シャトレーゼの強さについて、竹田陽一先生のフレームワーク「経営を構成する7大要因」を利用して、分析してみました。
更新日:2022年8月9日
今日は、町のお菓子屋さんとして成長しているシャトレーゼの強さの要因について、考えてみたいと思います。
先日、石村萬盛堂という、福岡では大手の老舗お土産菓子屋さんが事業を新会社に譲渡することとなりました。
石村萬盛堂が事業譲渡にまでいたった背景には、シャトレーゼの九州進出による激しい競争があったからでは?、と地元業界では言われています。
(日経記事)
では、なぜシャトレーゼはこんなに強いのか?
そのことに興味を持った私は、しばらくシャトレーゼを分析していました。
今回のシャトレーゼの経営戦略を分析の際に利用するフレームワークとして、ランチェスター戦略の研究で著名な竹田陽一氏の「経営を構成する7大要因」を利用する事にしました。
この「経営を構成する7大要因」とは、経営は商品、地域、客層、営業、顧客維持、組織、財務の7つの要因によって構成されるとするフレームワークの事です(詳しく知りたい方は、いちご会計事務所主催ONLINE社長塾https://president-school.online/でよく解説していますのでご参加ください)。
この7大要因にそって考えた場合、シャトレーゼには際立っている構成要因があります。
それは、商品、地域、客層です。
まず商品ですが、人気はあるが日持ちせず扱いにくい「生ケーキ」を中心として、非常に安い値段ー他社定価の2/3程度で、販売していることがあげられます。
さらに、この低価格の上に原価率が60~70%と高い事が特徴としてあげられます。
普通、菓子屋さんの原価率は30~50%位ですから、相当な原価率です。
では、なぜこのようなことができるのでしょうか?
まず、生ケーキを売るお菓子屋さんのロス率は、非常に高いです。
この原因は、生クリームを主材料として使うことから、翌日持ち越しが難しいためです。
このため、お菓子屋さんはロス分の原価を販売価格に織り込んでいるのです。
また生ケーキは、扱いにくくロスが大きいことから、1980年代までは町のケーキ屋さんが少し売っている位で、ほとんどの店がバターケーキの販売が中心であり、大手でも生ケーキはあまり扱っていませんでした。
ところがシャトレーゼは、業界でも早い段階から、生ケーキを冷凍し製造する「冷凍ケーキ」を研究して商品投入していました。
冷凍ケーキは冷凍保存ができる分、日持ちさせることができロスが少くできる事から、廉価で売る商売につながっていると思われます。
また、冷凍ケーキができても冷凍流通がしっかりしていなければなりません。
この点は非常に重要で、未だにコールドチェーン構築は非常に難度が高い分野と言われています。
シャトレーゼは冷凍ケーキにこだわり、この物流の点でも業界内で一日の長があるのではないかと考えています。
ランチェスター戦略的に言えば、冷凍ケーキという技術を生かし商品を普段使いの生ケーキを売る店に焦点を絞ったことが差別化となり、経営にプラスとなったのではないでしょうか。
次に地域ですが、あえて自店舗のロードサイドにこだわった点があげられます。
出店料の負担もあることと、あえて強力なブランドを持つ競合他社がいるところを避けて、ロードサイドに店を持つ戦略をとりました。
これが地域内シェアをとり「町のお菓子屋さん」としての地域ナンバーワンになって行ったのだと思われます。
最後に客層ですが、ロードサイドに来るおやつ用に買うお客さんを中心にした事があげられます。
これは地域戦略ともかぶりますが、あえてブランド力のある競合他社とはぶつかる様なことはせず、町のお菓子屋さんとしての客層を狙って集中させています。
これで、強いライバルとの競争を避けるという戦略がうまくいったのかもしれません。
あえて、結婚式の引き菓子や贈答用のお土産菓子などの分野に進まず、この点に一点集中したことがよかったと考えます。
以上が最近までいろいろな取材記事やニュースから分析した事項です。
もしシャトレーゼに興味を持たれたならば、会長が書いたこの書籍もよいと思います。
また、いろいろ企業分析して生きたいと思います。
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