「内部留保」の正体を知らないと、会社は潰れます
- tomohiro adachi
- 1月16日
- 読了時間: 4分

先日、ある社長からこんな相談を受けました。 「先生、ニュースで大企業の『内部留保』が多すぎると叩かれていますが、うちはいくら貯めればいいんでしょうか?」
実は、この質問の中に「多くの経営者が陥る大きな勘違い」が隠されています。今回は、会社を永続させるために絶対に外せない「内部留保(利益剰余金)」の本質についてお話しします。
1. 「内部留保」=「通帳の現金」ではありません
まず、ここを正しく理解しましょう。多くの社長は内部留保を「現預金残高」だと思い込んでいますが、会計上は全くの別物です 。
内部留保を 専門用語では「利益剰余金」と呼びます 。
会社設立からこれまでの利益の合計から、税金を引いた残りの蓄積です 。
なぜ現金と違うのかというと、 稼いだ利益を、新しい機械の購入(設備投資)や、社員の採用、あるいは在庫の仕入れに使えば、利益は残っていても現金は手元に残りません 。
事例として説明すると、 利益剰余金が1億円あるA社。
しかし、5,000万円で工場を建て、3,000万円で在庫を抱えていれば、手元の現金は2,000万円しかありません。逆に、利益剰余金が少なくても、借入金で現金を厚く持っている会社もあります。
2. 「適正額」はいくらか? 銀行が見ているポイント
「いくらあればいいか」という問いへの答えは、「もし売上が30%なくなった場合、その赤字の波を2年分耐えられる額」が一つの目安と私は考えています。
これは、100年に一度の経済危機と言われたリーマンショックの時の経験から、この多くの企業が一番売り上げが下がった時が30%くらいだったからです。
銀行は単年度の決算(PL)よりも、この「利益剰余金」を注視しています 。
債務超過の恐怖: 利益剰余金がマイナスになり、純資産がマイナスになると「債務超過」と呼ばれます 。これは「会社を畳んでも借金が返せない」状態であり、銀行からの新規融資は極めて困難になります 。
内部留保が厚いということは、返さなくていい自分のお金(自己資本)が多いということです 。これが高いほど「安全な会社」と評価され、いざという時に銀行が喜んで貸してくれる「キャッシュリッチ」な経営に繋がります 。
3. 「節税」と「銀行評価」は両立しない
ここがベテラン会計士として一番伝えたい部分です。 「税金は払いたくない、でも銀行の評価は上げたい」という相談をよく受けますが、これは「ラーメンを腹一杯食べたいけど、明日までに5キロ痩せたい」と言っているのと同じ矛盾です 。
節税しすぎの罠: 過度な節税(=利益を無理に減らす)をすると、内部留保は貯まりません 。
事業を拡大したい場合は潔く税金を払い、内部留保を厚くして銀行の信頼を勝ち取るべきです 。
ただ、社長の考え次第では、拡大しない、株価を上げたくない場合もあります。
例えば事業承継が近い、もう廃業も考えているなどの場合は、 ほどほどの利益に抑え、節税を優先ーもしくは利益を繰り延べする選択肢もあります 。
4. 内部留保が少ない、あるいは債務超過の会社はどうすべきか?
もし今、貴社の内部留保が少なくて悩んでいるなら、例えば以下のような「地道な改善」が必要です。
①役員借入金の活用: 社長が会社に貸しているお金は、銀行からは「実質的な自己資本」とみなされることがあり、安全性の評価を補ってくれます 。
②不必要な保険の解約: 節税目的で入っている保険が、実は資金繰りを圧迫しているケースが非常に多いです。解約して解約返戻金を得ることで、一気に黒字化(内部留保の積み増し)ができる場合があります 。
③遊休資産の売却: 使っていない古い機械や車両、不動産を売却し、売却益を利益剰余金に組み入れましょう。。
最後に:経営者の「覚悟」が会社を救う
内部留保を厚くする近道はありません。最後は「ちゃんと利益を出して、会社を強くする」という社長の覚悟と地道な経営改善にかかっています 。
「うちの利益剰余金、このままで大丈夫かな?」と少しでも不安になった方は、ぜひ一度決算書を広げてみてください。
貴社の「赤字2年分」はいくらでしょうか?まずはその数字を把握することから始めてみませんか?
ご不安な点があれば、いつでも当事務所へご相談ください。共に強い会社を作っていきましょう。









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