次のようになります。
年間売上高 | 粗利益率1ポイント改善による粗利益増加額 |
3,000万円 | 30万円 |
5,000万円 | 50万円 |
1億円 | 100万円 |
2億円 | 200万円 |
3億円 | 300万円 |
5億円 | 500万円 |
たった1%と思うかもしれません。
しかし、売上3億円の会社なら年間300万円です。
5億円なら500万円です。
しかもこれは、追加で売上をつくらずに改善できる可能性があります。
中小企業の利益改善では、
「売上を何%増やすか」だけでなく「粗利益率を何ポイント改善できるか」
を見ることが非常に重要です。
そもそも粗利益率とは?
粗利益とは、簡単にいえば、
商品・サービスを販売して、直接かかった原価を差し引いた後に残る利益
です。
一般的には、
売上高-売上原価=売上総利益(粗利益)
となります。
そして粗利益率は、
粗利益 ÷ 売上高 × 100
で計算します。
例えば、
売上高 1億円売上原価 7,000万円
なら、
粗利益は、
1億円-7,000万円=3,000万円
です。
粗利益率は、
3,000万円 ÷ 1億円=30%
となります。
この3,000万円の粗利益から、
給与
家賃
広告費
水道光熱費
通信費
保険料
その他の販売管理費
などを支払います。
つまり、
会社が利益を出せるかどうかは、まず粗利益をどれだけ確保できるかに大きく左右されます。
粗利益率30%から31%になると何が変わる?
具体例を見てみます。
年間売上1億円の会社で、
粗利益率30%
だったとします。
この場合、
粗利益は、
1億円 × 30%=3,000万円
です。
これを1ポイント改善して、
粗利益率31%
にすると、
1億円 × 31%=3,100万円
になります。
つまり、
年間100万円の粗利益改善
です。
固定費が変わらなければ、この100万円は原則として営業利益の改善につながります。
例えば、
改善前
売上高 1億円粗利益 3,000万円固定費 2,700万円営業利益 300万円
だった会社が、
改善後
売上高 1億円粗利益 3,100万円固定費 2,700万円営業利益 400万円
となれば、
営業利益は、
300万円 → 400万円
です。
増加率で見ると、
約33%増
になります。
粗利益率は、
30% → 31%
とわずか1ポイントしか変わっていません。
しかし営業利益は、
300万円 → 400万円
と大きく変わります。
これが、粗利益率改善の重要なところです。
「1%改善」ではなく「1ポイント改善」
ここは少し注意が必要です。
例えば、
粗利益率30% → 31%
になった場合、
この記事では分かりやすく「1%改善」と表現していますが、厳密には、
1ポイント改善
です。
30%の1%増加なら、
30% × 1.01=30.3%
になります。
一方、
30% → 31%
なら、
1ポイントの改善です。
経営会議などで数字を比較する場合には、この違いを理解しておくとよいでしょう。
この記事では検索上の分かりやすさから「粗利益率1%改善」という表現を使いますが、計算例は原則として1ポイント改善として説明します。
なぜ粗利益率1%の改善がこれほど重要なのか
粗利益率を改善すると、
その改善分が固定費を増やさない限り、利益に直接反映されやすいからです。
先ほどの会社で、
年間100万円利益を増やしたい
とします。
粗利益率を1ポイント改善できれば、
年間100万円改善できます。
では、売上増加だけで100万円の利益をつくろうとするとどうでしょうか。
粗利益率30%なら、
100万円 ÷ 30%
=約333万円
の追加売上が必要です。
つまり、
粗利益率1ポイントの改善と同じ100万円の粗利益を増やすためには、
約333万円の追加売上
が必要になります。
さらに売上を増やせば、
営業活動
配送
人員
在庫
売掛金
運転資金
なども増える可能性があります。
そのため、
「利益を100万円増やしたいから売上を333万円増やそう」
より、
「今ある売上の粗利益率を1ポイント改善できないか」
を考えた方が効率的なケースがあります。
粗利益率を1%改善する方法① 値上げする
粗利益率改善で最も分かりやすい方法の一つが、
販売価格の見直し
です。
例えば、
販売価格 10,000円原価 7,000円
の商品があるとします。
粗利益は、
3,000円
粗利益率は、
30%
です。
これを、
10,000円 → 10,100円
と1%値上げするとします。
原価が7,000円のままなら、
粗利益は、
3,100円
になります。
粗利益は、
3,000円 → 3,100円
つまり、
約3.3%増えています。
販売価格は1%しか上げていません。
しかし利益への影響は1%ではありません。
価格改定は、粗利益改善に非常に大きな影響を与えます。
「1%値上げ=粗利益率1ポイント改善」ではない
ここも注意が必要です。
1%値上げしたからといって、
粗利益率が必ず1ポイント上がるわけではありません。
先ほどの例なら、
販売価格10,000円原価7,000円粗利益3,000円粗利益率30%
です。
販売価格を10,100円にすると、
粗利益は3,100円です。
新しい粗利益率は、
3,100円 ÷ 10,100円
=約30.69%
です。
つまり、
30% → 約30.69%
となります。
約0.69ポイントの改善です。
「何%値上げすれば目標粗利益率になるのか」は、原価と現在の粗利益率によって変わります。
粗利益率を1%改善する方法② 原価を下げる
販売価格だけでなく、
原価改善
でも粗利益率は上がります。
先ほどの商品で考えます。
販売価格 10,000円原価 7,000円粗利益 3,000円
だったところ、
原価を、
7,000円 → 6,900円
に改善できれば、
粗利益は、
3,100円
になります。
販売価格を変えなくても利益は増えます。
原価改善というと、
「仕入先に値下げしてもらう」
ことだけを考えがちですが、それだけではありません。
例えば、
仕入先を見直す
発注量を見直す
廃棄を減らす
不良品を減らす
外注工程を見直す
配送方法を見直す
作業ミスを減らす
材料ロスを減らす
なども原価改善です。
単純な仕入値引きだけではなく、
原価が発生する仕組みそのものを見直す
ことが重要です。
粗利益率を1%改善する方法③ 値引きを減らす
中小企業で意外と見落とされているのが、
値引き
です。
例えば、
「いつも取引しているから5%引き」
「競合より少し安くしておこう」
という値引きをしている会社があります。
しかし値引きは、売上以上に利益へ影響します。
例えば、
販売価格100万円原価70万円
なら、
粗利益は30万円です。
ここから10%値引きして、
90万円で販売するとします。
原価が70万円なら、
粗利益は20万円です。
売上は、
100万円 → 90万円
で10%減少です。
しかし粗利益は、
30万円 → 20万円
なので、
約33%減少
しています。
売上の10%値引きと、
利益の10%減少
は同じではありません。
値引きをするときには、
「売上はいくら減るか」
ではなく、
「粗利益はいくら減るか」
を見る必要があります。
粗利益率を1%改善する方法④ 利益率の低い商品を見直す
会社全体の粗利益率を改善する方法は、
すべての商品を値上げすることだけではありません。
商品構成を変える
方法もあります。
例えば、
商品 | 売上 | 粗利益率 | 粗利益 |
A商品 | 3,000万円 | 50% | 1,500万円 |
B商品 | 4,000万円 | 25% | 1,000万円 |
C商品 | 3,000万円 | 10% | 300万円 |
合計すると、
売上 1億円粗利益 2,800万円粗利益率 28%
です。
この会社が、
利益率10%のC商品を減らし、
利益率50%のA商品を増やせれば、
売上高が同じでも会社全体の粗利益率は上がります。
つまり、
利益改善では、
「もっと売る」だけでなく「何を売るか」
が重要です。
粗利益率を1%改善する方法⑤ 不採算顧客を見直す
商品だけでなく、
顧客別の利益
を見ることも大切です。
年間売上1,000万円ある大口取引先が、
必ずしも最も利益を生んでいるとは限りません。
例えば、
値引きが多い
小口配送が多い
特急対応が多い
返品が多い
営業担当者の対応時間が長い
支払いまでの日数が長い
といった取引先の場合、
売上は大きくても利益が少ないことがあります。
一方、
年間売上500万円でも、
定価販売で手間が少ない顧客の方が利益貢献額が大きい可能性があります。
会社全体の粗利益率を改善するには、
商品別だけではなく顧客別にも粗利益を見る
ことをおすすめします。
粗利益率1%改善と売上1%増加はどちらが効果的?
ここは経営者にぜひ知ってほしいところです。
年間売上1億円、粗利益率30%の会社を考えます。
売上が1%増えた場合
売上は、
1億円 → 1億100万円
です。
粗利益率30%が変わらなければ、
増える粗利益は、
100万円 × 30%=30万円
です。
粗利益率が1ポイント改善した場合
売上1億円のまま、
粗利益率30% → 31%
なら、
粗利益は、
3,000万円 → 3,100万円
です。
増加額は、
100万円
です。
つまり、このケースでは、
売上を1%増やすより、
粗利益率を1ポイント改善した方が、
粗利益への効果は大きくなります。
もちろん、現実には値上げによって販売数量が減る可能性などもあるため単純比較はできません。
しかし、
売上だけ追いかける経営が必ずしも最も効率的ではない
ことは理解しておきたいところです。
売上を増やす前に粗利益率を確認する
売上が増えること自体は悪いことではありません。
問題は、
利益率の低い売上を増やしてしまうこと
です。
例えば、
年間売上1億円粗利益率30%
なら粗利益は3,000万円です。
翌年、
売上が1億2,000万円
まで増えたとします。
ところが値引きや原価上昇によって、
粗利益率が25%
まで下がったら、
粗利益は、
1億2,000万円 × 25%
=3,000万円
です。
売上は、
1億円 → 1億2,000万円
と20%増えています。
しかし、
粗利益はまったく増えていません。
これでは、
「忙しくなったのに利益が増えない」
という状態になってしまいます。
売上高だけを経営目標にすることの問題がここにあります。
粗利益率が下がったら、何を確認すればいい?
毎月の試算表を見て、
粗利益率が前年より下がっていたら、
少なくとも次の項目を確認してください。
1.販売価格
原価が上がっているのに価格を据え置いていないか。
2.値引き
以前より値引きが増えていないか。
3.仕入価格
仕入先からの値上げを販売価格に反映できているか。
4.外注費
外注費の上昇が利益率を圧迫していないか。
5.商品構成
利益率の低い商品の売上割合が増えていないか。
6.顧客構成
値引きや手間の多い顧客の売上割合が増えていないか。
原因が分からないまま、
「売上を増やそう」
とするのではなく、
まず、
なぜ粗利益率が下がっているのか
を数字で確認します。
まずは「全社粗利」ではなく商品別・顧客別まで見る
会社全体の粗利益率だけでは、
改善策が分からないことがあります。
例えば、
会社全体の粗利益率が30%
だったとしても、
A商品 50%B商品 30%C商品 5%
かもしれません。
あるいは、
A社 40%B社 30%C社 10%
かもしれません。
全社平均だけ見ていると、
どこを改善すればいいのか分かりません。
そのため利益改善を進める場合には、
可能であれば、
商品別・顧客別・部門別
に粗利益を見ることをおすすめします。
そうすると、
「値上げすべき商品」
「もっと売るべき商品」
「条件を見直すべき取引先」
が見えやすくなります。
粗利益率1%改善を会社の目標にしてみる
利益改善というと、
「今年は利益を1,000万円増やす」
という大きな目標を掲げがちです。
もちろん目標としてはよいのですが、
現場では何をすればよいか分からなくなることがあります。
そこで、
例えば、
粗利益率を30%から31%にする
という目標へ落とします。
さらに、
値上げで0.3ポイント
値引き削減で0.2ポイント
仕入改善で0.2ポイント
商品構成改善で0.2ポイント
廃棄削減で0.1ポイント
というように分けます。
合計すれば1ポイントです。
一つの大きな改革をするのではなく、
小さな改善を積み上げて1ポイントをつくる
という考え方です。
中小企業では、この方法の方が実行しやすいと思います。
粗利益率改善は資金繰り改善にもつながる
粗利益が増えれば、
固定費が大きく増えない限り利益が増えます。
そして利益を継続的に出せるようになれば、
会社内部に現金を残す力も高まります。
ただし、
利益が増えれば同額だけ預金が増えるわけではありません。
例えば、
売掛金が増える
在庫が増える
設備投資をする
借入金を返済する
税金を支払う
といった場合には、
利益が出ていても現預金が増えないことがあります。
そのため、
粗利益率改善は非常に重要ですが、
最終的には、
利益+貸借対照表+資金繰り
まで確認することが重要です。
粗利益率を毎月確認する
粗利益率は、
決算のときだけ見る数字ではありません。
毎月確認することをおすすめします。
例えば、
月 | 売上高 | 粗利益 | 粗利益率 |
4月 | 1,000万円 | 300万円 | 30.0% |
5月 | 1,050万円 | 305万円 | 29.0% |
6月 | 1,100万円 | 297万円 | 27.0% |
この数字を見ると、
売上は、
1,000万円 → 1,100万円
と増えています。
しかし粗利益は、
300万円 → 297万円
と減っています。
売上だけ見ていれば、
「会社は成長している」
ように見えます。
しかし、
粗利益を見ると違う景色が見えます。
6月に何が起きたのか。
値引きしたのか
原価が上がったのか
商品構成が変わったのか
を確認します。
このように、
数字の変化から会社で起きていることを探す
のが月次決算の役割の一つです。
まとめ|「たった1%」ではなく「年間いくらか」で考える
粗利益率1%という数字だけを見ると、
小さく感じます。
しかし、
年間売上5,000万円なら50万円。
年間売上1億円なら100万円。
年間売上3億円なら300万円。
年間売上5億円なら500万円。
会社の規模が大きくなるほど、
1ポイントの違いが利益に大きく影響します。
利益改善を考えるときには、
「もっと売上を増やそう」
だけではなく、
今ある売上から、あと1%多く粗利益を残せないか
を考えてみてください。
具体的には、
値上げ
値引き削減
原価改善
高粗利商品の販売強化
低採算商品の見直し
不採算顧客の取引条件見直し
廃棄やロスの削減
などがあります。
1つの方法だけで1%改善する必要はありません。
小さな改善を積み重ねて、
会社全体で1ポイント改善する。
これだけでも、中小企業の利益は大きく変わる可能性があります。
6.粗利益率を「見る数字」から「経営を変える数字」へ
粗利益率は、
決算書に載っている数字を確認するだけでは意味がありません。
重要なのは、
なぜ粗利益率が上がったのか、下がったのか
まで確認することです。
いちご会計事務所では、税務申告だけではなく、
月次業績管理
商品別・顧客別の利益分析
粗利益率の分析
値上げシミュレーション
予算・実績管理
資金繰り予測
経営計画
銀行融資対策
などを通じて、中小企業経営者が数字を経営判断に使える体制づくりを支援しています。
「売上は増えているのに利益が増えない」
「どの商品が本当に儲かっているのか分からない」
「値上げをしたいが、いくら上げればいいのか分からない」
という場合には、
まず自社の粗利益を数字で分解してみることをおすすめします。
粗利益率1%の違いは、小さな違いではありません。
年間では、会社の利益と資金繰りを大きく左右する数字になる可能性があります。





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